若者の取扱説明書

発刊
2013年6月16日
ページ数
198ページ
読了目安
189分
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ゆとり世代をやる気にさせるコツ
真面目だが積極性に欠ける「ゆとり世代」の特徴を分析しながら、彼らを伸ばすコツを紹介する。「ゆとり世代」というレッテルを貼られ、自信がない彼らをやる気にさせる秘訣が書かれています。

真面目で消極的な今どきの若者

今どきの若者は「驚くほど伸びる」。但し、放っておいても伸びない。付き合い方をガラリと変える必要がある。

そもそも「ゆとり世代」はさぼり世代ではない。むしろ、出された宿題は必ずやってくる。ただ問題は、過剰な情熱というものを持たない事だ。若者の側から「これは自分にやらせてほしい」などと食ってかかってくるような事がまずない。例えば大学の30人のクラスでも「誰か発表してくれ」という言い方をすると、手を挙げる者はまずゼロである。

彼らとしては「突出して恥をかきたくない」という心理がある。それに、周囲から「あいつ、何がんばっちゃってるの?」と積極性を冷やかされる事も避けたいらしい。あるいは、「人が通った道でなければ危なくて通れない」という慎重さも持ち合わせている。昔は「積極的」で「いい加減」な学生が多かったのに対し、今は「消極的」で「真面目」な者が多い。おかげで世間からはエネルギー不足と見られてしまう。

 

若者との異文化コミュニケーション術

・上からの圧力より、横からの刺激で動く
今の若い人は「公」より「私」の優先順位が圧倒的に高い。上下の1対1の約束は、意外に簡単に破られる。今は師弟関係よりも、友人同士の横のつながりの方が強い。友人が頑張っていれば自分も頑張るし、仲間の多くがクリアした事は自分もやらなければまずいと考える。だからこそ、「周囲のみんながやっているから、自分もやらなきゃ」という同調圧力を効果的に使う。

 

・競争原理が働く仕組みを用意する
指示を出すなら、能力や資質に頼らないようにする事が重要だ。やらなければゼロだが、やれば誰でもできる、という形で課題を提示する。この時に「質は問わない」こと。それを条件にすると「レベルが低いと恥をかく」と考えて、提出を見送るおそれがある。とりあえず指示通りの結果を出させ、全員の結果を持ち寄り、どれが優れているか議論させれば、次は質の高いものを出そうと頑張る。

・フランクでオープンな態度をとる
部下が嫌う上司のパターンとしては「自己顕示欲が強い」「部下の仕事を自分の成果にする」「ミスをなかなか認めない」などが挙げられる。ミスをしたら「自分のミスだ」と率直に謝ればいい。そういうフランクでオープンな態度の上司を、部下は信用する。

・傷つかないための予防線を壊す
若者の特徴の1つが、常に傷つかないための予防線を張ろうとする事だ。若者たちは自分の実力が晒される事を苦手とする。恥をかきたくないという思いが極めて強い。だからこそ「言われていないことはできない」「マニュアルに書いてもらわないと困る」という話になる。対策は、まず上司・先輩が部下の手本となること、そして部下に逐一指導する事だ。上司・先輩の予防線のなさを見せるのが最も手っ取り早い。

・腹を割って話す必要はない
今の若者は、上司との間に濃い人間関係を築きたいと思っていない。彼らは常に適度な距離感を保ちたいのである。たとえどれほど上司が飲み屋で熱く語ったとしても、若い部下にはさほど響かない。自分の時間を干渉された事になるからだ。

・部下を見守る姿勢をとる
上司に必要な要素として「部下をずっと見守る姿勢」が挙げられる。簡単に記録しておき、機会を見つけては、以前より変化した点について「あの時のこれは良かったよ」「ずいぶん成長したね」などと声をかける。

 

若者を伸ばすコツ

若者の「消極的」「真面目」という気質は長所にもなりうる。この気質を逆手にとることで、彼らはどんどん向上する。

「周囲のみんながやっているから、自分もやらなきゃ」という意識が生まれる事を「同調圧力」と呼ぶ。但し、圧力といっても「競争に勝て」「トップを目指せ」といった類では弱い。今の若者には、そういう意欲が乏しい。それより有効なのは、「取り残されてもいいのか」と「脅し」をかける事だ。

集団の中にいる彼らにとって最大の恐怖は、自分一人だけ浮いたり、さぼっていると見られる事だ。もともと叱られる事に慣れていないし、恥もかきたくない。それに「真面目が取り柄」と自覚しているところがあるため、それを自ら否定するような状況には陥りたくないのである。

そんな彼らの発想を逆手にとり、努力しなければやり過ごせない状態に追い込む。その際、重要なのが「自分にもできた」と自信を持てるような場をつくる事だ。彼らには「いいものに合わせていく」という性質があるため、まずは「その人のやる気の好循環というものを引き出す」サイクルに入る事が最も大事である。

今の若者は「ゆとり世代」と呼ばれ、ずっとネガティブな評価を下され続けてきた。従って根本的なところで自信を持てずにいる。そのため、彼らの「褒められたい願望」は極めて強い。たった一言の「褒めるコメント(褒めコメ)」でも、勇気百倍の栄養剤になり得る。

 

褒めて伸ばす

現在の若者たちは、決して個性的とは言えない。本人たちもそれは自覚していて、「周囲と同じでいい」「目立ちたくない」という気持ちが強い。にもかかわらず、一方では「自分を見てもらいたい」という意識も強烈に持っている。「自分は個性的でありたい」と願っている訳だ。この一見すると矛盾しているナイーブな感情を理解できるかが、若者を知るカギとなる。

彼らは自らに個性がないと自覚する一方で、「個性が大事だ」と言われるギャップに直面している。それを埋めるには、表現の機会を与え、ポジティブに褒める事が一番だ。「君だから頼むんだよ」と指示し、具体的にどこが良かったのかポイントを挙げる。彼らは、それで「見てくれているんだ」と安心し、自らの「個性」を認識できるのである。

「気を遣って褒めると、かえって調子に乗ってサボるのではないか」というのは杞憂だ。コンスタントに声をかけ、積極的に褒めていれば、逆に彼らは気を抜けなくなる。彼らは、自信を持てずにいる。それを持つには他人の評価が欠かせない。だから、自分を高く評価してくれる人に対して「いい人だ」というイメージを持ちやすく、「その人の信頼に応えるように頑張ろう」となる。