古びた未来をどう壊す? 世界を書き換える「ストーリー」のつくり方とつかい方

発刊
2023年1月25日
ページ数
480ページ
読了目安
616分
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ブッ飛んだ未来を描くための思考法
SFの力を利用して未来像を描き、そこから逆算して今やるべきことを考えるという思考法「SF思考」を紹介している一冊。
固定観念からはずれて、ブッ飛んだ未来像を描き、創造的なアイデアを導き出す手法として、近年日本でも注目される手法の考え方と手順が解説されています。
企業やチームなどで、新しいアイデアを生み出すための方法として取り入れることができる内容が書かれています。

古びた未来を壊す

未来はいつも目の前にあって、自由に触ったり、いじくって変形させたりできる。しかし、皆そのチャンスに気づかずに平々凡々とした日々を送っている。それは、目の前に「古びた未来」が立ちはだかって視界をふさいでいるからである。

「古びた未来」には3つの意味がある。

  1. 固定観念でガチガチの未来
  2. いったんレールが敷かれた未来
  3. 一部の人が決めた未来

 

こうした古びた未来に囲まれていると、ブッ飛んだ未来像が生まれにくくなる。自分だけのオリジナルな未来像を考えるのが難しくなる。この状況を打破するには「ハズレる未来予想」を作ったり、使ったりすればいい。

 

ハズレる未来予想を作るには、ストーリーの力を使う。「ハズレる未来予想」という新しいストーリーの力で「古びた未来」を書き換えていくのである。「未来」は「今」にとって常にフィクションである。そもそも細部まで当たる未来予想なんて1つもない。

それなら、未来を「今の続き」と考えず、最初からフィクションとして発想してみる。フィクションをテコにして、一旦「今」のくびきから離れて未来にジャンプすること。今一番一発ブチかませるのは、この飛躍である。そこにあるのは、ないことにされてきた選択肢や見えなかった選択肢である。

 

古びた未来を書き換える「SF思考」

未来を発明することにかけては、SFというジャンルがそのプロフェッショナルである。SFでは最新の科学的知見を盛り込んだ難解でハードなものから、ファンタジーやホラーに近いものまで、非常に幅広い世界観を取り扱う。だからこそ、「別様の可能性を描く」という共通点が際立つ。

現実の延長線上にないアイデアを楽しみ、そこからあり得る未来の可能性を取り出して示し、実現の道筋を描く。これがSF思考の真骨頂である。

 

このSFの力は、どう使いたいかによってアプローチが変わる。その方向性は2つある。

 

①とにかく「ブッ飛んだ未来像」を考えたい:SFプロトタイピング

フィクションの力を活用し、斜め上の未来ビジョンの試作品を創作・議論・共有する手法を「SFプロトタイピング」という。それは、次の3つの要素を備えている。

  • 未来像や別様の可能性を「フィクション」の形式で作り出すこと
  • 作品制作が最終目的ではなく、別の目的を持ってSF作品を作ること
  • クリエイター以外の専門家が関与して創作が行われること

 

SFプロトタイピングは、次の2つのステージに分けることができる。

  1. 未来ストーリーを「つくる」:世界観とプロットをざっくり考える
  2. 未来ストーリーを「あらわす」:世界観とプロットを「SF作品」に仕上げる

 

②未来像をもとにして、「今やるべきこと」を考えたい:SFバックキャスティング

SFのようなブッ飛んだ未来像も、要素を分解し、そこから逆算して「やるべきこと」「できること」を考えていけば、現実に役に立てられるし、未来も変えられる。未来や現実を実際に変えていくためには、フィクションを起点にした「バックキャスティング」のプロセスが欠かせない。これを「SFバックキャスティング」と呼ぶ。それは、次の3つの要素を備えている。

  • 未来ストーリーを参考にして「今やるべきこと」を考えること
  • 単にビジネス的に逆算するのではなく、逆算のプロセスでもSF要素を介すこと
  • フィクションを要素分解し、一部でも現実化して社会を変えようとすること

 

SFバックキャスティングも、次の2つのステージに分けることができる。

  1. 未来ストーリーを「つかう」:フィクションを要素分解し、現実とのリンクを探す
  2. 未来ストーリーに「なる」:フィクションから生まれたアイデアを現実化する

 

SFプロトタイピングとSFバックキャスティングは、別々のものとして取り組むのではなく「未来ストーリーをつくって、あらわして、つかって、最後に自分がそれになる」というサイクルを回せるようになれば、自由な発想が広がり、自由な行動が広がっていくようになる。

 

SF思考の実践で大事なのは「SFマインド」を持つことである。SF思考は「未来を創造するための手法」とよく言われる。そのため「望む未来」「ありたい未来像」を描くものだと思っている人が多い。

しかし、せっかくフィクションでプロトタイピングするなら、できるだけ「ありたい未来」でない方がいい。「ありたい未来」を避けた方がいい理由は、発想が遠くに飛びにくいこと。「未来がこうなってほしい」と考える時点で、願望が入ってしまうからである。

 

SF思考で重視すべきは「ワクワク」より「ドキドキ」である。そこで、アイデアを出す時には、次のことを意識するといい。

  • みんなが共感して盛り上がるアイデアは捨てる
  • 「これ、やってる人いそう」と思えるような現実的なアイデアは捨てる
  • 人にバカにされたり、笑われたりするアイデアは積極的に拾う

 

大事にするのは、共感より違和感である。