クリエイティブジャンプ5つの要素
クリエイティブジャンプは、現状と理想状態にギャップがあり、ロジカルシンキングによって導かれる打ち手だけではその差を埋められない時に、「非連続な思考」によってその差を飛躍的に埋め、理想状態を実現させることである。
クリエイティブという領域は、感性、直感といった右脳的な営みに見えて敬遠されやすかったり、思考回路を言語化しにくい部分もあるが、そこには一定の方程式がある。特にビジネスにおいて、非連続な思考によって生み出される、事業上の課題を突破する打ち手には、打率の高いセオリーがある。
クリエイティブジャンプは、次の5つの要素で成り立っている。これら5つの要素は、重層的に重なり合い、相互に行き来しながら全ての歯車が噛み合った時に爆発力を生み出す。
①本質をディグる:アセットの再定義
まず最初に、自分が軸足をおいているアセット(資産・資源)が何なのかをよく知ることが大事である。自分が何を持っているかを理解し、己の取るべき戦略や手段をあぶり出す。
ポイントは、自分が持っているアセットを真正面から捉えるのではなく、何か他の定義に読み替えることができないか、という視点で眺めてみること。そうして既存の概念から離れて「見立て」をしてみることで、アセットの新たな価値や、事業やドメインのポテンシャルも見えやすくなる。次の4つのアプローチを踏まえると、面白い着眼点に出会いやすくなる。
- そもそも法:アセットがそもそもどんな要素から成り立っているのか因数分解する
- 謎かけ法:軸足とするアセットと近しい「仲間」を探し、その共通点を言語化する
- 顧客ウォッチング法:ユーザーの行動をよく観察し、本来想定していなかった用途に気づく
- シティハンティング法:潜在顧客がどこにいて何を消費しているのかを、街に繰り出して探す
②空気感を言語化する:文脈の理解
世の中がまとっている空気感を理解することも重要である。なぜなら、優れたクリエイティブとは、社会とのコミュニケーションであり、つくり手の意思表明であるからである。人々がどんな時代を生き、どんな空気を感じとっているのか、そんな人々にどんなメッセージを伝えてどんな気分になって欲しいのか。そんな世間に漂っている目には見えないムードを踏まえて思考することが必要不可欠である。
時代のムードを嗅ぎ取るには、次の3つの視点がある。
- 比較し相対化する:異なる「界隈」を特定のテーマで比較し、得られた結果を抽象化する
- 象徴的なキーワードを掴む:時代を象徴するキーワードから、なぜそれが流行っているのかを考察する
- 時代の変遷を踏まえて解釈する:時代を象徴する出来事を踏まえ、社会にどのような影響を及ぼしたか分析する
③インサイトを深掘りする:顧客心理の観察
自分たちの事業がどのような課題を抱えていて、誰をターゲットにするべきかのアタリをつけ、ターゲットとなる方々が「思わず動いてしまいたくなる」心の中のツボがどこにあるのかを探る。
人の意識構造の95%は、無意識によって成り立っていると言われている。そのため、人が「思わず動いてしまう」状況をつくり出すには、ターゲットを研究観察することを通じて深く理解し、自らの言葉では表現することができない、無意識下にある行動や欲求のツボ(=インサイト)が何なのかを仮説とともに探っていくことが重要になる。
インサイトは、次の3つのステップに分けて考察することで、糸口が見えやすくなる。
- 行動シーンを想像する
- 行動の背景を言語化する
- なぜ?を問い直す
④異質なものとマッシュアップする:アイデアの交配
ターゲットのインサイトを掴んだら、その隠れた願望を満たすアイデアを考える。世の中にあるアイデアのほとんどは、掛け合わせでできている。事業の渋い局面を打開していくアイデアの多くも、掛け合わせ(定数×変数)でできている。ここでいう定数とは、自分が軸足をおいている事業のこと。変数とは、掛け合わせてみる要素のこと。変数を生活のシーンの中でランダムに当てはめてみることで、意外性のある組み合わせやアイデアを思いつきやすくなる。
アイデアを発想するためには、次の3段階のプロセスを踏んで行う。
- キーワードを洗い出す
- 定数と組み合わせる
- 定数×変数を具体化するアイデアを連想する
⑤誘い文句をデザインする:UGCを生む仕掛け
素晴らしいアイデアを思いついても、それらを多くの方に知ってもらい、利用してもらわないと、ただの机上の空論になってしまう。PRで考えるべきは、自分が「どう発信するか」ではなく、お客さんや周りの方に「どう発信してもらうか」である。つまり、UGC(利用者が生み出すコンテンツ)が生まれやすい環境をどう整え、どうパッケージとして実装するかということである。