ネコ・かわいい殺し屋―生態系への影響を科学する

発刊
2019年4月9日
ページ数
288ページ
読了目安
453分
推薦ポイント 4P
Amazonで購入する

Amazonで購入する

ネコによる生態系への影響とは
ネコは、鳥類や哺乳類をはじめとする生物群の絶滅に大きな影響を及ぼしている。人類によって家畜化されることで、世界中に拡散してきたネコの繁栄の裏で、多くの生態系が影響を受けている実態を紹介している一冊。

指数関数的に増加していくネコ

雌ネコは一度に数多くの子供が産める。雄ネコが近くにいると雌は出産して数日で再び発情し、次の妊娠が可能になる。もし周りに血縁関係のない雄がいない場合は、兄弟と交尾したり、雄の子が母親と交尾して数が増える。それゆえにネコは一旦発情すると急速かつ頻繁に繁殖し、放置されればたちまち指数関数的に増えていく。

ネコは食物のほとんどを身の周りで自力調達できる。健康の維持に主にタンパク質と脂肪の摂取が不可欠な肉食動物のネコにとって、トカゲ、野鳥、小型哺乳類は条件を満たしてくれる食物となる。ネコはウサギやリス大の動物も殺せるが、主要な獲物はむしろマウスやハタネズミなどの小型げっ歯類や、スズメやミソサザイと同じ大きさの鳥類である。

そして、ネコの狩りの特徴は、飢えから逃れるために獲物を殺すだけではなく、空腹でなくても獲物が刺激になってさらに殺すことである。

地球上で最も成功した外来種

ネコの最初の家畜化は、いくつかの出来事が単に偶発的に組み合わさって始まったようである。人間が収穫した種子や穀物その他の食糧の貯蔵場所に、げっ歯類や鳥類が引きつけられて集まってきたために、それら動物を獲物としてネコも出てきていたのだろう。こうしてネコと人間との間に「片利共生」と呼ばれる関係が成立した。野性味が低く人間を受け入れやすい個体がいることと相まって、両者の接近がネコの家畜化を導いた。こうして飼いならされたネコの子孫が、人間の助けを借りて地球上のほとんどすべての場所に広がった。人間の意図的あるいは非意図的な行動による拡散は、イエネコに地球上で最も成功した外来種としての地位をもたらした。

外来種は、大きな被害を及ぼしうるし、一旦導入されると、環境から取り除くのが非常に困難になりうる。家畜化されたネコは地球上で最初の侵略的外来動物の1つである。新たな生態系に外来種が最初に定着し、繁殖と分散を開始する場合、空いている生態的地位を占めるか、そのニッチの先住者に競り勝つ必要がある。イエネコは、飛躍的に繁殖しながら、その両方の点では成功をおさめてきた。イエネコは現在、こうした総合影響力によって「世界の侵略的外来種ワースト100」のリストに入っている。

ネコが多くの生物種の絶滅の要因になっている

地球上におよそ18万もの島々がある。これらの島々は、高い種固有性と生物多様性を共有している。一方で、絶滅率や固有種の生息数の減少率が高いということも共通している。その割合は小面積もしくは中間サイズの島嶼でより高い。島の生物は、捕食者がほぼあるいは全くいない中で進化した結果、ほとんどのものは、逃げる能力が限られていたりする。そのため、ネコなどの極めて有能な捕食者が島嶼に侵入した場合、島の動物たちの生息数の減少や絶滅が起きるのは時間の問題となる。今日まで、イエネコは地球全体の5%にあたる約1万の島々に持ち込まれたと推定されている。その結果、イエネコは、世界の爬虫類、鳥類、哺乳類の絶滅種の14%の絶滅の一因か主要因になっていた。

ほとんどのネコは機会さえあれば、野鳥や他の小動物を殺す。こうしたネコによる死亡数は合計すると年間数十億個体もの両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類にのぼり、種全体の存続に大きな影響を与えている。ネコは人間から給餌補助される捕食者であるために、ネコの捕食は、自然界で起こる捕食をはるかに上回って野生動物に影響を及ぼしうる。家での給餌こそが、野放しネコが在来捕食者や生息地の環境収容力を大きく超えて、その場所に生息し続ける理由である。その結果、ネコの脅威はどんな在来捕食者の脅威よりも強大になりうる。