空想を物語にする
人々のライフスタイルが多様化し、物事の変化や進歩が速くなっている今の時代、新しい商品やサービスを生み出すためには、ロジカルに現実から積み上げて考える方法だけでは通用しづらくなっている。そこで注目されているのが「空想」である。なぜなら、常識を超えたアイデアで新たなビジネスを生み出す人は、必ずと言っていいほど空想をしているからである。
とは言え、空想や妄想の水準には、ばらつきがあり、実際には玉石混交である。そのため、空想や妄想のポテンシャルを見極めたり、強化するために「物語の力」を活用する。空想や妄想は物語になることで形が生まれ、客観的に評価しやすくなる。さらに、物語になることで現実に還元できるビジネスのアイデアを抽出しやすくできる。
空想やアイデアを物語にするプロセス
①空想する
自然法則に反するような「荒唐無稽の度合い」が高いものも含め、現実を度外視して自由に考えを膨らませる。
②空想を物語にする
頭の中で考えていることを物語にする。荒唐無稽でOK。
③アイデアを考える
物語をもとに技術の発展した先の未来も含め、現実世界で実現できうる商品やサービスのアイデアを考える。
④アイデアを物語にする
考えたアイデアを物語という形でプロトタイピングする。
⑤実現する
考えたアイデアやその企画書、そして物語をもとに、プロトタイプも含めて実際につくり上げる。
ショートショート発想法 〜執筆〜
空想やアイデアを物語にする時には、長編小説などの長い小説形式ではなく、ショートショートという形式が良い。「ショートショート」とは「短くて不思議な物語」のこと。現代ショートショートとは「アイデアと、それを活かした印象的な結末のある物語」のことである。
ショートショートは、特にワンアイデアを重視する形式だから、ビジネスにおける空想やアイデアを物語にする時にも、それらをうまく受け止める器になってくれる。また、ショートショートは短いがゆえに、執筆に要する時間も短い。気軽に書けることで、空想やアイデアがもたらす未来像を思考実験的にたくさん描ける。
・事前のワーク(制限時間7分)
①名詞を探して書く。
自分の好きな名詞を1つ書く。次に、自社や自社の業務領域に関連する名刺を19個書く。商品名などの固有名詞でも構わない。
②好きな名詞から思いつくことを書く
好きな名詞から10個、思いつくことを書く。名詞、形容詞、動詞、副詞などなんでも構わない。
・ショートショートのつくり方
Step1:不思議な言葉をつくる
パッと聞いて「不思議だな」「聞いたことがない」「違和感がある」「あり得ない」などを感じる言葉をつくる。「好きな名詞から思いついた言葉+名詞(好きな名詞以外)」という形で、言葉と言葉を組み合わせて不思議な言葉をつくる。
ex.消せるボールペン、羽のない扇風機
Step2:不思議な言葉から想像を広げていく
不思議な言葉の中から、個人的に気になるものを1つ選び、以下の質問に回答していく。
- それは、どんなモノですか? 説明してください。
- それは、どこで、どんな時に、どんな良いことがありますか。
- それは、どこで、どんな時に、どんな悪いこと、または上に書いたこと以外にどんなことがありますか。
Step3:想像したことを短い物語にまとめる
Step2で書いたものから適宜、取捨選択して短い物語にまとめる。
ショートショート発想法 〜読み解き〜
読み解きパートの目的は、完成した作品に潜んでいる、ビジネスシーンで活用できそうなアイデアを探ることである。まずは果物から果汁を絞り出すようなイメージで完成作品からできる限りのアイデアを抽出する。他の人との想像の連鎖が広がるため、できる限り複数人で取り組むのが良い。
読み解きを行う上では、以下のことを念頭に置く。
- 現実に寄せることを意識しつつも、飛躍の感覚を大切にする。
- アイデアに求める条件を事前に簡単に整理しておく。条件を絞りすぎると想像力のブレーキにつながる。
- 考えるアイデアは自社や自分の業務領域にとらわれすぎない。
読み解きは、次のようなことを行っていくイメージで進める。
- 描かれている内容からストレートにアイデアを考えてみる。
- そのままでは商品やサービスとしての魅力が弱そうな場合、弱いと思われる部分を補ったり、別のものと入れ替えたりしながらさらに考えを広げてみる。
- 途中で連想したものがあれば、それと掛け合わせて考えてみる。