会社とは適度な距離で付き合う
スナックひきだしに来るお客さんで「会社を辞めそびれた」と言う人は、意外と多い。50代になると、定年よりも前に辞めようと思ったり、会社が早期退職を募集して心が揺れるたびに思い悩み、波が過ぎ去っていく。後で振り返ると「あの時辞めそびれたな」と気づく。
辞めた会社は別れた彼氏と同じで、会社にドロドロした感情を抱く前に、好きな状態のままで辞められたら、今でも「辞めた会社には感謝してる」と言える。その会社にいなければ得られなかった人間関係やスキル、経験、貯蓄などたくさんあるはず。まず、それを整理しないと、恨みや憎しみだけでは次に進めない。
会社が好きだけど、会社と距離を置く。大企業にいるとはしごを外されたりするかもしれないが、そういう時こそ、会社との距離を見直すチャンス。ずっと会社に対して一途なままでいると、自分の時間をどんどん会社に注ぎ込んでしまう。会社は決して「あなたが一番」とは言ってくれない。
会社で培ったものを社会に還元する
色々な場に越境して多様な人と交われば交わるほど、気づきは増える。会社は1つの大きな村だから、どうしても同質化していく。多様な人に触れることで、異なるものの見方を知れるし、自分の持っている力に改めて気づくこともできる。50代の人から「社会貢献がしたい」とよく聞くが、そう思い始められた人は勝ち。自分に正直になった結果だから、周りが何を言おうが「自分がやりたい」を貫ける。
変わることが難しい時代に、変わろうという思いを貫くのは本当にパワーがいる。ほとんどの人は変わるのは大変だから自分で枠を勝手につくって、変われない理由を見つけにいく。よくミドル世代向けのセミナーで話すのは「会社人から社会人へ戻ろう」ということ。私たちは社会に出て、会社という機能を通して社会とつながっているはずなのに、知らず知らずのうちに、会社という小さな箱に閉じこもってしまう。そこからまた社会に戻っていこう。私たちは組織人である前に、市民であり、家庭人であり、地域人でもある。会社に長くいた人はそこで培ったものがたくさんあるはずだから、いい年したら今度は社会に還元した方がいい。その果実は自分にもまた戻ってくる。
会社に求めるものを明確にする
会社は自分に必要なものをすべて満たしてくれる「場」ではない。会社は「スキルを学ぶ場」であり、「貢献の場」「人とのつながりの場」「生活の糧を得られる場」でもある。会社に求めるものや会社から得られるものは、自分の年齢によっても変わってくる。会社も変化はしていくし、自分を取り巻く環境も変わる。今の自分に何が足りないのか、何を求めているのか、それを会社では得られるのか、会社を辞める前に、じっくりと考えてみるといい。
会社を辞めるか、辞めないかモヤモヤするのは、それぞれの理由が言語化できていないから。すべて不満なわけではなく、満足している部分もあるから、今の会社で働き続けている。それを仕分けできていないから、モヤモヤに拍車がかかる人も多い。
例えば、居心地が良くのんびりした会社だが、自分の成長欲求は満たしてくれないなら、まずは会社の中で成長できる部署はないかを探してみる。会社の中に成長の場がないのであれば、会社以外の活動に成長の場、サードプレイスを見つけにいくのもいいかもしれない。同時に転職を視野に入れていく。
この会社に、今の自分が何を求めて何を得られているのかに自覚的であることはすごく大事である。それをはっきりさせれば、今の会社で働き続けることにモヤモヤしている人、不遇な状況で働き続けている人も、幸せになる道を見出せる。
人生後半の働き方
人生後半を迎えて「これからの働き方を選ぶ入り口」には3つある。
- 何を実現したいか
- 自分が持っているスキルをどう使うか
- 誰と仕事がしたいか
若い時は「このクソ上司め」と思っていても、後で振り返れば、いい反面教師だったと思うことがある。それは会社に未知のガチャがあるから経験できること。逆に「この会社にいたからこの人と出会えた」という素晴らしい出会いもある。それは、自分でコントロールできない会社という組織にいるからこその面白さでもある。どういう人と仕事したいかは、色々経験してみないとわからないし、嫌だと思っていた人が、ずっとお付き合いが続く仲間になったりする。
人生も後半になってくると、人に翻弄されるのにだんだん疲れてくる。さすがに、次に誰と会うかわからない「相席屋」にいくのはしんどい。だから「誰と仕事をしたいか」を考えることは大事である。人生の前半が会社ガチャを楽しむ時間だとしたら、後半は自分で選んでいく時間。どんな人といる時に、自分が楽しい、仕事にやりがいを感じると思うかを考えること。