なぜ「偏差値50の公立高校」が世界のトップ大学から注目されるようになったのか! ?

発刊
2018年8月28日
ページ数
254ページ
読了目安
334分
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教育は偏差値が重要なのではない
民間公募制で、当時全国最年少の校長として箕面高校に赴任し、4年間の学校経営で数々の実績を出してきた著者の教育改革を紹介している一冊。

受験対策をしなくても偏差値は上がる

大阪府立箕面高校は、1963年設立の地域4番手の高校である。普通科と国際教養科があり、2014年当時の偏差値は50だった。3年後の2017年には、名門大学を含む海外の30大学に累計36人が合格した。

大阪府立箕面高校は4年間で大きく変わった。箕面高校では特別な受験対策はほとんどしていない。補習補講も一切やめた。夏期講習もない。45分だった1コマの授業時間を50分にする代わりにコマ数を減らし、全体の授業時間を大幅に削減した。

叶えたい未来や夢を達成するために大学に進み、継続的に学び続ける人材を育成する。それが、教育の本質的な目的である。日本においては、目的と手段が逆になり、今や大学入試・合格が目的になってしまった。

大学の実績=高校のランキングではない。子供たちの自尊心を大事に伸ばし、本来あるべき教育の実践を続けた箕面高校の偏差値は60を超えた。

英語の前にまずはマインドセット

箕面高校では「変化の激しい時代に対応し、世界に貢献できる人材を育成する」を教育の定義として掲げていた。現行の英語教育の課題には、次の2つがある。

・6年間習っても話すことができない
・英語が話せても、議論ができない

これらは英語の問題ではない。なぜなら、そもそも日本語でもきちんと議論ができないからである。まずは日本語で議論をできるようになること。箕面高校のチャレンジは全てここからスタートした。英語力自体より、思考能力を育むマインドセットができた方がいい。大事なのはボーダレスであること、オープンマインドであること。できないと思わずにチャレンジできるかどうかである。

深く自分と向き合う体験をつくる

今、保護者の多くが、偏差値という幻想にとらわれている。どうしても正解を求めようとする気持ちがある。しかし、正解はどこにもない。教育に携わる者がしなければいけないのは、どんなに失敗してもへこたれない子、タフネスな子にすることである。そのために箕面高校でテーマにしていたのは、グロース・マインドセット、フィードバック・マインドセット、タフネスの3つ。

そして、ダイバーシティを大切にした。ダイバーシティの高いチームとは、全員が違う方向を向きながら、チームのミッションを共有し、目的達成のために努力を惜しまないもの。まずは常識がそもそも違う。それぞれで違っていていい。そのことをお互いに認め合うことができていること。それがダイバーシティである。
箕面高校では、そのためのワークショップに力を入れてきた。そこで常に求めていた結果は「生徒が元気になること」である。たとえ、最初に決めて進めていたプロジェクトが最終的に崩壊したとしても、問題は何もない。それをまず知ってもらう。重要なのは、深く自分と向き合う体験ができたかどうか。その場にいる生徒たちが、明日から何か行動を起こしたいと思えるようになれたなら、それこそが目指していた状態であり、かけがえのない価値である。

英語の問題ではない

TOEFLにおいて日本人が特に苦手としているのは、スピーキングセクションだが、これは英語力の問題ではない。正解を求めすぎて、正解を答えられない子供がいっぱいいる。「正解はないのだから、自分なりの意見を言う」というマインドセットをしない限り難しい。

さらにスキルとして、クイックレスポンスや仮説検証、ロジカルシンキングなども必要になる。単なる英語力ではない。