信頼されるための質問
質問は信頼関係の基本である。相手を理解しようとする「一言の質問」が、信頼を生む。相手の考えの根拠や背景を謙虚に知ろうとすること、自分自身は相手のことをわかっていないという前提で相手を知りたいと思って、質問することが大切である。
例えば「もう少し詳しく聞いてもいいですか?」と、より話を促してくれる質問をされた方が、話は深くなっていく。このような質問は、聞かれた側にとって「この人は、自分のことを知りたいんだ」と思わせる質問だからである。そして、自分の考えの根拠や背景を話すので、表面だけではない考えを伝えながら、お互い信頼を深めていける。
理想とする質問は「わからないところを聞く」質問である。そうすると、的外れな質問や相手が望まない質問ではなく、純粋に「知りたい」を体現する質問になる。大切なのは「自分が何をわかっていなくて、何を知りたいのか」を自覚すること。「興味があるから、わからないところをもっと詳しく話して」という意識を持つことで、相手の気持ちが動く。
信頼されるためには、「わからないこと」にきちんと向き合うことが必要である。私たちの多くが、「わからないこと」を明らかにしないまま、なんとなく会話し、やり過ごしている。「わかったつもり」に気づき、その「わからない」を明らかにする人は、行動や考え方に一貫性があるので、誰からも信頼される。わからない部分をはっきりさせる質問ができれば、正しい理解ができ、信頼されるようになる。
「わからないこと」を自覚するメソッド
わからない部分を質問するためには、イメージをしながら考えることが有効である。読んだことや聞いたことを絵にして自分の理解を確認するメソッド「絵訳」を使えば、誰でもわからない部分を確認し、質問をすることで、物事を正しく理解することができる。
絵訳には次の3つの効果がある。
- 聞いた事実を頭の中で絵としてイメージする(イメージ化)
- わからない部分を、きちんと質問できる(質問化)
- 質問することで理解が深まる(理解)
多くの信頼されている人が、物事を理解する過程で絵訳し、どんどん鋭い質問をして、相手からの信頼を得ている。イメージを固めようとすればするほど、曖昧な箇所が浮き彫りになってきて、それが疑問・質問として湧いてくる。人はイメージできない言葉、描くことができない内容に出会うと、無意識の内に「なんだっけ?」と疑問を思い浮かべる。
知らない言葉は、イメージの中で黒塗りになる。これが「わからない」を見つけることである。この「わからない」に上手に引っかかることができれば、自然とそれが質問として浮かび上がる。
絵訳の技術
絵訳は大きく2つの段階に分かれる。
- 「言語情報」をイメージ化する段階(理解の段階)
- イメージ化したことを、使える知識にする段階(言語化の段階)
この流れは次のステップに分けて、理解を深めていく。
【理解の段階】
①文章を始めから終わりまで、通しで読む
まずは「全体として何の話かわからない」という状況を、「この話のテーマは◯◯だ」と把握する。
②「知らない言葉」を探す
「わからない言葉はない」と思ったら、1つずつ簡単でいいので実際に絵にしてみる。
③「知らない言葉」をイメージ化する
知らない言葉を見つけたら「簡単な絵に描けるか」まできちんと調べる。
④「知っている言葉」のイメージを確認する
話の前葉がつかめない時は特に、知っている言葉についても、頭の中でイメージしたり、実際に絵に描いたりしてみる。
⑤もう一度全体を読む
「わからないこと」をはっきりさせることで、理解度を高めていく。
⑥「1コマか、複数コマか」イメージする
読んだ話が「何か1つのこと」を扱った話の場合は、1コマに表現。ストーリーや工程など「流れや動き」のある話の場合は、複数の絵で表現できるかを考える。
⑦「それぞれの絵」をイメージする
各シーンを1つずつ、簡単でよいので絵として描く。
⑧「層」に分ける
それぞれの絵を階層にして分解して「中心」を探す。
⑨「要素」に分ける
中心を要素に分解し、正確に理解する。
⑩「要素の関係」を整理する
要素同士の関係をしっかり絵や図に表す。
【言語化の段階】
①全体像を「1つの文」にする
テーマを探すように考えて、全体像を簡単な1文で表す。
②「イメージの目的」を決める
イメージは「何のために描かれたものなのか」を考える。
③「説明のポイント」を選ぶ
目的を説明するために「絵のどの部分を説明するか」を決める。
④「結論→背景→説明→結論」で文章を再構築する
確認してきた「目的・結論から始め、その背景、目的・結論に至った理由」を順番に説明する。
⑤「足りないもの」があれば、足す質問をする
文章から想像できない部分があれば、文章の中に書き足す。