あと20年でなくなる50の仕事

発刊
2015年4月2日
ページ数
224ページ
読了目安
241分
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AIが人間の仕事を奪う
コンピュータは、能力が飛躍的に向上するにつれ、私たちから仕事を奪う存在になってきている。今後、ホワイトカラーの中途半端な知的労働者は仕事を奪われるかもしれないという。

AIが人間の仕事を奪う

これまで当り前に存在し、なくてはならないはずだった職業が様々なテクノロジーで置き換えられるケースが増える一方、従来はなかった新しい職業が生まれつつある。職業が変容する要素として一番に挙げられているのは、テクノロジーの進歩、特にAI(人工知能)である。

 

AIはビジネスを運営している人間にとっては頼もしい道具である。AIのおかげで、もっと「人間」がフォーカスするべき業務に集中できる。一方で、日常、定型的なオペレーションを回す役割を担っていた人達には悪夢にもなりうる。AIは直接的には競争相手になり、間接的には自分の生殺与奪の権を持つ可能性も出てくる。結果的に、人間はAIのために仕事を奪われるかもしれない。

 

世界中で大きな反響を巻き起こしたマイケル・A・オズボーン准教授の論文「雇用の未来」では、コンピューターにとって代わられる確率が高い職業として次のものが挙げられている。銀行の融資担当者、スポーツの審判、レストランの案内係、保険の審査担当者、電話オペレーター、レジ係、カジノのディーラー、パラリーガル・弁護士助手、時計修理工、彫刻家、データ入力作業員、簿記・会計監査事務員、映写技師、クレジットアナリスト、義歯制作技術者、建設機器オペレーター、訪問販売員、塗装工などである。

 

アシスタント・補助業務は、どちらかというと定型的な仕事が多い。人間でもロボットでも同じレベルでできるのであれば、どちらが補助業務を行ってもいい。従来は「頼む相手」の選択肢が人間だけだったので、人を雇ってきた。ところが、システムの方が進化して、入力作業から分析業務、情報収集まで容易かつ安価に行えるようになってきた。こうなると人間がいる必要はなくなる。

 

工場労働の現場で、特別な熟練技術を持たない作業者が行ってきた定型的な業務の多くは機械化されたり、海外に出ていってしまったが、それと同じ事がホワイトカラーの業務でも起きている。

コンピューターが人間の雇用を奪うのではないかという懸念の大きな要因の1つがAIだ。従来のコンピューターは人間がプログラムした通りにしか動かず、自ら学習する事もなかった。しかしコンピューターが自ら学習し、行動を変えていく人工知能となると話が変わってくる。現在、膨大なデータを瞬時に集め、それらのデータを高速で処理できるようになってきた結果、人工知能の強みは急速に増している。

 

コンピューターをはじめとする情報システムの進化は指数関数的に速くなっており、2045年には人間の能力を追い越してしまうともいわれる。仕事を奪われてしまう人の数、可能性は増えているのが現実である。経営、管理、監督に当たる一握りの人と、ごく一部のクリエイターだけが高い報酬を得てバラ色の未来を手に入れつつある一方、それ以外の人は非常に安い賃金に甘んじているのが「現在」である。しかも、ロボットという新たな脅威も生まれた。こうした社会で生き延びるためには、ロボットやコンピューターを「使う立場」になるか、自らこれらを使うビジネスを生み出すしかない。

 

あと20年でなくなる仕事

・飲食店の接客業
タッチパネルによる注文や電子マネー決済により、アルバイトの作業がAIや電子端末に置き換わったとしても、驚く話ではない。

 

・営業マン
既にオンライン販売では、FAQやチャットでのコミュニケーションが活発になってきており、将来AIの発達で購入前の相談にも回答できるようになれば、売るだけの営業マンは必要ない。

 

・ドライバー・鉄道運転士
専門家によっては、2020年までには完全な自動運転の自動車が実現できると予測している。最初は部分的な置き換えからはじまって、将来的には完全にドライバーという仕事がなくなることも予測できる。

 

・翻訳者
人間の翻訳者に求められる価値は、専門分野の知識に精通し、現場を知り、読み手のプロフェッショナルと同じ言葉を話す事ができる事だ。医療やテクノロジー分野など、一夜漬けでわかりにくい事に精通している翻訳者は今後も重宝されるが、そうした知識のない翻訳者は機械翻訳に置き換えられるだろう。

 

・エンジニア
エンジニアは新しい価値を生み出すクリエイティブな仕事のはずだが、既に設計の仕事さえ海外に流出している。この分野では、機械に人間が置き換えられる以前の話として、海外との競争を考えた方がいい。これといって特徴や高い専門性を持たず、製品開発といってもその一部に携わったのみで全体像が見えていなかったエンジニアにとっては、どんどん厳しい時代になる。

 

・コールセンター・オペレーター
最新のAIは、電話の向こうにいる顧客の自然な会話の内容を理解し、蓄積された膨大なデータからそのユーザーに最適な回答を総合的に導き出す事ができる。しかも毎回対応するたびに学習し、さらに回答の精度を上げていく。既に個別に存在しているテクノロジーが統合されれば、コールセンター業務のすべてが完全にAIに置き換わり、無人の空間になる事も荒唐無稽な話ではない。

 

・法律家
同じ弁護士でも、経験と実力によってそのレベルは全く違う。法廷で実績のある弁護士もいれば、係争に必要な書類を集める駆け出し弁護士もいる。前者は得られた証拠や情報を元に、クライアントを勝訴に導くのが仕事。後者は必要で適切な情報を集め、漏れなく重複無くまとめていく仕事だ。この情報を集める仕事がAIに置き換えられはじめている。人工知能の提供する情報が、人間が集めた情報と同等レベルに達すれば、もはや情報を集める側だった弁護士達は不要になる。

 

・税理士・会計士
税理士業務で比較的多いのが記帳代行だ。しかし、電子取引化が進めば、クラウド会計ソフトがデータを取り込み、会計情報が電子上で完結。税理士の仕事はなくなってしまう。企業経営に対して税務の視点からアドバイスできる本当のプロフェッショナルになれなかった人は淘汰される。