キャリアの壁
「キャリアの壁」は、色々な場面で感じられる。ガラスの天井という言葉は、よく知られるように、女性やマイノリティが組織内で昇進しようとすると、見えない限界にぶつかる「環境の壁」。こうした社会慣習に加え、個人が自分独自の人生を歩む自信の無さからくる「心の壁」。
「環境の壁」の最大のものは子育てや介護だが、これは家族のチームプレイと創意工夫で乗り越えられる壁である。「組織の壁」は、時代の変容をテコに、個人や企業の考え方や行動を変えることで突破できる。そして、「年齢の壁」は、人生100年時代と言われる現代を、どんなアンビションを持って、自分の人生を全うするかが、個人に問われているチャレンジである。
自分で考えて選択すること
今は多様性の時代。家庭や子供を犠牲にして必死に仕事を続け、社長や重役など限られたポストの争奪戦に明け暮れてくたびれ果てるよりは、もっと人間的な生活をしたいという人もいる。最低限の生活をするための費用は低減しているので、欲張らずに日常的な幸せを追い求めることは可能である。
結婚や家庭のスタイルさえ、固定的な枠で括れなくなってきた。アメリカでは、かつての一般的な家族像、つまり夫婦がいて自分の産んだ子供が2人いる家庭の方がマイノリティであり、親の異なる子供や養子、LGBTのカップルなど、多様な家族がいるのが当たり前となっている。
仕事と家庭を含め生き方は人それぞれで、正解はない。独身を続けるのも、家庭や子供を育むのも、本人の気持ちの持ち方で、いかようにでも充実したいい人生になる。
ただ1つ言えるのは、それをよく考え、選択するのは自分自身である、ということである。山は1つではない。色々な選択肢が存在する。だからこそ、自分で考え、悩み、選びとっていくことが大切である。
バランスからシナジーへ
人生は長距離走を走り抜くマラソンである。最初から考えていた目標、あるいは人生の目的は見失ってはいないが、家庭や子供を優先させて、少し寄り道したり休んだりすることで、初めて仕事と家庭が融合できることもある。
だから、「両立」という言葉は好きではない。ある時は片方にウエートがかかり、ある時は別の方にウエートがかかる。その連続であって、両方が同時に均等に成り立つものではない。ワークライフバランスではなく、ワークとライフのシナジーという考え方をとりたい。
専門性で差別化を図る
男性と真正面から不利な戦いをするよりも、専門性を磨いて別な土俵をつくり、差別性を持って自分のやりたいことを貫くこと。組織の階段を上がることに汲々とするよりは、リーダーシップをとれる仕事をした方がいい。
女性がリーダーとして活躍するために必要なことは、まず女性が自分に自信を持つことである。自分自身への誇りを持ち、主体性をもって仕事に取り組むことが不可欠である。その上で開発すべき能力として、次の3つの能力がある。
①専門能力
専門能力を身につけると自信が生まれる。専門的知識や技術を絶えず高めていくことは、自信のさらなる拡大につながる。
②リーダーシップ能力
リーダーとしてチームをまとめ牽引する能力は、個人の成長につながる。ビジョンをもって多様なメンバーをリードすることは、人間を成長させる。
③経営管理能力
これにより、より大きな責任を担うポストへの道が開ける。