5.4人問題
客が買わない理由はたくさんあるが、明らかな「主犯」は、今日のソリューション購買に関わる顧客関係者の数と種類が激増していることだ。その上、契約前に介入する人の数が増加し続けているせいで、そこに深刻な機能不全が生じている。サプライヤーが直面しているコモディティ化の多くは、顧客が「そこそこ」で妥協しようとする結果ではなく、彼らが何事にも合意できなくなっている結果である。コスト意識とリスク回避傾向の高まった意思決定者が、たとえ小さな事柄でも一人で決めるのをためらうようになったからだ。
一般的なB2B購買に関わる3000人以上の関係者に尋ねたところ、購買決定に正式に関わる人数は平均で5.4人になる。誰かが「ノー」という可能性もそれだけある。この5.4人には異なる視点や考え方がある。多様な関係者への販売戦略には多大な時間と労力が必要となる。
顧客関係者の7つのタイプ
接触を図り、売り込みをかける。これを5.4回繰り返す従来の営業アプローチは、ビジネスの成長を牽引するには不十分である。現代の営業・マーケティング幹部は、5.4人の中で誰をターゲットにすべきかをもっとはっきり見極め、最もお金になるコンセンサスを促進しなければならない。
一般的なB2B販売において、顧客関係者は7つのタイプに分かれる。これら7つのタイプは必ずしも相互排他的ではなく、2つ以上のタイプにまたがるのが自然である。
①ゴー・ゲッター
・他者の良いアイデアを支持する。
・常に求められる以上の成果を出す。
・ミスから学び、進歩する。
②スケプティック
・不透明なプロジェクトを危険を見なす。
・影響力の強い関係者を破壊的なアイデアに備えさせる。
・変革にはまず小さな成功が必要だと考える。
③フレンド
・接触しやすく、販売員との会話を楽しむ。
・販売員と同僚のネットワークを築く。
・販売員に惜しみなく時間を割いてくれる。
④ティーチャー
・新しい知見を教える。
・同僚や幹部から意見を求められる。
・他者の説得がうまい。
⑤ガイド
・ベンダーには手に入りにくい情報を提供する。
・ベンダーと話す時は真実を述べる。
・情報を公平に分配する。
⑥クライマー
・プロジェクトから個人的利益を得る。
・リスクをとったことに対する個人的報酬を望む。
・成功談を話したがる。
⑦ブロッカー
・安定そのものが目標だと考える。
・改善プロジェクトは気が散ると考える。
・めったにベンダーを助けない。
パフォーマンスの高い販売員は「ゴー・ゲッター」「ティーチャー」「スケプティック」との関係づくりを重視する。彼らは、合意に基づく変革を推進するのが得意である。これら3つを「モビライザー」と呼ぶ。優れた売り手は正しいヒトに売る。モビライザーと関係を結んだ販売員は、そうでない販売員よりもハイパフォーマーになる可能性が31%高い。
モビライザーを動かす
サプライヤーはモビライザーの可能性をフルに引き出すため、3つのことを正しく実行しなければならない。
①モビライザーに、どこで学べば良いかを指導する
②モビライザーへの関与の仕方を、各タイプに適応させる
③モビライザーが合意形成プロセスを支配できるように導く
そこで「コマーシャルインサイト」が必要となる。その狙いは顧客の今の考え方を変えることだ。そのためには、顧客ができるかもしれないアイデアを伝えるだけでなく、顧客が今やっていることに関するストーリーを伝え、その行動のせいで思いのほか時間やお金がかかっているという事実を明確にする必要がある。