創造する組織

発刊
2025年5月29日
ページ数
416ページ
読了目安
479分
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組織がイノベーションを起こすための具体的な方法
なぜ、多くの企業ではイノベーションを起こせないのか。
多様性が重視される中で、形式的に多様性を満たすだけではイノベーションは生まれないとし、具体的に多様性をイノベーションに繋げるための方法が紹介されています。

多様性から生じるパラドクスについて、問題を提起し、それを乗り越える方法が提示されています。イノベーションをうまく推進できていない企業にとって、組織のあり方を再度見直すためのきっかけになります。

イノベーションのプロセス

イノベーションは、異質なものや関係なさそうなものを組み合わせる「新結合」から生まれる。そして、この異質なものや関係なさそうなものを組み合わせるのに必要な条件が、多種多様な考えや物事があるという多様性である。

しかし、ただ多様性を確保すればイノベーションが生まれる訳ではない。そこから新結合をいかにデザインすることができるかを考える必要がある。

 

イノベーションは「課題」→「解決方法」→「実行」によって生み出される。この3つのフェーズが行ったり来たりしながら最終的にイノベーションを起こしていくことになる。このプロセスをベースに多様性を活かすことが、普段の何気ない業務にも大きな効果を生み出す。

 

①課題フェーズに関する多様性

これからは人間が人間らしい欲求を持ち、様々な体験の中から生まれた人間らしい気持ちからニーズや課題を捉えることが重要になる。「人間らしい課題」を発見するためのポイントは次の2つである。

  1. 体験:常にユーザーや顧客の声と向き合っている人たちの課題意識をしっかり把握していく
  2. こだわり:人は皆こだわりを持っている。こだわりをいい意味で発揮してくれそうな人の声を取り入れる

人は皆、自分のバイアスがあり、自分の視点でしか物事を考えられない。しかし、自分と異なる人の課題感などを聞くと、確かにそれはありだなと思うようなことが出てくる。他人の課題意識、中でも自分がすぐには納得できなかった「潜在ニーズ」を意識することが重要である。

 

②解決方法フェーズに関する多様性

潜在ニーズのような新たな課題は、皆が無意識に無理だと諦めてしまっていたようなものが多く、解決難易度が高い。そのため、多様性を最大限に活かしつつ、解決方法を構築していく必要がある。着目すべき点は、次の3つである。

  1. 専門性:専門性を有するメンバーにアクセスでき、それを十分に駆使し、解決方法を提案できる程度の知識と理解を持つ
  2. 特性の再解釈:自社の技術やサービスを「何を」「どうする」という文章で言語化し、これを抽象的に捉え直す
  3. 共通点探し:その課題と似ている課題を解決している他の業種や職種、これまでの経験等を考える

 

③実行フェーズに関する多様性

実行フェーズでも、メンバーの様々な知見や強みを活かすことが重要で、1人1人の特性を発揮していく。特に次の2つの概念が重要である。

  1. アジャイル:最小単位のチームごとに不確実性が高い中で色々なことを試し、フィードバックをたくさん集める
  2. グリッド:諦めないでやり切る、がむしゃらに走り切る

 

イノベーションを生み出す意思決定のプロセス

多様性を活かしてイノベーションを生み出す上では、意思決定のプロセスも重要である。意思決定は基本的に、次の4つのフェーズで行われる。多様性が発揮できていない場合、このプロセスのどこかに問題がある。それぞれのフェーズのどこに問題があるのかを考察することが有効である。

  1. 知覚する・意味付けする
  2. アイデアや意見を出す
  3. そのアイデアを評価・議論する
  4. 最後に決定する

 

多様性を確保して、そこからイノベーションを起こすためには、単に多様な意見が出されて終わりではなく、それがしっかりと組織としての意思決定に反映される仕組みになっている必要がある。一方で、実際の組織の意思決定では、スピードが重視されることも多く、リーダーの独善的な決断が必要とされる時もある。

最適な意思決定のあり方は、次の3つのポイントから考える必要がある。

  1. 「正しい意思決定」と「プロセスの納得感」というパラドクスな欲求のバランスをとる
    会議のプロセスや意思決定のプロセスをオープンにすることで、納得感を醸成することが重要である。
  2. 「正しい意思決定」と「プロセスの納得感」を状況に応じてバランスをとる
    リーダーは、自分たちで判断がつかないようなアジェンダについて、多様な人々に協力してもらい、意思決定までの過程でフラットに情報を共有し、関係者でしっかりと議論する場をつくる。
  3. 意思決定を動的なプロセスと位置付ける
    意思決定とは、出てきた意見やアイデアをそこから1つ選ぶというものではない。議論をしっかりして、新しいアイデアをつくるために意思決定しているのだと自覚する。

 

イノベーションと意思決定のIn-Deモデル

イノベーションのプロセスと意思決定のプロセスを統合したモデルが「In-Deモデル(Innovation-Decision making Model)である。この2つのプロセスを統合することで、全体として12個のフェーズを意識する。

 

課題:知覚する→アイデアを出す→アイデアを評価する→意思決定する

解決方法:知覚する→アイデアを出す→アイデアを評価する→意思決定する

実行:知覚する→アイデアを出す→アイデアを評価する→意思決定する

 

このモデルを何度も回していく。そうした連続の動きの中からイノベーションが生まれる。