超ロボット化社会-ロボットだらけの未来を賢く生きる-

発刊
2019年4月27日
ページ数
176ページ
読了目安
175分
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ロボット社会のこれまでとこれから
ロボット研究者が、これまでのロボットの歴史を振り返りながら、これからの未来を創造する一冊。

ロボット≠人工知能

ロボットと人工知能は、よく混同される。大まかに言えば、ロボットは動く機械装置である。実体があって、移動したり、形を変えたりできる。一方で、人工知能は、人間の脳の働きを真似た、目に見えない情報処理の一種である。人工知能はコンピュータに宿り、ロボット以外にも、スマホや家電に搭載されることもある。

遠い未来、人間が丸ごとデジタル化されてインターネットに溶け込むのなら、ロボットはいらなくなるかもしれない。でも、人間が物理的な身体を手放すのは、数百年か千年か、かなり先になるだろう。それまでの物理的な作用を手助けできるのがロボットである。

ロボットを使えるようになろう

ロボットの存在は労働とは何かを考えさせる。また、ロボットは人間を怠惰にする大量生産プロダクトのメタファーにもなっている。

現在、ロボットは安い買い物ではない。例えば大型の産業用ロボットアームは1台で1,000万円を軽く超え、お手頃なロボットアームでも300万円くらい。しかも、この値段で腕1本しか買えない。ロボットハンドもロボットビジョンも別売りである。この価格の高さから実際の現場、特に小規模な事業では、なかなか導入が進んでいないのが現状である。

メーカーがロボット自体を安くする努力はさらに続く。近い将来、どんどん安いロボットアームが出てきて、ボタンを押すだけとか、つまらないかもしれないが重要な仕事をしてくれるだろう。

オートメーションが進むと、人間の仕事をどこまで機械で代替できるのか、という問いが浮上する。ロボットが広く使われるようになった時、ロボットに仕事を奪われた人間の存在意義はどう成るのか。いよいよ考える時がきている。

人間のスキルは磨いていくことで信じられないほどの高みに到達できる。そのスキルの獲得過程を、ちゃんと長期プログラムにして、新人を育成している組織は素晴らしい。一方、どんなに神業だったとしても、誰にも引き継がれていないスキルは知識化できずにやがて途絶えてしまう。

こうした問題に2つの道がある。1つは、ロボットにできない繊細な作業を人間だけのノウハウのままにすること。もう1つは、そういった作業のコツを暗黙知とせずに苦労してでもロボットに再現させる努力をすることである。ロボットにできることは、ロボットにやらせる努力をすること、人間はロボットを使えるようになることが大切である。

ロボットも使い方次第

人間の作業能力を「一人前」とすれば、ロボットにできることは、残念ながら半人前の仕事である。半人前のロボットを2台揃えても半人前が2人になるだけで、できないことはできないままである。人間がすごいのは、身一つでは一人前でも、道具を使えば1.5人前の働きができることである。これは自動化を超えた、身体能力の拡張である。ロボットも、今は半人前でも道具を賢く使うことができれば0.9人前くらいになることはできるだろう。

ロボットにも強みはある。例えば、サーバーに接続して注文と在庫の状況をリアルタイムに把握し、他の無数のロボットと協調しながら働くことである。半人前のロボットをうまく使いこなすことを探るのが得策である。その先に、人工知能から的確な指示を受けて、ロボットと人間がお互いの出せる力を最大限に発揮し、お互いを尊重しながら働く未来が想像される。