ぼくは今日も定時で帰る。 仕事に疲れたあなたを癒す44の物語

発刊
2025年5月28日
ページ数
248ページ
読了目安
194分
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会社員として働くことによる学び
30代まで月80時間の残業が当たり前の環境で過ごし、40代で転職し、定時で帰る生活を選んだ著者が、これまでの会社員生活における学びをストーリーで綴った一冊。

主に会社員として働く中での失敗談が書かれており、そこから何を学んで成長してきたのかが書かれています。会社で忙しく働く人、苦労をしている人などに共感できるリアルな体験が綴られています。会社で働く多くの人にとって、勇気づけられ、自分の働き方や生き方を振り返らせてくれます。

時間があるから工夫をサボる

20代の頃、休日もたまにオフィスで働いていた。先輩たちと飲んだ時、日曜日に部長と遭遇した話をすると、先輩たちも同様に口を揃えた。当時は休日でも働く人が多かった。その中で、J先輩は「俺は経験ないな」と言い放ち、「時間に甘えるなよ」と声をかけられた。後にJ先輩は40歳で部長になり出世街道を駆け抜けていった。

時間に甘えた働き方を続けて30代半ばで行き詰まり、40歳で転職をして気づく。時間があるから工夫をサボる。制限があるから考えて成長する。

 

あなたの苦労を誰かが見ている

担当するお客様が業績不振に陥った。「値下げをしてくれ」「支払いを遅くしたい」などの後ろ向きな依頼ばかり増えた。売上が右肩下がりでも毎晩遅くまで対応を続けたが、それでも状況は悪くなるばかりで、モチベーションはダダ下がり。働くのが辛くなった。

そんな時、役員のOさんから担当まで50人が参加する職場の飲み会が開かれた。上司から「おまえ、Oさんに挨拶してこい」とこづかれた。「最近はいいところが無くて、申し訳ありません」と言うと、Oさんはスッと居住いを正して僕の顔を見据えて、言葉を継いだ。

「知ってますよ。苦労していると聞いてます。周りを気にする必要はないですよ。真面目にやっていると聞いています。それでいいんです。うまくいかない時に諦めないで欲しい。必ず誰かが見ています」

涙がこぼれそうになった。もう少し頑張ってみようと心の中でつぶやく。

 

1年後、地方に左遷されてアラサーから下積みを再開した。ふてくされて時間を無駄にしないことだけを心がけた。誰かが見ているかもしれない。今できることを精一杯やろう。

 

大切なのは捧げた時間じゃない

会社は去年から、みなし残業制になった。「毎月、必ず20時間分の残業代を払うからその範囲で仕事をしてね」ということらしい。少なくとも20時間分は働かないとと思っている僕を尻目に同期のKはサッと仕事を上がる。

翌日、Kに残業時間を聞くと月に10時間くらいとのこと。

「オレら、月に20時間分の残業代をもらってるだろ。10時間で大丈夫なのか?」と言うと、Kは哀れそうに「みなし残業代はあくまで20時間以内に残業を抑えろってことだ。20時間は残業しろじゃないぞ。20時間の残業代をもらって早く帰りながら成果を出す。それで会社もオレもハッピーだろ。お前は残業しなきゃいけないと思考がこり固まってるんだよ」と言う。

この経験から学んだことは、自分で自分を縛ってはいけない。大切なのは捧げた時間じゃないということ。自分の中に思い込みがあることに気付かされた。

 

自分の常識は他人の非常識

海外に赴任してしばらくして、6人のチームを引き継ぐことになった。一癖も二癖もあるメンバーが揃い、その中でもK国出身のAさんに振り回されることになる。

チームを引き継いで1ヶ月後、Aさんが相談にやってきた。最近は品不足が続いており、営業チームでは乏しい在庫を融通し合っているが、Aさんは在庫を分けてもらう依頼を断られるらしい。

 

メールの書き方や在庫を分けてくれやすい人を整理してAさんに共有した1週間後、Aさんが怒りをぶつけてきた。「教えてもらったやり方、誰も返事をしてくれませんよ! おかしいじゃないですか」

Aさんの話を聞くと、相談メールを送った後、返事が来ないと、1時間待って催促する。返事が来ないと、1日に3、4回は催促するという。

「相手だって忙しいんです。そもそも在庫を分けてもらうのは当たり前じゃないですよね」とAさんを諭し、何より丁寧な姿勢で、メールをしてから1日は催促を待つことを伝え直した。

自分の常識は他人の非常識。特に文化が違うなら要注意。思い込みは失敗のもと。自分の常識を疑う大切さを改めて感じた。

 

ぼくは今日も定時で帰る

18年間、初めて勤めた会社でがむしゃらに働いて、行き詰まった。Xやインスタを見ると、世の中は起業やフリーランスを賛美する声で溢れているが、会社員ではダメなのだろうか。会社員の日常にも価値のある気づきや学びは溢れているし、成長もできる。

 

40歳で転職して、もう1つ気づいたことは「人は時間がないと気づくことすらできない」ということ。月に80時間の残業をこなしていた頃、日々の雑事に忙殺されていた。そして行き詰まり「残業をしない」働き方に変えた。定時で帰るスタイルにしたことで、自分のこと、人生のことを考えたり、発信したりすることができるようになった。