偶発購買デザイン 「SNSで衝動買い」は設計できる

発刊
2024年12月13日
ページ数
272ページ
読了目安
383分
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衝動買いをデザインする
スマホとSNSの普及で「偶発起点」から生じる衝動買いが増加している。メルカリによって、買物失敗リスクが下がったことも要因として、増加する衝動買いをデザインすることは可能なのか。

情報回遊時代の消費者の購買行動モデルを解説し、どのように商品やサービスをユーザーに届ければよいのかが紹介されています。従来のネットで検索して購買される流れから、SNSでインフルエンサーなどの人を起点として商品やサービスが売れる時代に、マーケターは何を考えなければならないのかがわかります。

情報回遊時代の購買行動

ネット上の行動は明確な目的のある「情報検索」と、明確な目的はなく無意識で行う「情報回遊」に分類できる。行動時間の調査では、個人全体で情報検索と情報回遊の比率は1:1、10代女性では、約2倍差で情報回遊が情報検索より多かった。

 

何かを発見するという行為は知らない情報(商品)に遭遇することから起きる。その商品への興味が発生している順序は、それぞれで逆転している。

  • 情報検索:興味→検索
  • 情報回遊:回遊→興味

 

この興味発生の順序から、購買行動は2つに整理される。

  • 計画購買:ある商品への興味があらかじめ発生しており、十分知った状態で計画的に行う買物
  • 偶発購買:ある商品を全く知らない状態から、商品と遭遇していきなり強い興味が発生し、非計画的に行う買物

計画購買と偶発購買は、商品への興味を持つ前段階として、買うつもりがあったかどうかが異なる。

 

偶発購買モデル「SEAMS」

情報回遊時代において、目的のない回遊時にあらかじめ買うつもりのなかった商品と遭遇し衝動買いする偶発購買は「SEAMS」によって表される。

 

S(Surf):回遊

インターネットサイトで閲覧しながら、ウェブページのリンクを辿って次々に新しいサイトをサーフィンするように回遊し、情報取得を楽しむこと。現在では、特に目的のない状態で何となく新しいことや楽しいことはないか求める回遊行動が、SNSやアプリにまで拡大している。

 

E(Encounter):遭遇

情報回遊中に全く知らない商品や気になる投稿と遭遇し、未知の発見に一目惚れして引き寄せられたかのように強い興味を持つこと。デジタル遭遇は、実は偶然ではなくデータに導かれている。ユーザーの閲覧、検索、フォロー履歴などから、アルゴリズムが偶然を必然に変える。

 

A(Accept):受容

自分で調べた方が信頼は大きくリスクは小さいが、時間コストはかかる。特定の人を信頼する買い方は、買物リスクは大きくなるが時間コストはかからない。検索する時間と労力とのトレードオフで多少のリスクを取り、そのリスクを受容して購入する。

デジタル受容の受容確率を高めるには、その商品の購入に影響力を持つキーパーソンを複数人起用し、人起点の信頼を幅広く用意することが求められる。

 

M(Motivation):高揚

高揚には、商品やサービスに対する高揚とコミュニティ帰属に対する高揚の2つが引き起こす心理的な変化がある。計画購買と異なり、リスクを冒した買物だからこそ、期待通りもしくは期待以上だった場合、ギャンブルに勝利したかのような高揚を味わう。

他人の選択を信じて購入する偶発購買は、購入後にあたかもブランドをつくっている一員であるかのような帰属意識が発生しやすく、その後の共有や推奨行動につながりやすい。

 

S(Share):共有

デジタルでの共有のポイントは「高揚が共有を生むこと」と「情報発信価値の高さ」だ。SNSはセルフブランディングの場になっており、自分を魅せることにつながると感じたものが優先的に共有拡散される。だからこそ、リスク反動による瞬間的高揚と帰属意識による持続的高揚が大事になる。強くて長いモチベーションをつくることが、ブランドにとって重要なキーアクションになる。

情報発信価値が高い商品とは、誰もが知る認知率の高い商品よりも、知る人ぞ知る商品だ。買うまで自分も知らなかったことが情報発信価値の高さに変わる。

 

偶発購買デザイン

偶発購買では、知る人ぞ知る「私だけのとっておき」の商品の方が情報発信価値が高まる。そのため、認知の視点ではなく、顧客になるポテンシャルがあるかを「カテゴリ購買」の有無で判断することが重要である。

 

  1. 購入意向を買うつもりの有無と捉え「計画」と「偶発」に分類
  2. 「カテゴリ購入」有無で分類し、カテゴリ購買無はターゲット外とする
  3. メインターゲットとなるカテゴリ購買有の層を「エントリー」「スリープ」「アクティブ」の3層に分類
  4. 購入時の購買満足を「満足」「許容」拒絶」の3段階に分類、「拒絶」で休眠したユーザーはターゲット外とする
  5. アクティブ層の「満足レギュラー」「満足ロイヤル」「許容レギュラー」「満足レギュラー」のアクティブ4の全体を最大化

 

アクティブ4全体の顧客育成を図るにあたり必要はことは何か。計画購買層と偶発購買層がそれぞれ「満足」や「許容」を感じ、再購入を繰り返す。この過程で、カテゴリ内でその商品が最多購買であるロイヤル層とそうでないが購入はしているレギュラー層とを行き来する。アクティブ4内で移りゆく購買頻度や購買満足の状態変化において最大の影響を与えるのは、競合ブランドの動向である。

カテゴリ内のブランド回遊は特定のブランド群内で起こることが多く、購買データを用いて真の競合を把握することで、コミュニティ単位の偶発購買デザインの精度が向上する。