気づかいの壁
気づかいの前には、人間が持つ「2つの壁」がある。気が利く人になるためには、この2つをうまく乗り越えたり、尊重したりすることがポイントである。
①自分の心の壁
「余計な一言かもしれない」「たぶん迷惑だろう」と、自分で決めつけ「何もしない」ことを選んでしまう。気づかいにおけるハードルを感じるのは、圧倒的に「声がけの瞬間」であることが多い。
②相手の心の壁
いいアドバイスも、壁を越えると「説教」に変わる。気づかいには「相手の領域に踏み入らない」「やりすぎない」「引き際を知る」ということも必要である。
自分の壁を越えることが「アクセル」だとしたら、相手の壁を尊重するのは「ブレーキ」の役割である。
気づかいをするために必要なのは、たった1秒の「判断軸」。それは「自分がされて嬉しかったこと」を思い起こしてみることである。それがセットになることで、「だったら壁を越えてみよう」という意識が腹落ちする。これが、気づかいの最初の一歩である。
「自分の壁」を越える方法
①見返りを求めるクセを取り除く
「自分の心の壁」を越えるために、必要なマインドセットは「人が見ていなくてもやる」ということ。日頃から誰かが見ていなくても、「自分がされて嬉しかったことをやる」ということをクセづけるようにし、「誰かが見てくれていないと意味がない」といったコスパ重視の考え方から抜け出さないといけない。目先の損得でしか行動できない発想を捨てることから、気づかいは始まる。
②出社して目が合ったら自分から声がけ
先輩や同僚から話しかけられた時、仕事の途中でも意外と嬉しくなって、つい話が弾んだりする。だったら、「自分がされて嬉しいかどうか」を軸にして、話しかける機会を増やしてみる。
③「すみません」と言いそうになったら「ありがとう」に替える
「静まり返った空気を瞬時に変える」という達人たちの共通のルールは「ありがとう」の頻度が高くなること。ちょうどいい気づかいをするためには「すみません」を「ありがとう」に替えるだけでいい。これだけで印象が変わる。
④相手の「名前」をやや多いくらい呼びかける
人の印象は最初の15秒で決まると言われる。この15秒を制するためには、相手の名前を呼ぶこと。名前を呼んでもらった方が、相手も親近感がわいて、グッと距離が縮まったような気持ちがする。最初の段階で名前を何度も繰り返し、後々、相手の顔を見るだけでスッと名前が出てくるようにすると好印象である。
⑤外からの「訪問者」に声をかける
受付エリアで担当者を待っていると、「どうぞ、おかけになってお待ちください」と、通りすがりの社員さんに声をかけてもらえるような企業がある。訪問者への「気づかい」が、組織風土になっているのがわかる。躊躇なく声をかける時のコツは、「いいことをしてやっている」という気持ちではなく、「相手の状況を知ろう」と、さりげなく確認する態度でいることである。
「相手の壁」を尊重する方法
①「乱暴な言葉」を言い換える
仕事に慣れてくると、つい無意識に乱暴な言葉を使ってしまうことがある。すべての言葉を丁寧にする必要はないが、「お客様」「商品」「取引先」などに関することは、ちゃんと日頃から尊重するようにする。大事なことを裏表なく丁寧に扱っている人は好印象である。
②自分の行動に「やっつけ言葉」をつけない
「一応」「とりあえず」「ひとまず」などの言葉は、自信のなさが表れてしまい、地味に相手を不快にさせる。これらの言葉は、どうしても「言い訳している」ように聞こえる。言われた相手は、突き放されている感じや、対立している感じを抱く。自分の行動に関することは言い切ること。
③鏡を見て「話しかけるなオーラ」を取り除く
人は自分が思っている以上に「話しかけるなオーラ」を出している。話しかけやすい雰囲気を作ることが大事である。不機嫌な顔をしない方法は、デスクに鏡を置くこと。鏡を置くと、チラッと見るだけで、自分の表情に気づける。
④相談に来た人に「椅子」を差し出す
上司や同僚に相談に行くと、一方は座っていて、もう一方は立ったままという状況になりがちである。話が長くなりそうな時には「座って話そうか」と声をかけられると、嬉しい気持ちになる。後輩や同僚が自分のもとに相談に訪れたら、近くの椅子を差し出すといい。
⑤目的地には「15分前」に着いておく
約束の時間の5分前に到着を目指すと、ちょっとしたトラブルが起きただけで、時間ギリギリになる。これは相手に確実に伝わる。近くの駅やコンビニなどの化粧室で、自分の姿を一度確認できるくらいの時間をつくるといい。
⑥「返信しやすいよう」にメールを書く
相手を尊重できているかどうかは、相手の時間のことまで考えられているかどうかに出る。特に「メールの文面」に、気づかいの有無は表れる。