イノベーションへの解 利益ある成長に向けて

発刊
2003年12月13日
ページ数
392ページ
読了目安
670分
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『イノベーションのジレンマ』の続編
名著『イノベーションのジレンマ』の続編

前作では破壊的な技術革新を受けて優位を脅かされる側の企業に置いていた視点を、今回はその技術革新で新事業を構築し、優位企業を打ち負かそうとする側に置いている。新事業を予測通りに発展させる立場にあるマネージャーに指針を与えることに照準を絞っている。

成長を生み出すための9つの意思決定

成長事業を破壊的な事業として形成するためには、重要なプロセスや意思決定を全て、破壊的イノベーションの状況に合わせて調整する必要がある。成長を生み出すために、あらゆるマネージャーは以下の9つの意思決定を下さなくてはならない。

①どうすれば最強の競合企業を打ち負かすことができるか。どのような戦略を取れば競合企業に滅ぼされ、また逆にどのような行動指針に従えば優位に立てるか。

②どのような製品開発をすべきか。顧客は従来製品に対する、どのような改良に喜んで割り増し価格を払い、どのような改良には関心を払わないのか。

③利益ある事業を築く上で、最も発展性のある基盤となるのは、どのような初期顧客か。

④製品設計、生産、販売、流通に必要な活動のうち、どれを社内で行い、どれを提携先や下請けに任せるべきか。

⑤どのようにすれば魅力ある利益の源泉である、強力な競争優位を確実に維持できるか。コモディティ化の前兆を捉えるには、どうすればよいか。魅力ある利益を維持するためには、何をすればよいか。

⑥新規事業にとって最適な組織構造とは何か。どのような組織部門やマネージャーに、新事業の成功を導く責任を任せるべきか。

⑦必勝戦略の細部を正しく詰めるには、どうすればよいか。柔軟性が重要なのはどんなときで、柔軟であるが故に失敗するのはどんなときか。

⑧誰の投資資金が成功を促し、誰の資金が命取りになるか。各発展段階で、最も役に立つ資金源はどれか。

⑨事業の成長を維持させるために、上級役員はどのような役割を果たさなくてはならないか。上級役員は新成長事業の運営を誰に任せるべきか。

 

新たな破壊的成長事業の構築を監督するマネージャーは、才気あふれる戦略家である必要は無い。状況に基づいた最適な理論さえ使えれば良いのである。

 

非対称的なモチベーションを生み出せ

実績ある競合企業に魅力的に映るような顧客や市場をターゲットとしてはいけない。彼らが喜んで無視するか背を向けるような破壊的な足がかりを発見せよ。既存市場の延長線上にあるような持続(改良)的イノベーションは既存勢力がほぼ勝利をつかむ。

 

破壊の足がかりを特定せよ

将来の顧客になり得る人々が生活の中で片付けようとしている、特定の用事を結びつけ、持続的向上を進める間も特定の用事に結びついたままでいること。そして顧客を製品に誘導する目的ブランドを構築することが、破壊的製品を成長軌跡上に留める、唯一の方法である。消費者の真のニーズと、定量化データにはミスマッチがある。

 

無消費に対抗する方法を探せ

以下4つのパターンを利用すれば、初期の顧客基盤として有望な無消費者に対抗できる。

①標的顧客はある用事を片付けようとしているが、お金やスキルを持たないため、解決策を手に入れられずにいる。
②こうした新市場顧客を喜ばせる性能ハードルは、かなり低い。
③誰でも利用できる、便利でシンプルな製品を作る。製品が新成長市場を作るのは、誰でも使えるからこそだ。
④破壊的イノベーションは、まったく新しいバリューネットワークを作る。新しい顧客は新しいチャネル経由で製品を購入し、それまでと違った場所で利用することが多い。
無消費者がいない場合は、ローエンド型破壊戦略を検討せよ。

 

状況に適した業務範囲を定める

製品の機能性と信頼性が顧客のニーズを満たすほど十分でない状況では、独自の製品アーキテクチャを持ち、バリューチェーンの中で性能を制約しているインターフェースをまたいで統合されている企業が圧倒的優位に経つ。

 

一方で、機能性と信頼性が十分以上になり、代わってスピードとレスポンスが十分でない次元になったときは、その逆、つまり特化型の専門企業で、相互作用の方式がモジュール型のアーキテクチャと業界標準によって定義されている企業が優位に立つ。
しかし、やがては専門的であるがゆえに間接費が低い特化型企業集団による、ローエンド型破壊の対象となってしまう。

 

成長機会に取り組む組織

実績ある企業が破壊的イノベーションでの成功確率を高めるためには、機能別に構成された軽量級チームと重量級チームをそれぞれ適切な場合に用い、持続的イノベーションについては主流組織で商品化し、破壊的イノベーションは自律的組織に任せる必要がある。課題に合ったプロセスや価値基準を持つ組織に有能な人材を配置するように心を砕くことが、経営者の力点である。

 

成長を気長に待て、だが利益を待ってはいけない

多額の損失を計上し続けるということは、破壊的イノベーションを実績のある大きな市場へ向かわせ、破壊的パワーを殺して持続的イノベーションにしうる。

参考文献・紹介書籍