日本一要求の多い消費者たち 非常識を常識に変え続ける生活クラブのビジョン

発刊
2019年3月21日
ページ数
208ページ
読了目安
275分
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推薦者

生産者と持続的な共存関係をつくっている活動
昔から生産者と一緒に自らの欲しいものを開発している協同組合「生活クラブ」の活動を紹介している一冊。安心・安全な商品はどのように生み出されていったのか、その仕組みがわかります。

生活クラブとは

一般には「生活クラブ」と呼ばれている生活クラブ生活協同組合は、首都圏を中心に、北海道から兵庫県まで、33の単位生協があり、組合員数は2018年11月に40万人を突破した。しかも、ここ数年、年率3〜4%の割合で、組合員数が増加している。その多くは女性である。

組合は、関連会社として、運送会社から、牛乳工場、採卵養鶏場、自然エネルギー発電所、電力会社まで持ち、組合員が設立した数多くの社会福祉法人やNPO法人もある。

日本には100万人以上の組合員を抱える生協や事業連合もあり、生活クラブの組合員数40万人、年間供給高874億円は特に多いとは言えない。しかし、組合員一人当たりの月間利用額は23,000円と他の組合平均の2倍にもなる。それだけ、他の生協に比べ、組合員に支持されている。

生産者と一緒に商品を開発

組合員はしばしば生産者のもとを訪れ、農場や工場を見学するばかりでなく、生産者が組合員のもとを訪れて説明する「生産者交流会」も頻繁に催される。また、組合員は自主的な監査を実施して、生産者の生産工程までも学び、厳しくチェックする。そもそもそれらの製品は、組合員自らが必要だと考え、生産者を探し、一緒に開発してきたものだ。だからこそ、遠慮なく生産者にもの申す。

但し、一方的に要求するだけではない。生産者が持続的に生産を続けることができなければ、自分たちが必要とするものも提供されなくなってしまう。そこには設立初期から、利用し続けることで生産を支えるという姿勢が貫かれている。

生活クラブで取り扱っている品なら、他の生協でも受け入れられると言われる。だから、生活クラブに納品したいという業者はたくさんあるが、採用されるハードルが高い。必要とするかどうかを組合員自身が決める仕組みになっているからである。

共同購入の始まり

生活クラブは、東京・世田谷の住宅地で1965年に創設された。扱ったのは、瓶入り牛乳である。当時はどの家でも牛乳は宅配で取るのが当たり前だった。乳業メーカーの製造する瓶入り牛乳を、系列の牛乳販売店が一戸一戸配達して回った。生活クラブは会員制でまとめて牛乳を購入し、自分たちで配達する形で経費を削減し、安く牛乳を飲めるようにした。会員が1000人を超えた1967年に、生活クラブは組織を生活協同組合とした。

生活クラブの注文システムには前金制という特色があった。先に注文とお金をもらって、現金で仕入れて、後から配る。在庫を持つ必要もなく、運転資金も不要。予約制だから、生産者の方も注文を受けてから生産することになる。生産計画が立てやすく、原材料費や人件費などに無駄が出ない。コストが削減できるので、その分価格も安くできる。

生産者と持続的な共存関係をつくる

生活クラブでは、食品などの取り扱い品を、商品ではなく「消費材」と呼ぶ。共同購入の根底にあるのは、組合員が望む「商品」を提供するのではなく、組合員の望む「消費材」を自ら仕入れ、手にする手段を作りだす運動として取り組むという考えであり、今も変わらない。

生活クラブは、1970年代から、21世紀になってようやく一般化するようになった企業の社会的責任や、2015年に国連が採択した「持続可能な開発目標(SDGs)」にある「持続可能な消費」の概念を先取りしていた。

生産者と生活クラブ組合員は共存関係であって、組合員は自分たちが望むものを生産者に作ってもらう代わりに、それをちゃんと購入し消費していくことで、生産者の持続的な生産と経営を支えていく。消費材とは、そのためのツールである。