意思決定できる人とできない人の違い
人は何かを選ぶ時、豊富な選択肢があればその中から最適・最良・最善のものを選ぼうとする。ところが皮肉なことに、選択肢が多くなると選ぶことが困難になり、先に目についたものや推薦されたものを安易に選んだり、決断を先送りしたりする人が出てくる。
世の中にはスパッと意思決定できる人もいれば、なかなか意思決定できない人もいる。その違いは何か。鍵を握るのは「リスクへの姿勢」である。意思決定できる人とは「計算してリスクを取れる人」のことである、意思決定できない人は、その逆で「リスクを取れない人」である。
リスクを取れない人は、「リスクを取らない人」とは違う。リスクを適切に見積もって、それを取るべきではないリスクだと判断し、撤退することも立派な決断である。
優柔不断は性格のせいと考えてはいけない
優柔不断が性格の問題なら、優柔不断な性格の人はすべての問題について何も決められないことになり、また一生直らないことになる。
ところが、実際には、どんな人であっても、即決する場合もあれば、なかなか決められない場合もある。問題自体の難しさや状況によって途端に優柔不断になるということが起こる。優柔不断は性格の問題ではなく、問題の性質や状況によるものが大半である。
性格を嘆くより、何が意思決定を困難にしているのかを分析し、対処方法を身につけるよう努力することの方が重要である。
5段階フィルターモデル
優れた意思決定を安定的に行える人は、以下の意思決定のサイクルを自身の中に作り上げている。
①メタ判断
・真の問題が何か(目的と定義)を考える
・意思決定自体の必要度・緊急度・重要度・コストを判断する
・質にこだわるか、スピードや合意形成にこだわるかを判断する
このメタ判断が、意思決定の質を、効率、納得感を決定する最も重要な要素である。真の問題が何かということに疑問を持たず、世間一般の問題の定義に従ったり、周囲の意見に過度に惑わされると、結局は「間違った問題について一生懸命考える」ことになる。
重要な意思決定ほど、納得感が大切であり、納得できずにいると後悔につながり、それが別の意思決定にも悪影響を及ぼす。そうならないためには次の2つの原理を混同せずに、どちらかの原理でいくかを決めることが大切である。
1.満足化原理(意思決定にかけるエネルギー小)
最大・最善の結果が得られなくとも、一定の結果で満足する。
2.最適化原理(意思決定にかけるエネルギー大)
考えられる最大・最善の結果を得ようとして比較・検討する。
②選択肢の生成・絞り込み
・情報を収集し、選択肢をつくる
・選択肢が多い場合、絞り込む
「メタ分析」において満足化原理でいくのか、最適化原理でいくのかの選択によって、意思決定のプロセスは大きく異なる。満足化原理でいくのなら、情報収集も選択肢の拡大もそこそこにすべきだし、選択肢の評価も簡略化する。最適化原理を選んだ場合、選択肢の生成は簡単ではない。選択肢が豊富なほど、一般的に意思決定の質も高くなる。
③選択肢の評価
・各々の選択肢に対してリスクを評価する
・結果を予測する
選択肢の評価には評価基準が必要である。選択基準の間のウェイトを決めて総合的に評価する必要がある。
④決断
・リスクを最小にする方策を考える
・集団や組織との関係を考慮する
合理的に考えた案を生成し、どれがベストかを考えておくことが重要である。
⑤評価学習
・意思決定のプロセスと結果を評価し、次の意思決定に活かす
・振り返り、反省する