現場論 「非凡な現場」をつくる論理と実践

発刊
2014年10月24日
ページ数
353ページ
読了目安
457分
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非凡な現場のつくり方
「非凡な現場」は競争優位につながる。
いかにして優れた現場力、組織能力をつくりだせば良いのかを解説する一冊です。

現場とは何か

概念:現場とは過去から未来に向かって進行する中の「いま・ここ」である。
目的:現場は価値創造を実行するために存在する
役割:現場は価値創造に必要な業務を日々遂行し、人材を育てる
特性:現場には可能性がある一方で、「人の固まり」という特性からリスクもある

現場をコントロールする事は容易ではない。だからこそ、現場にはマネジメントが必要である。人間の能力が努力と研鑽によって磨かれるのと同様に、現場力という組織能力も理詰めで粘り強い経営努力によって改善する事が可能だ。

 

現場力とは何か

現場力という組織能力は次の3つの異なる能力による「重層構造」になっている。

①保つ能力
決められた業務を確実に遂行し、決められた価値を安定的に生み出す能力。当たり前の事を当たり前に行うという「凡事徹底」は現場にとって基本中の基本である。「当たり前」とは「標準」と定義される。仕事のやり方や手順を定める「標準作業」、目標を定める「標準コスト」、目標納期を定める「標準納期」など、業務遂行に必要な「標準」を明確に定めて明文化し、周知徹底させ、確実に実現できる能力を磨く事が大切である。

生産性の低い現場には「しか」が多い。「私しかできない」「彼にしか任せられない」など、仕事が属人化し、放置されたままになっている。一方、生産性の高い現場では「でも」が多い。「誰でもできる」「新人でもこなせる」など、標準化が確立され、誰にとっても「当たり前」になっている。

 

②よりよくする能力
現場力を競争上の優位性にまで高めるためには、現状を維持するのではなく、「よりよくする能力」を磨き込む必要がある。「よりよくする」とは、日々「改善」するという事である。この改善能力こそ、現場力という組織能力の中核にほかならない。「改善」によって生まれる差異は、1つずつを見れば「微差」である。しかし、競争という視点で見れば、「微差」は決定的な差になりえる。

トヨタでは「改善マラソン」という言葉をよく聞く。改善とは「一度だけやっておしまい」というものではなく、「いつまでも続く」事こそが本質である。その継続性にこそ差別性がある。

 

③新しいものを生み出す能力
非凡な現場は、日々の業務を遂行しながら、全く新しい価値を生み出す革新的な取り組みも行っている。現場の「気づき」は新商品や新サービスだけに留まらず、全く新しい発想やコンセプトを生むこともありうる。

3つの能力のどれがその現場の「コア能力」になっているかによって、現場力のレベルは大きく異なってくる。「保つ」がコア能力である現場では、「よりよくする」「新しいものを生み出す」事は期待できない。肝心なのは3つの能力の「どれがコアとなっているか」だ。多くの企業の現場は「保つ」がコア能力であり、そこに留まってしまっている。

 

現場力は重層的に連なっており、「保つ能力」が確立しなければ、「よりよくする能力」を積み上げる事ができない。同様に「よりよくする能力」があってこそ「新しいものを生み出す能力」を積み上げる事ができる。現場力という組織能力の企業間格差が大きい理由がここにある。

組織能力は一気に高まる事はないが、着実な鍛錬を積み重ねていけば、能力を高め、現場力を進化させる事は十分に可能である。

 

愚直さが非凡な現場を生む

大半の企業の現場力強化の取り組みは、単なる「活動」で終わってしまっている。それに対して「非凡な現場」の活動は、時を経て「組織能力」にまで昇華されている。「活動」と「能力」は全くの別物だ。それを認識する事が、現場力という組織能力を高めるための最初の一歩である。

 

活動が一過性的で短期志向であるのに対し、能力は持続的で長期志向である。現場における「知識創造活動」を「知識創造能力」へと転換できるかどうか。現場力を高め、「非凡な現場」をつくる鍵はここにある。

「活動」を「能力」へと高める事ができるかどうかの差は、「愚直」に活動に取り組んでいるかどうかである。愚直さは「非凡な現場」をつくるために欠かせない要素である。ありふれた活動でも、愚直に取り組めば必ず「成功体験」をもたらし、それが愚直性を強化し、やがて組織能力化する事ができる事を教えてくれる。

 

何のために活動し、何にこだわって活動するのか

活動が能力へと昇華し、差別化された卓越した現場力が生まれた背景には、「戦略」「能力」「信条」という3つの異なる要素が絡み合い、リンクしている。

①戦略レベル
どのような差別化、ポジショニングを目指すかという経営の戦略目標・方針

②能力レベル
戦略を実行し、価値創造を行う組織能力の構築・強化

③信条レベル
企業活動を底辺で支える共通の信条、価値観の共有・浸透

「戦略ー能力ー信条」を一体化させる。策定された戦略が現場に展開され、一人ひとりが戦略の方向性を理解し、納得し、行動に移す事が重要である。現場力という組織能力を高める鍵はここにある。