問題解決ラボ 「あったらいいな」をかたちにする「ひらめき」の技術

発刊
2015年2月27日
ページ数
256ページ
読了目安
245分
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デザイナーはこうして問題を解決する
デザイナーの佐藤オオキ氏が、「あったらいいな」をカタチにする「ひらめき」の技術を紹介している一冊。デザイナーがどのように問題を発見し、それを解決するのかというプロセスや技術がわかります。

正しい「問い」が見えてくる

①「制約」を少しずつ落として選択肢を増やす
ものづくりには制約がつきもの。しかしその制約をすべて額面通りに受け取っていては、新しい解決策が出ない事も多い。こうした時、制約を少しずつ崩してみると、アイデアにバリエーションが出る。例えば、制約が10個あったら、順番に1個ずる落として、まず9通りにする。1番を落としてみて、2から10を大事にして考えてみる。次は2番を落としてみて、1と3から10は大事にしてシュミレートしてみる。そうやって、アイデアをどんどん出していく。

 

②見えていなかったものを見えるようにする
「誰も見た事がないもの」は「誰も求めていないもの」と紙一重。理想は「本来はそこにあるはずなのに、なぜかない」ものを「補充する」くらいの感覚である。大事なのは「対象物を置いてあげる」こと。その棚に本来はあるべきものなのに、なぜかそこに穴が開いていてそれを埋めてあげる。

 

③隠れたニーズを引き出す
「ありそうでなかったもの」はあくまで手段であり、本当の目的は「隠れたニーズ」を引き出すこと。小さな物事でも「何か問題はないかな。みんな本当に満足しているのかな」と問う事が先決である。結果として、アイデアが「ありそうでなかった」と人から言ってもらえるという話だが、この順序を逆にしてしまうと「そもそも必要ないからない」アイデアになり、正解には辿り着けない。「ない」には必ず訳がある。やるべき事は、隠れたニーズを引き出して、問題の核心を探していく事である。

 

④「ちょっとした思いつき」から課題を見つける
「ちょっとした思いつき」がデザインになる事がある。「ん?」と気になった事を無作為に頭の中で浮遊させて、いくつかの要素が1列に連なって見えるポイントを探して、ブスッと1本の直線で串刺しにする感じ。この時、直線である事が大事である。「直線=最短距離」なので、文字通り複数のイメージが「直結」する。

 

⑤欠点のないアイデアは愛着も湧かないし、記憶にも残らない
アイデアが記憶に残る条件は、アイデアの中にデメリットを残す事にあるのではないか。ネガティブな要素と一緒に伝える事によって、全体としてはポジティブに伝わる。商品はキャラが大事。キャラクターには欠点があり、その「弱さ」があるからストーリーが生まれるし、感情移入もできる。

 

⑥何事もできるかできないかは別にして「とりあえずやってみる」
ムチャ振りにはいくつか特徴がある。まず、ムチャだと思う時点で、勝手に決めてしまった「できないと思い込んでいること」に気付ける。ムチャ振りをすべて期待と捉えて、その期待を1ミリでも超える事に集中すれば、今までとは違う目線で問題が見えてくる。

 

⑦センスよりも「好き」でいつづける
「自分にはセンスがないからできない」と言う人がいるが、センスよりも「好き」でいつづける事こそが問題発見やアイデア出しにおいて重要である。世界のトップ10が戦っている時に「これはもうセンス」と感じるときはあるが、それ以外の場面においては、すべて努力でカバーできる。誰よりもそれについて考えて、誰よりもそれを好きでいること。その事を意識して日々の課題に取り組むだけで、例えばそれに付随する事にいろいろ興味を持ったり、違う事であってもどんどんチャレンジできたりする。

 

⑧運を味方につける
チャンスというのはオブラートに包まれているもの。だから、チャンスをつかめないと言う人は、第1は単に気付かない人で、第2は面倒くさいと思ってチャンスから目をそらしている人。「面倒くさいこと」こそ、全力でトライするよう意識すれば、チャンスは自然と寄ってくる。

 

ホントの「解決法」が見えてくる

①ルールをゆるやかに崩す
様々な課題を解決するに当たって重要なのが、その課題を正直にそのまま受け入れないこと。そもそもなぜその課題に至ったのか、「事の発端」を共有する事で、糸口がいろいろと見えてくるからである。課題自体を再解釈し、ルール内だけで物事を考えるのではなく、時には「ルール自体」をゆるやかに崩す」必要がある。その鍵を握るのは「脱線」の有効活用にある。脱線しては本筋に戻ってくるというジグザグによって「事の発端」を問い直す事になる。

 

②誰もが見た事があるようで誰も見た事がないものを作る
顧客やユーザーだけでなく、市場全体あるいは社会が抱く共通の「安心感の領域」があって、その領域すれすれに接しているようなアイデアこそが「正解」だと思う。不安と安心の狭間が一番ワクワクする。そのすれすれのポイントを探るのは、膨らんだ風船の表面を探るようなイメージ。多くの人は、輪郭を恐れて安心感の領域の内側で戦っている。そんな時、きわどいところをいくと、そこにより大きなメリットがあるかもしれない。

 

③既成概念を裏切る
同じものからでも一杯ダシを吸い取れる人と、全く吸い取れない人がいる。後者の人が「もうこれ以上アイデアが出ない」と言うのは、頭の中で整合性がとれてしまっている状態だから。例えば「ペン」であれば、「ペンとはこういうものだ」とイメージが固まってしまっている。一方「これはペンではない何か」と考えるのが思考の裏切り。「ペンじゃない」と言われるから「えっ?」となる。重要なのは「えっ?」という状態を常に自主的に繰り返せるかどうかである。

 

④既にあるものを組み替える
ゼロからアイデアを考えるのもデザインだが、既に存在するものにアイデアを付加する事も立派なデザイン。この時に重要なポイントは「新たな価値」を生み出しているかどうか。「リニューアル」と「リデザイン」の違いには2つのポイントがある。1つは古いものの中から本質的な価値を正しく抜き出して活かせているか。もう1つは、新しいターゲットを生み出しているか。

 

⑤「光る脇役」から考えてみる
時には脇役が主役を食ってしまうようなバランスがあっても面白い。そもそも脇役とは「偏っている」ところに良さがあり、個性になっている。歪みや偏りを額面通りに受け取らず、ポジティブに受け入れる事こそが、「脇役」発見の鍵となる。こうした脇役は料理次第で毒にも薬にもなる。

 

⑥常に差別化の事ばかり考える
既存の商品や既存の市場に対して、歪みや違和感みたいなものをどう生み出すか。ここで、必要なのは他者との比較ではなく「自己チュー」な考え方をしてみること。一度、市場の動向を無視してでも自分たちがやりたい事なのかどうか考えてみる。