マーケティング思考 × ストーリーテラー思考
良いプレゼンテーションでは必ず「伝えたいアイデアが明確」で「わかりやすいストーリー」に沿って説明がなされている。しかし、これだけでは及第点を超えたレベルに過ぎない。理想的なプレゼンテーションは「聞き手であるオーディエンスが感動する魅力的なプレゼンテーション」である。
これを「ドラマチック・プレゼンテーション」と呼ぶ。プレゼンテーションをドラマチックに仕上げるためには、「共感」と「感動」をつくることである。その肝は、次の2つの思考をプレゼンテーションに活用することである。
- マーケティング思考:自分の主張をシンプルに研ぎ澄ます
- ストーリーテラー思考:ストーリー性を強め、感動を生む
Step1:プレゼンテーションのベースをつくる
①コンセプトを開発する
コンセプトとは「誰でもわかる明瞭かつ短い言葉で、その商品・サービスの本質を表現したもの」である。プレゼンテーションのコンセプトは4つの要素から構成される。
- オーディエンス:このプレゼンテーションの聞き手は誰か?
- メッセージ:伝えたいことは何か?
- 差別点:比較対象に対する自分のアイデアの優位な差別点や特長は何か?
- トーン&マナー:どういうスタイル(口調、雰囲気、資料のデザイン、服装など)で伝えるか?
これら4つの要素を書き出し、それぞれが連携を取れているかを確認する。
②ストーリーを構築する
プレゼンテーションで使うストーリーの構成は、たった1つのストーリーラインを覚えればよく、基本的に4つの章立てで構成される。
- ようこそプレゼンへ:設定を説明し共有→オーディエンスに興味を持たせる→共感を得る
- 悩ましい問題:解決すべき問題を提起する→解決しなければならない理由を伝える
- 秘密のアイデア:驚きのある解決案を提案する→その解決案をおすすめする理由を伝える
- 明るい未来:解決案を実感してもらう→解決案の採用を促す
Step2:プレゼンテーションを制作する
①コミュニケーションをプランニングする
コンセプトの4つの構成要素に、全体に関わる「目的」を加え、5つのことを検討する。
- 目的の明確化:プレゼンテーションの目的を明確にする
- オーディエンスの深掘り:オーディエンスを3グループ(コア、メイン、セカンダリー)に細分化し、興味関心を把握する
- 素材集めと優先順位付け:メッセージを伝えるために必要となる「素材」を集め、優先順位を決める
- 受容性の確認:ユニークで新規性のある差別点が、オーディエンスにどの程度受け入れやすいか確認する
- 構成づくり:4つの要素を鑑みて、全体の構成(範囲、順序、実演・ゲスト等の飛び道具、複数回の構成)を考える
②ストーリーを豊かにする
ストーリーを豊かにする際、特に重要なのは次の5つのルールである。
- 登場人物のキャラクターと強みを明確にする:自社、競合等のキャラクターと強みを明確にして伝える
- 強い敵や難問を登場させる:問題を解決させる前に、立ち向かう「強敵」「難問」を見せる
- 敵を倒す理由、難問を解かなければならない理由を理解させる:「理由の理解」で物語の最後まで興味を持たせる
- クライマックスを盛り上げる:解決案である秘密のアイデアに「ギャップ」と「驚き」を取り入れる
- 伏線やヒントを事前に提示し、必ず回収する:解決案に繋がる大事な情報を、解決案の提案より前に伝えておく
プレゼンテーションの完成度を上げる
①インパクトを強化する
自分たちの情報を覚えてもらうための様々な工夫の中で、プレゼンテーションに有効なものは次の5つである。
- コピー:伝えたいことを魅力的な短い言葉で伝える
- メタファー/比喩:「人生は旅」「満員電車は地獄」といった隠喩、「〜のようだ」と表現される比喩を活用する
- 数字/グラフ:数字、グラフ、表で内容を具体的に示し、わかりやすくし、同時に信頼度を高める
- 映像:トーン&マナーに注意を払って写真やイラストを使ったり、動画を始まりや終わり、クライマックスで使う
- その他の驚き:色々な驚きを用意する
②ドラマチックに仕上げる
ドラマチックに仕上げるための確認項目は次の4つである。
- 伏線はきちんと回収できているか?:大筋の物語を作った後、クライマックスから遡って物語全体を確認し作り直す
- ストーリーをさらにわかりやすくできないか?:無駄な話は極力省き、たくさんの情報を伝え過ぎない
- クライマックスをさらに盛り上げられないか?:ストーリーから遡って、徹底的に考え直す
- 導入部でさらに強くココロをつかめないか?:魅力的なつかみ(謎、笑い、シズル、リール)を用意する