100円ショップを使う人が多いのは貧しい国の証拠
日本は今や「世界最安値」の国である。日本の製品やサービスは、その品質に対して大変値段が安い。例えば、100円ショップは2012年から2022年までで店舗数が3000店以上増加し、9000店を超えている。首都圏のデパートやショッピングモールのテナントもどんどん100円ショップに変わってしまった。これまで文具などに500円から1000円ほど払っていた人たちが、100円ショップのものでないと買わなくなってきている。
ところが他の先進国に行くとこれがおかしいことがわかる。アメリカやイギリスでは、1ドルショップや1ポンドショップは特に2000年代に急拡大を遂げた。その理由の1つが経済格差が大きくなってきたことである。そうした店を使うのは、金銭的に余裕のない人が中心なので、いいイメージがない。例えば、イギリスの場合は中流以上の住宅地に1ポンドショップをつくるという建設許可が出されると、かなり過激な反対運動が起こる。その地域が安っぽいイメージになり、住宅価格が下がると思われているからである。
日本人が100円ショップに行き、生活に必要なありとあらゆるものを買っているのは、日本人が貧しくなっており、お金を自由に使うことができなくなっているからである。
100円ショップと同様に、リサイクルショップも北米や欧州では階級や経済格差がはっきりしている。日本では中流以上に該当する人々でもリサイクルショップでものを買わざるを得ない状況になってきている。教育レベルや教養は中流のままだが、経済的にだんだんと下流に転落しているのである。
転落しているのは日本だけ
海外との物価を比較するのに役立つのが「購買力平価」である。これは為替のレートは2国間の通貨の購買力によって決まるという考えに基づき、算出される指標である。これを為替レートで割ったものを「内外価格差」と呼ぶ。
OECDの統計によれば、日本の物価水準は1995年にはアメリカの1.85倍だったが、2022年には0.72倍にまで下がっている。日本はアメリカや欧州より30〜40%ぐらい物価が安い。日本では2022年頃後半から食品や日用品の値上げラッシュが続いているが、それでも世界と比べると未だに「安い国」である。
日本が低迷しているのは物価だけでなく、「給料」もずっと低い水準のままである。日本の2021年の平均年収は約548万円でOECD諸国の中でも下位である。第1位のアメリカは約1031万円であり、OECD諸国の平均712万円と比べても日本は70%程度の水準である。さらに日本の平均年収は今や韓国より10%近く少なくってしまっている。
主要先進国が堅調な成長を遂げる中で、成長率の低さが際立っているのがイタリアと日本であり、この30年余りの間に平均給料がほとんど伸びていない。
外国人に日本の不動産が買われている
外国の人々は日本人以上に「日本の激安さ」に気がついている。彼らは日本をお得に買い物ができる国とみなし、「日本を買う」ために大挙して押し寄せている。
日本が安いのは、ホテルの宿泊費や飲食費だけではない。多くの外国人が買っているのが「不動産」である。海外の人は自国以外の不動産も投資目的や居住目的で買っている。彼らが日本の不動産を買う理由の1つは、規制が他の国に比べてかなり緩いことがある。日本では基本的に、外国人が不動産を売買することや所有することに関して禁止事項がほとんどなく、日本人と同じように売り買いできる。海外の場合、日本のように自由ではない。
外国人が日本の不動産を買うもう1つの理由は、他の国に比べてとにかく値段が安いからである。人口が減少する日本では、これから激安の住宅がどんどん市場に出回ることになる。収入がどんどん上昇し、インフレで物価や不動産価格も上がっている国に住んでいる人にとっては、空き家だらけで、しかも1軒500万円程度で中古住宅を手に入れることができる日本は夢の国なのである。
安い国になった理由
日本の物価がなかなか上がらないのは、日本の会社がバブル崩壊以降お金を儲けられていないからである。会社が給料を増やしてくれないので働いている人はお金を使う気にならない。安いものばかり買うので一層さらに会社は価格を上げることができない。これが日本が陥っている「デフレスパイラル」の現状である。
加えて、日本企業はもっと儲けるための設備投資、人材投資にも、お金を使ってこなかった。稼いだお金を内部留保としてどんどん溜め込み、新たに儲けを増やすための投資をほとんどしてこなかった。
スイスのビジネススクールIMDが発表する「世界競争力ランキング」では、日本は1992年1位だったが、2022年には過去最低の34位になってしまっている。日本はタイやマレーシアよりも競争力がないとされている。