問題解決につながる思考の整理作業をノートで行う
マッキンゼーでは、問題解決を行うために、ノートを「思考ツール」「問題解決ツール」として使う。真の問題を定義し、問題そのものを構造化し、事実と、そこから導き出せる解釈、そして解決策となる行動までをノート上で明らかにするために、自分の手を動かす。問題の定義、事実の分析や整理、仮説と解決策の見極め、具体的な行動まで、問題解決ができる人のノートは、それらがすべて明確になっている。
重要なのは、何が真の問題かという「問題の定義」と、その問題を解決するための道筋を見つけ出すために「問題を構造化」すること。そのためにノートを使う。自分の思考は「言葉」にして発する事や「文字」にして書く事で、混沌とした状態の思考から一歩抜け出して、本質的でクリアな思考ができるようになる。
マッキンゼー流ノート術で大切な3つの心構え
①仮説を考えながらノートを取る
何の仮説も立てずに情報収集や分析をすると、どこまで何を調べれば「真の問題」を見つける事ができ、その問題解決の鍵となる「イシュー(最も重要な課題)」につながるのか、なかなか見えてこない。そこで「仮説」が必要となる。仮説を立てる時には、これまでのリサーチや集めた情報から可能性の高そうな仮説に絞って考える。その上で、検証を行ってみて、最も有力な仮説の「当たり」をつける。
②アウトプット志向
アウトプットとは、自分以外の第三者に対して、プレゼンテーションや問いかけ、報告などを行うこと。ノートを取る行為の先にある「第三者へのアウトプット」という目的を常に意識する。
③ストーリーラインで考える
ストーリーラインで考えるというのは、一部分だけを見て物事を考えるのではなく、全体像をつかんだ上で、物事が置かれている状況を見て、それからその物事がどう変化していくのか、その「流れ」を考えること。問題解決の基本プロセスである「問題設定とイシューを決める→課題を整理して構造化する→現場の情報をリサーチする→解決策の仮説を立てる→仮説を検証する→解決策を決める→解決策を実行する」というストーリーラインに沿って、ノートを使い分けながらゴールに向かっていく。
「問題解決ノート」の使い方
マッキンゼー流のノート術は、問題解決の基本プロセスに沿ってノートを使い分ける。
①本質的な問題は何かを定義する
集めた情報を「Where(問題の在りか)」「Why(原因)」「How(対策)」の3つの意味合いで分ける。真の問題を見つけ出す時のポイントは、まず「Where」を考えること。集めた情報の中から「Where」をノート上に抜き出し、関連性がありそうな情報同士を分析してみる。グルーピングした情報から、気が付いた大事な事=論点を書き出してみる。すると、その論点に引き寄せられるように断片的な情報がつながって、整理され、そこから新たな発見があったり、自分の思い込みが修正されたりして仮説が立ち上がってくる。
②仮説を立てる
仮説を立てる時に、ノートを使ってやる事は、気になった情報を「事実」「解釈」「行動」の3つにグルーピングすること。ポイントは次元の異なる話や情報を一緒にしないこと。ノート上で3つをグルーピングする時派、ページの左側に「ラベル」という「何についての情報なのか」の目印となる見出しを書き込めるように区切る。「これが仮説かな?」と思ったら、ワンメッセージの具体的な表現で質問形式にする。
仮説が立ち上がったら、仮説検証に入る前に、仮説をもとに、解決策を実行するまでのストーリーライン(起承転結)を考える。そして、ストーリーラインが見えた段階で全体の作業設計図をノートに描く。
③仮説を検証する
仮説が本当に使えるのか、その仮説を持って現場でヒアリングを行う。現場で「仮説」を効果的に検証するために、事前に「質問リストノート」をつくって用意しておく事が重要である。マッキンゼーでは、質問リストなくして、現場でのヒアリングはしないのが鉄則。「Where」「Why」「How」の3つの要素がきちんとつながるように質問して仮説を検証する。
現場で仮説について質問していく時には、その返答を聞いて終わりになるような質問ではなく、そこからさらに本質に迫っていけるような「いい質問」を重ねていく。出てきた答えに対して「それはなぜですか?」という質問を繰り返し、検証を深めていく事が大切である。
④アウトプットにまとめる
マッキンゼーではアウトプットの資料をまとめる時に、いきなりパワーポイントに向かわないのが基本中の基本。まず、ノートを使って徹底的に思考を磨き、整理して全体のストーリーラインをしっかり描く。そして、「ワンチャート、ワンメッセージ」の原則に則ったチャートのドラフト版をつくってから、初めてパワーポイントで資料を作り込む。
アウトプットを形にしていくには「サマリー」を常に意識してノートをつくる。