本当にわかる 為替相場

発刊
2023年4月13日
ページ数
320ページ
読了目安
519分
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推薦者

為替の入門書
直近の円安・ドル高のトピックスなども盛り込みながら、為替相場がどのような要因で動くのか、その仕組みやトレンド、経済指標の読み方など、為替のことに詳しくなる一冊。

為替のニュースの内容がよくわかるようになり、経済についての理解が深まります。物価やインバウンド、景気や生活にも直結する為替のことに詳しくなれば、どのように今後対応していけば良いのかを考えるきっかけにもなります。

あらゆる通貨の値動きをチェックする

テレビや新聞などで、為替レートの変動が報道される時は「円高」「円安」というように、円を中心に語られる。しかし、外貨で運用する場合、円だけを中心にして為替レートを見てしまうと、そこから得られる情報がやや偏ってしまう。
2022年の相場では、円はすべての通貨に対して下落しており「円全面安」だった一方で、ドルはすべての通貨に対して上昇し「ドル全面高」だった。これまでにないインフレに見舞われている諸外国で利上げが続いたのに対し、日銀が緩和政策を維持したことが、円安要因だった。ただ、日銀は維持していたのであって、金融政策については少なくとも12月までは特に目新しいニュースはなかった。むしろ注目すべきは米国の動きで、米国経済が過熱状態にあり、市場参加者が想定していた以上に極端なインフレに見舞われたこと、これによってFRBが予想以上の大胆な利上げを繰り返したことなどがドル全面高の背景だった。こういう時には、米国の金融政策や、その判断材料となる米経済指標に目を向ける必要がある。

 

同じ期間、強い円安圧力と欧州中銀による11年ぶりとなる利上げによって、ユーロは対円で上昇した。しかし、FRBによる急ピッチな利上げに加え、ウクライナ危機を巡って欧州では天然ガスの需給が逼迫し、インフレと利上げによる景気減速懸念などが重しになり、対ドルでは大幅に下落した。
このように、通貨の通貨の強弱を把握することは、為替相場の変動要因を分析する上で重要であり、そのためにはドル円だけでなく、あらゆる通貨の値動きをチェックすることが必要である。

 

今の為替相場全体の値動きを牽引しているのはどの通貨かを最も簡単に知る方法は、「ドル円」「ユーロ円」「ユーロドル」の3つの通貨ペアだけを同時にチェックすることである。通貨の強弱の全体像がより鮮明に見えるようになる。

 

トレンドの読み方

個人投資家は大口の取引を実行する機会もなく、オーダー状況を睨みながら雰囲気を察知することもできないため、瞬時の取引ではなく、「トレンド(相場の方向性)」をつかむことに力を注いだ方がいい。相場には「上昇トレンド」「下落トレンド」「横ばい」という3つのトレンドがある。現状のトレンドがどれに当てはまるかを考え、取引手法を考える。

 

例えば、今が「上昇トレンド」の最中で、このトレンドがまだ続くと思えば、その流れについて行く「順張り」が適している。一方、「上昇トレンド」でも、トレンドの終わりが近いとみれば、トレンドが転換する水準を待って売りから入る手法もある。これが「逆張り」である。ある一定の幅で行ったり来たりを繰り返すレンジ相場が続きそうであれば、逆張りが最も適している。

 

個人投資家でも参考になるプロの手法が「ストップロスオーダー」の置き方である。ストップロスとは、もし自分の相場観が外れた時に、どこで損失を確定するか、その水準に置く注文のこと。

うまいディーラーは「ストップロスは近く、利益確定は遠く」が基本。これができるのは、相場のトレンドが読めており、自分がポジションを取ろうとしている、今のスポットレートが、大きなトレンドの中でどのあたりに位置しているかを、きちんとイメージできているからである。このディールによって、最大いくらまでなら損しても良いかという最大損失額をあらかじめ決めて、ストップロスオーダーを置ける水準からしか、ポジションをとらないのである。

 

相場は一直線に上昇し続けたり、下がり続けたりすることはない。必ず上昇と下落の「波」を繰り返しながら、長期のトレンドが形成される。従って、相場見通しについて語る際、この「上昇」や「下落」の波のどこの部分について話しているのかを明確にすることが極めて重要である。

実際にどこに売買注文を置くのか、ストップロスをどこに置くのかという戦略を組み立てるにあたっては、1週間のトレンドなのか、1年間のトレンドなのかという、予想の「時間軸」を明確にすることが重要である。また、取引の戦略上は、最終的に「上か下」のどちらの方向を予想しているかがカギとなるから、予測を組み立てる場合は、最も長期の見通しから立てていき、段々と短い波を予測していくのがいい。

 

トレンドの具体的な期間と、相場変動の要因は次の通り。

  • 超長期(2年以上先):経常収支、購買力平価、実質金利差、経済構造上の問題点など
  • 長期(1〜2年):景気循環、各国の金融政策
  • 中期(半年〜1年):景気のトレンド、通貨間の金利差、金融政策に対する予想
  • 短期(1週間〜半年):市場のセンチメント(雰囲気、需給、テクニカル要因)
  • 超短期(日中、1週間):市場参加者の思惑、経済指標発表直後のサプライズ、ストップロスオーダー実行

 

時間軸を分けて考えると、背景にある相場の変動要因が、どの程度の期間、相場に影響を与えるのかが見えてくるため、相場の見通しが立てやすくなる。