卒業生の100%が大学入学できる実力のつく公立高校
「いい人生」は、子供たちが生きたいと考える世界にある。そのために設立したのが「サミット・パブリック・スクール」だ。目指したのは、生徒一人ひとりを個人として丸ごと受け入れ、子供たちがコミュニティーの一員になる学校だ。大学に入学するために必要な知識だけではなく、「いい人生」を送るために必要なことを子供たちに教える。
そのためには、学校が価値あるものとして重きを置いていることを、保護者に信頼してもらう必要があった。最後までやり遂げない子供は1人もいてはならない。全員に目を行き届かせる学校をつくることを目標とした。
サミットの高校は現在11校あるが、4年生大学への応募条件を卒業生の100%が満たし、98%が入学を認められている。卒業生たちは国内平均の2倍の確率で大学を卒業し、その確率はマイノリティの学生ほど高い。
身近な課題解決を考えるプロジェクトで学習する
ほとんどの高校では、昔ながらの学びのアプローチを取っている。子供たちは教科に関する情報を「単位」で学ぶ。単位は講義で成り立っていて、生徒はノートをとり、教科書を読み、質問に答え、あるいは数学の問題を解く。最終的には、選択問題や短い回答を書くテストがある。
だが、人生で成功するのに必要なスキルを子供たちが身につけることをゴールにしているサミットでは、日々の学びも実世界に焦点を合わせたものになっている。ゴールを達成するのに最も成果を上げるのは、よくできたプロジェクトだ。サミットでは日々の学びをプロジェクトで設計している。
プロジェクトは生徒本人、コミュニティー、人生にとって重要な問題、質問、あるいは困難から始まる。そしてその生徒が問題に直接働きかけるタスクを行う。途中、生徒はフィードバックを受け、実行可能な方法を教わりながら前に進むことができる。そして、質問に答え、あるいは困難に対処することで終わる。自分の暮らしに関連する、問題解決の余地を残すプロジェクトを通じて知識を学ぶ。
最終的に仕上がるのは質の高いプレゼンテーション、モデル、シュミレーション、ウェブサイト、キャンペーン、建築計画やビジネスだ。それらをつくれることは、実社会でそのまま役立つスキルでもある。研究によれば、子供たちはプロジェクトを通じて学ぶと、より深く理解し、長く記憶にとどめる。こうした問題解決型学習で学んだ生徒たちは、従来の学習で学んだ生徒たちと同じか、あるいは上回る結果を出している。その上、生徒たちは学習により、興味を持つ。
そもそも学校が、問題解決型学習を採用しない理由は、複雑で難しいからだ。サミットでは、これをほぼゼロから開発した。
一生役に立つ「自己主導性」を植え付ける
学びに欠かせないモチベーションには、次の3つの要素が必要である。
①自律性:何らかの主導権を持つこと
②熟達:何かがうまくできるようになること
③目的:自分にとって大切なことを理由をもって行うこと
この3要素を中心に学びを設計し、子供たち自身が自分の学びのリーダーにした。何年ものあいだ計画的に学ぶことを練習し、フィードバックを受け取りスキルを身につけていく。
- 目的意識に根ざしたゴールを設定する
- ゴールをどうやって達成するかの計画を立てる
- 計画を実行する(=学びを得る)
- 予定通りかチェックし、自分が必要に応じて自主的な行動を取れているかをみる
- メンターに確認し、必要あらば修正する
- 学んだことを見せる
- 何がうまくいったか/いかなかったか、何が難しかったか/それはどうしてか、を振り返る
メンター制度で「振り返り力」を教える
様々な調査結果から、極めて重要な事実がわかっている。「学校でたとえ1人であっても大人と有意義な関係を築いた子供は、そうでない子供よりもいい結果を出している」
既存の学校には、これを成り立たせる制度がない。サミットではメンターグループをつくった。メンターが受け持つのは15人から20人で、学年が上がっても変わらない。メンターは生徒と親密な関係を築きながら、自分で設定したゴールを達成するのを手伝う。
メンターの役割は、子供が自分のしたいこと、自分が何者なのか、何が気になるのか、どういう感情を持っているのか、そして究極的にはそこから何をすべきかまで考えられる質問をすることだ。つまり、生徒が自分自身を省察する「振り返り力」がつくように導くのだ。