営業チームが陥りがちな「ガンバリズムの罠」
「ガンバリズムの罠」とは、営業が思考停止したまま行動し続け、的外れな「がんばり」によって苦境に陥っているのに、武器(=的確な提案活動)を増やすことが見落とされている現象である。
トップが「営業なんて簡単だ」という組織では、営業の難しさが具体的に紐解かれることなく、「努力すれば成功する」というトーンで文化が作られていく。結果として、マネジャーの指導は「目標達成プレッシャー」「大量行動」「関係構築」に依存し、抽象的なアドバイスで終わってしまう。
「ガンバリズムの罠」を脱するためには、「武器」を増やしていかなければならない。
営業における急所「購買者の仮面」
営業活動における「急所」は、「購買者の仮面」の裏にある素顔(=本音)であり、急所を捉えるためには、お客様が自ら本音をさらけ出したくなる提案活動が必要である。
「購買者の仮面」をつけたお客様は、「心の中で本当に思っていること」を言わず、「とっさの防御反応」としてのセリフを口にする。「購買者の仮面」には、主に次の5パターンがある。営業がまずやるべきは、これらの「購買者の仮面を外してもらう」ことである。これがお客様と関係構築する上で欠かせない一歩であり、マネジャーが教えるべき「武器」である。
①はぐらかしの仮面:「とりあえず、予算は決まっていなくて」
「はぐらかしの仮面」の裏にある本音は、「教えることの不利益を心配している」である。教えることの不安が解消されれば、むしろお客様としては、なるべく情報を営業に伝えて、いい提案をもらいたい。
「はぐらかしの仮面」を外す鍵は「質問の引き出しを増やす」こと。回答にあたってお客様が抱える不安や心配を取り払えるように、質問のバリエーションを増やす。
ex.「この金額を超えたらNGのラインを教えて頂けますか?」と聞いて予算感をつかんでから提案する
②忙しさの仮面:「とりあえず、今は忙しいです」
「忙しさの仮面」の裏にある本音は、「レベルの低い営業に時間を使いたくない」である。もし、実力のあるハイパフォーマー営業が相手なら、時間をとっていい提案をもらいたいはずである。
「忙しさの仮面」を外す鍵は「価値の根拠を示す」こと。課題解決や費用対効果の点でお役に立てることを、早いレスポンスと共に伝える。
ex.事例提示をお客様に合わせて工夫した資料をお送りし、アポイントメントにつなげる
③いきなりの仮面:「とりあえず、すぐに見積もりをくれませんか」
「いきなりの仮面」の裏にある本音は、「話が早くて頼りになる営業にお願いしたい」である。もしお客様が心から「質の高い提案」を求めているとしたら、見積もり依頼をする会社に対して十分に時間の猶予を設けるはず。お客様の優先順位は「話の早さ」にある。
「いきなりの仮面」を外す鍵は「高速ラリー」である。クイックレスポンス+密なやりとりで、まずはスピードの差別化を図り、「この営業は頼れるかもしれない」と、お客様の期待と信頼を上げていくこと。そこで一定のポジションを獲得してから、提案内容の質を高めていく。
ex.見積もりを早く送るだけでなく、お客様との高速ラリーで「話が早い営業」と思わせ、信頼を勝ち取る
④とにかく安くの仮面:「とりあえず、もっと安くなりませんか」
「とにかく安くの仮面」の裏にある本音は、「判断基準がよくわからない」である。もしお客様が、どのような判断基準で買えばよいかについて具体的な考えを持つことができれば、単なる安さだけでは判断しないはずである。
「とにかく安くの仮面」を外す鍵は「価格以外の判断基準」である。「そもそも、何を基準に判断すべきか」を漏れなく洗い出し、その判断基準化を具体化した上で、何が大事かの優先順位をはっきりさせること。
ex.お客様と判断基準を議論して整理することで、費用対効果を感じられる提案をする
⑤検討しますの仮面:「とりあえず、社内で検討しますのでお待ちください」
「検討しますの仮面」の裏にある本音は、「一時しのぎの現実逃避をしたい」である。冷静な判断の結果「ここは保留しておこう」となるのではなく、「あれこれ考えたり、営業に何かを伝えたりするのが面倒くさい」という心理から、とっさに「検討します」と言っているというのが実情である。
「とにかく安くの仮面」を外す鍵は「前進のための助け舟を出す」こと。「潜在的な不満を解消する」「タイミングを見計らってコンタクトする」「価値の根拠を示す」といったことにより、決断を先延ばしにするのではなく、営業とやり取りを続ける選択をしてもらう。
ex.お役立ち情報の提供を続けてチャンスを探り、反応があったら再アプローチする