財務諸表を武器にする
会社経営には、対局を俯瞰し、素早く・正確に会社の状況を把握して、正しい財務戦略を考え、実行することが重要である。それを可能にするのが「財リンガル経営」である。
「財リンガル経営」とは財務戦略(経営戦略)を立て、実行することであり、「財務戦略」と「経理DX」の掛け合わせである。
- 財務戦略=読める
- 経理DX=見える
- 財リンガル経営=使える
財務諸表を武器にするために必要な「読める」「見える」「使える」を実行し、財務諸表を味方につけることで、積極的な経営「攻めの財務」を実践する。
財リンガル経営では、財務諸表に記されている色々な数字を活用していく。そのために不可欠なのが「経理DX」である。経理DXとは、経理業務のデジタル化を進め、財務データをリアルタイムで把握できるようにすることである。財リンガル経営では、最低月に1回の財務諸表チェックは必須である。それを可能にするのが経理DXである。
目標達成のために最も重要なのは、スピード感を持って、「戦略の実行→検証→改善」を繰り返すことである。経理DXによって、戦略の検証と改善のスピードを加速させる。
財務諸表を使いこなすためのポイント
①読める:財務諸表を通じて、自社の状況を正しく把握できる状態のこと。
- 現預金残高で安全性がわかる(月商3ヶ月以上あればポジティブ)
- 利益剰余金の額で経営の体力がわかる(年間売上高の2倍程度の利益剰余金が理想)
- 損益分岐点比率で収益性を知る(80%未満であればポジティブ)
- C/Fパターン分析で資金体質を診断する
- FCFで会社の本当の余裕を見抜く
②見える:見たいと思った時に、いつでも簡単に確認できる状態のこと。
③使える:数字を説得材料にして社員に具体的な指示を出し、会社が一丸となって目標に進める状態のこと
会社の将来設計(目標)を立てる
Step1:2つの「未来の数字」を設定する
「利益」→「売上」の順番で目標を設定する。「最低限確保すべき利益額」を明確にした上で、必要な売上を逆算すれば、無理のない成長計画を立てることができる。
利益目標の立て方
- 借入が多い場合:借入返済額を基準にして最低限の利益目標を算出する
- 成長戦略を重視する場合:事業拡大に必要な投資額から逆算して利益目標を設定する
- 安定経営を目指す場合:過去3〜5年の利益推移を参考に、無理のない適正な利益水準を目標にする
Step2:お金を増やすためのテコ入れ方法を考える
経営の形態は企業によって異なるが、共通する「効率のいい改善策」は存在する。それが、商品の「単価」「数量」「原価」「経費」の4つの内、どの部分が自社の損益に一番影響を与えているのかを分析することである。これを「利益感度分析」と言う。利益感度分析の結果によって、どこから手を打てばいいのかが見えてくる。
- 感度比率(経常利益÷◯):感度比率が低ければ低いほど、数字が変動した時の経常利益への影響が高くなる
- 感度順位:感度比率の数字が小さい方から番号をつける。但し、感度順位と手の打ちやすさはイコールとは限らない
テコ入れを考える時も売上だけでなく、どこを見直せば現実的に達成できる数字になるかをシュミレーションすることが大切である。
Step3:長期・中期・短期の目標を立てる
内部留保(利益剰余金)がないと最終的には資金不足に陥ってしまう。利益を上げ、内部留保を増やすためには、先を見据えて長いスパンでの計画が必要になる。5年後、10年後の会社がどうなっているかを具体的にイメージすることが重要である。
- 長期計画を立てる:10年後までの会社全体の将来像(こんな会社にしたい)を5段階で記入し、逆算していく
- 中期計画を立てる:5年後の目標を具体的な数字を使って考える
- 短期計画を立てる:中期目標から逆算し、各月の「売上目標」「経費予算」「利益計画」を決める
経理部門をDXする
Step1:経理の伝達状況を図式化(経理概況図)する
クラウド会計ソフトを導入する前に、まず現状の経理の流れを見直す。「現金管理」「預金管理」「売上管理」「支払管理」「勤怠管理・給与計算」「経費精算」の6つの業務それぞれでどのようなシステムを使っているか図式化する。
Step2:業務のボトルネックを洗い出す
6つの業務ぞれぞれの業務フロー図を描く。各部署の業務を担当している人にヒアリングするなどして、経理担当者に作成してもらう。
Step3:クラウド会計システムを導入する
クラウド会計システムを選ぶポイントは次の2点。
- Step1で把握した、他部署や他業務との連携も含めてツール同士が連動して使えるか?
- Step2で明らかになった時間がかかる処理や属人化している作業などを改善できるか?