仮説構築力の源泉はインプット
目的設定のためには「何が課題なのか」を明確にする仮説構築力が求められる。短い時間軸、かつ狭い範囲の中で課題を探すのは簡単だが、そこで見つかった課題は大抵の場合、誰しもがわかること。
「みんなが気づいていなくて、気づくべきこと」が面白い仮説である。他の人と同じような目線や範囲で考えていては、面白い仮説は出てこない。時間軸を長く取り、かつ、広範囲な視点でものを考えることで、斬新な仮説がはじき出せる。そのためには、様々なことを知っておかなければならない。「単に知っているから」仮説が湧く。
これは「一を聞いて十を知る」といった状態だ。この境地に至るには「一を聞いて十を調べる」ことである。5年、10年と「一を聞いて十を調べる」ことを継続することによって累積したインプットは、大きな「知の資産」となる。頭の中に、多数の事例や事象を累積して溜め込んで、長期の時間軸を意識して思考すれば、仮説は一瞬ではじき出せる。これが「瞬考」である。
仮説構築力を養成するためには、『会社四季報』を10年分丸暗記する、『日経ビジネス』や『日経コンピュータ』『日経エレクトロニクス』などのビジネス雑誌の記事や、そこに掲載されている広告を精読することが役に立つ。「事例の宝庫」をインプットすることが仮説構築力の源泉となる。たくさんの事象や事例をパターン化して頭に格納していると、仮説が湧きやすいからである。
事象や事物、自分の知識や経験を「何か似ているもの」に例えることを「アナロジー」という。アナロジーは仮説構築において非常に重要である。一見、別のことと思える2つのものに共通のメカニズムが隠れていることは、よく存在する。そのメカニズムを発見し、インプットすることで、さらにアナロジーがしやすくなり、仮説構築をより強固にすることができる。
瞬考のポイント
以下の6つを意識し、実践していけば、どんなお題が出されても、瞬間的に仮説をはじき出せる人材になっているはずである。
①求められる仮説とは「相手が知らなくて、かつ、知るべきこと」を捻り出すこと
②仮説構築をするためには、事象が起きたメカニズムを探る必要がある
メカニズム探索では「歴史の横軸」「業界知識の縦軸」、その事象が起きた「背景」を意識する
③導き出した仮説を「メカニズム」として頭の中に格納し、それらをアナロジーで利用する
④事例などのインプット量が仮説を導き出す速度と精度を決める
⑤「一を聞いて十を知る」人ではなく、「一を聞いて十を調べる」人が仮説を出せるようになる
⑥あらゆる局面でエクスペリエンス・カーブを意識する
ネットワーク時代の勝ち筋
これからの働き方は、何かを行う時に、タスクを分解し、実行に必要な人材をキャスティングし、仕事を依頼し、取りまとめるプロデューサー的役割と、依頼された仕事を瞬時にこなすスペシャリストの組み合わせになる。AIに任せた方が正確で、速くアウトプットを出せるものであれば、AIツールを使用する。仕事は一瞬で終わる。
人間同士がつながった今、次のような手法が問題解決のスタンダードになるだろう。
- 課題を定義する
- 課題を因数分解する
- 課題を解決するのに必要な能力・機能を明確化する
- その能力・機能を調達する
- 調達した人材、AIを統合しながら課題を解決する
こうして、最小限の労力で、最短の時間でアウトプットを出す、ビジネスを動かしていくのがビジネスプロデューサーである。
ビジネスプロデューサーになるためには、人、モノ、金など、あらゆる資源を集め、統合していく必要がある。その起点になるのが「瞬考」である。人をキャスティングするにも、他人の心を動かせるような仮説を瞬時に唱えられる実力がなければならない。
そして、力を貸してくれた人と1つ1つ仕事を丁寧に完遂していくことで、ネットワークがコツコツと積み重なっていく。ネットワークが広がれば「この問題はこの人に聞けば、一瞬で解決できそうだ」という仲間が増えていく。このサイクルを繰り返していくことが、ビジネスプロデューサーへの道のりである。