事業創継 VENTURE SUCCESSION

発刊
2025年5月22日
ページ数
288ページ
読了目安
276分
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推薦者

レジャー事業開発で大切なこと
「ふふ」や「つるとんたん」など、様々なホテルやリゾート、飲食店などの業態開発と運営を手掛けるカトープレジャーグループの経営について紹介している一冊。

これまでの同社の歩みや、業態開発と運営について考えていること、何が強みになっているのかなど、レジャー産業の経営のことがわかる内容になっています。

KPGの始まり

カトープレジャーグループ(KPG)は「日本のレジャーをもっと楽しく!」をテーマに、ホテルやリゾート、レストランなど、多岐にわたるレジャー事業を展開している。

KPGの歴史は、父の加藤精一が1962年に創業した加藤商事から始まる。父の会社はワンマン経営の最たるもので、全盛期には事業をかなり広げていた。しかし、入退院を繰り返すようになり、商売の勘も鈍ってきて、会社の経営状態がどんどん悪くなっていった。22歳で会社を引き継いだ時、父の会社は債務超過状態に陥っており、借入金が20億円以上に膨れ上がっていた。当時の年商は3億円ほどで、金利すら払えない状況だった。従って、新社長として最初に手をつけた仕事は、不採算事業の整理だった。

 

引き継いだ時の会社の年商は3億円ほどだったので、自分の一生をかけて売上を10倍の30億円にすることを目標とした。会社の大きな転機となったのが1989年、父が始めた讃岐うどん店を「つるとんたん」にリニューアルしようと考えていた時、お世話になった方が「将来、どうなりたいのか、会社をどのようにしたいのか、あなたの想いを言葉にしてみたら」とアドバイスをしてくれた。そこで、自分自身を見つめ、想いをKPGマインドとして言語化した。この時、総合的な「レジャー事業開発」を基幹コンセプトに据えた。KPGマインドを定めたことで、その後35年以上、横道にそれることなく、一途に事業を進めることができた。

 

父の事業から脱却して、新しい事業モデルをつくりはじめた当時から、オペレーションで勝負する会社を目指していた。オペレーションは人が担うもの。そのため、心の価値観が同じ人たちと一緒にやっていきたいと考えていた。会社説明会では、心の価値観の大切さをとく説いている。能力よりも大事なのは、価値観や人間性である。

 

KPGのビジネスモデル

30歳で年商30億円を達成する頃には、金銭欲や物質的な欲が一番の幸福ではないことがわかってきた。いつしか、チームで仕事をすることに喜びを感じるようになった。自身のチームだけでなく、クライアント、パートナーと同じ目標を持ち、それぞれの責任を果たし、プロジェクトの成功を共に喜び合えることは、何物にも変え難い経験である。

 

これまで「トータルプロデュース」と呼ぶビジネススタイルをつくり実践してきた。これは、他企業と連携したり、他資本を活用したりして、その人の代わりに店舗やホテルなどをつくって運営していくというものである。今でこそ、レストランやホテル業界などでは、経営と資本の分離が当たり前になっているが、以前に日本では、土地も建物も自前で用意して、オーナーが経営する形態が一般的だった。

業態開発とオペレーションをそれぞれ別の人が担当するバラバラな体制では、収益を上げて事業を成功させることはできない。他資本とのパートナーシップによってプロデュースする際に大切にしている原理原則は「収益までKPGが責任を持ち、それについて約束する」ということである。何らかのリスクを取らずに仕事をしていると、最終的には会社組織がダメになる。うまくいかなかった時は、自分が一定の収益における責任を必ず持つ。売上が伸びれば利益も大きくなるので、正当なフィーを頂き、ウィンウィンな関係を築いている。

 

飲食店の売上や利益は、現場のオペレーションのクオリティに非常に左右される。現場のクオリティが落ちると商売はすぐにダメになる。そのため、現場に出ていき、お客様の視点でクオリティチェックをよく行なっている。

 

KPGの強み

KPGは、カジュアルゾーンからハイエンドまで様々な事業を、そのシーンに応じて変幻自在に運営していくことができる。その結果、これまでになかったものを新たに生み出したり、既にあるものをアレンジしたりすることができる。この業態開発能力のポイントを示したのが、オペレーション8原則「QSC+STR+H/P」である。

 

Q(クオリティ):お客様に本当に満足して頂ける商品を心を込めて提供する。
S(サービス):お客様の立場に立って真心溢れるおもてなしをする。
C(クリンリネス):清潔は行為ではなく「清潔である」という状況であり清掃の結果である。

S(ソフトウェア):五感に響くデザイン、音、光、温度、素材など。
T(タイム):スピード&正確性。期限を設定し厳守する。
R(リスクマネジメント):有事への事前の予防対策と有事への対応、事後対策として再発防止策を練ること。

H(ホスピタリティ):相手を思う温かな心と行動。
P(プライス):価格と価値観のバランス。メニュー構成と価格、一品と全体のバランス。

 

「QSC+STR+H/P」のすべての要素をバランスよく満たすことが、お客様に最高の満足を提供し、事業を成功に導くために最も重要な点になる。