D2C THE MODEL EC/D2Cビジネスに再現性をもたらす体系的メソッド

発刊
2023年9月29日
ページ数
256ページ
読了目安
456分
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D2Cビジネスで必須のマーケティングフレームワーク
ECを支える様々なインフラが整い、メーカーがECサイトを通じて直接ユーザーに販売するD2Cモデルが成立するようになった。いかにKPIを管理し、再現性のあるビジネスを構築するかの要諦が紹介されている一冊。

ベンチマークとすべきKPIの設定から、D2Cモデルのプロセスから各施策、考え方まで、D2Cモデルで必要な知識が盛り込まれています。従来型のメーカービジネスの変革となる、D2Cモデルの構築の仕方がよく理解できます。

D2Cビジネスのルール

D2Cは、現代で最も効率よくメーカービジネスを成立させるためのマーケティング手段であり、チャネルである。従来であれば顧客基盤や顧客情報を保有している小売事業者や、EC-PFに依存して販路を構築しなければ自社商品の売り上げを作れなかったメーカーは、D2Cによって、独自に顧客資産の形成が可能になった。

D2Cの最も大きな意義は「顧客の資産化」にある。そのため、売上発生の都度で販管費率を考え粗利を上げていく従来型のメーカー業とは、事業の成否判断の軸となるビジネスルールが、以下のように変わる。

 

「粗利LTV(1人の顧客から得られる生涯粗利)- CPA(1人の顧客を新規獲得するのにかかるマーケティング / セールスコスト)> 0」 

 

これが成り立っている状態こそが、「顧客の資産化」ができていることの証明であり、この状態で新規顧客数を積み上げていくことが必要である。この考え方に則ることで、顧客獲得に必要なマーケティング投資額の考え方も、LTVを上げていくべき重要度も変わってくる。つまり、D2Cを主軸にした全てのビジネスは「いかに商品をたくさん売るか」ではなく、「いかに顧客の体験価値を高め、その対価として1人の顧客に何度も消費して頂けるか」という考え方でビジネスを展開していくことになる。

成功しているD2C事業者は、まず顧客を最小のコストで獲得する仕組みを構築し、その上でマーケティング投資をかけて、獲得後の顧客のLTVを最大化するという一連の流れを行動原理として全ての事業活動を進めている。

 

  1. 再現性のある顧客獲得
    来訪者数×CVRの最大化を突き詰める
  2. LTV
    顧客あたり購入回数×購入単価の最大化で、獲得した顧客あたり売上を向上させる
  3. 運用効率/コスト削減
    PDCAやEC運用効率の最大化と事業コストの抑止で、事業インパクトとリソース・コスト効率を両立

 

D2C THE MODEL

D2Cビジネスは「プロダクト/マーチャンダイジング」×「マーケティング/チャネル」×「CRM/LTV」の総合力でその成否が決まる。各プロセスにおける重要視点、KPI間のつながり、施策類型を全体として理解した上で「今実行しようとしている施策は、どのKPIに寄与するのか」など、事業フェーズに応じた施策の優先度を判断したり、ある施策を実行する際に近いプロセスで連動して準備したりするのをクリアな状態にしておくことが必要である。

 

①プロダクト/マーチャンダイジング

プロダクトの拡大やマーチャンダイジングを集客・売上・利益の獲得のための手段として捉えて設計・増加させ、集客・売上・利益を戦略的にコントロール可能な状態を構築していく。

プロダクト/マーチャンダイジングでは、「いかにROIが合う状態で事業成長のための手段を増やすか」を念頭に、その他各プロセスにおける手段の増加を目指す。

露出量の獲得手段、UU/CTR向上による客数の増加手段、購入者獲得/CVR向上手段、LTV向上手段など、他のプロセスで施策実行するにあたっての手段を最大化するのがこのプロセスである。

 

②マーケティング

離脱の抑止や一度顧客が離脱した後のフォローアクションも含めた全体設計によって、見込み顧客を最大化する。

マーケティングでは、デジタルマーケティングを主軸にして露出量、来訪者数を最大化させることを目的に活動する。マーケティング施策はプッシュ型とプル型に大別され、プッシュ型施策によって露出量や集客を拡大しながら、プル型施策を組み合わせてプッシュ型施策で取り込みきれなかった顧客のこぼれを最小化する。

 

③チャネル

D2Cチャネルをはじめとして、購買チャネルに訪れた顧客の購入率を高め、新規購入者数を最大化する。また、可能な限り購入に近いタイミングで即時にアップセルやクロスセルを仕掛けることで高LTV顧客獲得の最大化も意識した活動をする。

チャネルでは、①で得た手段を活用し、②と一体になってチャネルへの来訪者をいかに購入に至らせるかを追求する。来訪者の購入転換率(CVR)が1%変化すると、マーケティングパフォーマンスが劇的に変化するため、マーケティングアクションと常に連動した活動が求められる。

 

④CRM/LTV

顧客の資産化度合いを示すLTVを向上させ、顧客獲得への投資に対するリターンを最大化できる状態を構築する。統合された顧客データや直接接点を全方位的に活用することで、モノに閉じずサービスや無形商材なども活用しながらLTV最大化を狙う。

「LTV-CPA」で顧客を1人獲得すると利益が出る状態になっていれば、キャッシュフローの限り投資をしても売上利益がそのリターンとして得られる状態が成り立つ。即ち、LTVが高くなればなるほど、競合よりも大きなマーケティング予算(CPA)で戦えるようになる。

 

これらの全プロセスによって統括された事業活動を通じて「LTV -CPA>0」を成り立たせ、再現性ある事業グロースを実現していくのがD2C THE MODELである。