霞が関の人になってみた 知られざる国家公務員の世界

発刊
2023年2月17日
ページ数
256ページ
読了目安
269分
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霞が関で働く人々の生態
霞が関で働く国家公務員の解説書。国家公務員の仕事や働き方、普段の日常やキャラなど、幅広いテーマで国家公務員のリアルな姿が描かれています。

どのようにして、国の行政の仕組みが回っているのかという根本的なことから、それを支える官僚たちの様子や仕事内容がよくわかる内容。コミカルな文体で書かれているので、雑誌のコラムを読むような感じで、サクサク読めます。
外からは見えづらい国家公務員のリアルをざっくり知るのに最適な一冊です。

霞が関で働いている人たち

リアルな官僚はドラマよりも個性豊かである。霞が関で働いていると、情報がどんどん集まってくるし、勉強しないとついていけないから、みんな強欲にインプットしながら、同時にアウトプットしていて、知識欲が高い。知らないことは面白い、という性質の人が多くて、保守的公務員像とは真逆である。頭が良くて、ロジカルで、早口、そして想いがアツい。好奇心が強い分、変化を好み、刺激中毒である。

 

霞が関ではみんな忙しく、長々と話を聞いてくれる人はほとんどいない。お作法として、重要な相談をする時は、あらかじめ1枚の紙にして、背景、課題、解決等①②③と作って、相談するルールがある。

 

新しいこと大好きな霞が関の人たちだが、オフィシャルな会議や国会では黒子になりきっている。無個性の化身のように、原稿を読み、保守的に答える。守秘義務もあるため、尖ったことも言えない。余計なことを言わないように細心の注意を払うので無表情になってしまう。その反動もあってか、職場にいる時はとてもイキイキしている。そして百戦錬磨の上の人になるほど、個性が強烈である。

 

霞が関の人は何万人もいて、役所によってもだいぶキャラが違うと言われる。

  • 経産省:肉食系
    企業の人と接することも多いからか、やり手ビジネスマンのようにガツガツしている。
  • 環境省:草食系
    穏やかな人が多い。
  • 農林水産省:温和なイメージ
    なぜか方言強めの人が多い。
  • 厚生労働省:草食系と見せかけて肉食系
    見た目は地味だが、打たれ強くメンタルは鍛えられている。

 

霞が関の人たちの特徴で「非常に綿密でロジカル」という点はいいところだが、中には極端すぎる人もいる。言葉の定義や文章の細かい部分までとても綿密だったり、エビデンスにこだわりすぎると、部下はいつまでも終わらない作業にどんどん疲弊していく。

 

霞が関の人の仕事

霞が関の人は「立法、司法、行政」の内「行政」の立場にいる。法律を定める場が国会であるのに対し、法律を実行するための具体的実務を行うのが各中央省庁で働く官僚の役割である。法律がルールだとしたら、具体的に現実に適用するために、細かいルールブックやガイドブックを作ったり、ルールの運用を監視・監督するのが霞が関の人の役割である。また、ルールである法律の案を作ったりもする。

 

配属部署によって仕事内容は異なり、同じ部署の人でも役職や役割で担う仕事が違うが、代表的なものは以下の通り。

  1. 法律案を作って法案を通すまでの巨大プロジェクト(通称「タコ部屋」)
  2. 法律に則って、ルールブックを作るところ
  3. 法律に従って運用しているか、管理監督をするところ
  4. 予算や人事など総務的な仕事や国会の調整など省庁全体を横断して取りまとめる仕事
  5. その他訴訟などの対応

これらに国会対応や、文書の確認作業、資料作成、会議への出席などの仕事がある。全体を見れば、ダイナミックな仕事をしているはずだが、霞が関の人の働いている日々の姿を見ると、パソコンに向かってパチパチやって、たまにジャケットを着て国会議事堂や議員会館や外に行ったり、現地に会議に行ったり、国会を鑑賞したりしている。ドラマになるような見栄えのあることはしていないので、何をやっているのか説明が難しい。

 

霞が関の一年

1つの省庁で何千人も働いており、部署や時期で全然働き方は違ったりするが、穏やかに1日が過ぎることは滅多にない。

 

・春:国会や通常業務、新年度事業への対応と、盛りだくさんの新年度

霞が関では通常国会真っ盛り。この時期の国会は委員会が始まっているので、国会対応にあたるし、細かいことまで詰められる。自分の部署が法案を持っていたら毎日戦々恐々。持っていなかったとしても、他の法案審議の流れ弾が当たることも多く、答弁作成者になってしまう。

そんな国会からの被弾を受けながら、前任からの業務の引き継ぎを1週間以内でやり終え、あとは完全に自立。国会の状況に関係なく、日常業務は通常通りである。

 

・夏:比較的穏やか、インプットができる。上司の人事異動に一喜一憂

国会が終わり比較的穏やかな日常が訪れる。霞が関の人にとって一大イベントは「幹部の人事異動」。幹部は上の人ほど1年程度で異動することが多く、幹部が変わるごとに「所管事項説明」という分厚い資料を作成して業務説明をする。上司との相性もあるし、流動性が高いとは言え、メンタルにも大きく影響を与える。

 

・秋:臨時国会開幕、またもや多忙な業務に追われる

内閣改造があったりすると、トップの大臣が変わり、またもや所管事項説明が待っている。通常国会+国会業務になるので、毎日のスケジュールも予定通りにいかない日々に突入する。

 

・冬:短い平和な年末年始を終え、年始から恐怖の通常国会

短い平和な年末年始を終えると、1月中旬頃から恐怖の通常国会。ここから6月頃まで、ずっと国会が通常業務に追加された状態で、気が休まることはない。メンバーは業務もベテラン級になっているので、仕事がやりやすくなっている時期でもある。

 

霞が関の人の1年はあっという間に過ぎ去る。