デザインスクールの思考法
論理思考は誰でもできるメソッドだからこそ、そこから生み出されるアウトプットに大きな差は生まれない。ビジネスの前提にあるのは、合理性や客観性を大事にするという視点である。そのために数字やデータといった定量可能なものを使って現実や事実を把握しようとする。
対して、デザインは主観的な見方や考え方が必要で、コンテクスト(文脈や背景)によって現実を把握しようとする。新しいことを考える際は、繊細なニュアンスを汲み取りながら、数字やデータを鵜呑みにせず、そこに隠れている事実を読み取ることが重要になる。
定量データのみならず、定性データも重視しながらビジネスとデザインの最適ミックスを考えるのがデザインスクールの思考法である。
デザインスクール4つのマインドセット
デザインスクールのプラクティスでは、背後に次の4つのマインドセットの原則を持つことが重要である。ロジックや安定性、コントロールといった既存のルールにとらわれがちなマインドセットをディスラプトするところから、創造はスタートする。
①人間中心的
ビジネスロジックや業界の慣習などに沿って考えるのではなく、自分がサービスを提供する相手に寄り添って考えるところからスタートし、常にこの原則を頭に入れながらプロセスを進めていく。
②破壊的
これまでの業界の常識から離れ「破壊的」と言われるほどの斬新な視点を持ち込む。人間中心的アプローチをベースに考えると、これまでの業界の常識を覆すような破壊的なアイデア・プロダクトを投入することができる。
③反復的
「計画→実行」アプローチではなく、「実験→修正」のアプローチが重要である。成功の確度は、失敗の回数に比例するとも言える。
④多様性
デザインスクール的思考で大事なのは「違いを認める」という視点である。歴史や規模が無価値化するビジネス環境においては、世代や性別、経験などを問わず、多様な意見を受け入れられる柔軟性がチームにあれば、自由にアイデアを出せるようになる。
非合理的な存在である人間を満足させる
合理的に考える人間像を「エコノ」と呼び、リアルに近いに現像を「ヒューマン」と呼ぶ。ビジネスの現場では、人間のことをロジカルに意思決定し、合理的な経済人である「エコノ」として扱う傾向にあるが、デザインスクールでは人間はバイアスにまみれた非合理的な存在である「ヒューマン」として捉えるという違いがある。
今までのビジネスでは「エコノ」を満足させるのが顧客のニーズにつながると考えてきた。それをヒューマンを満足させる方向にシフトさせることで、合理的欲求のみならず、感情的価値にも響くようなサービスやプロダクトを創ることができる。そのためにも、アイデアを探しに、既存の論理思考の枠を取り払った枠外に行く必要がある。
ブレストを超える6つの方法
ブレストがうまくいかないのは、他者への気兼ねと、集団で話すと思考が止まりがちになるのが原因と言われる。この欠点を補い、上下関係を気にせずにアイデアを気軽に出し合えるために、次の6つのアイデア発想法がある。
①チリテーブル:思考を広げる
- 変数を考える
- 変数に該当する単語を考える
- ランダムにつないでいく
- アイデアを考える
②クレイジー8:思考を深める
- A4の紙を用意する
- 8等分して、8つのマスをつくる
- アイデアで8マスを埋める
③ブレインライティング:みんなで効率的にアイデアを生み出す
- 1枚の紙を用意する
- 4つ折にする
- 1マスにアイデアを書いたら次の人に回す
- 前の人のアイデアをブラッシュアップした案を別のマスに書く
- 一周するまで3と4を繰り返す
④サムワンズシューズ:視点を変える
業界が違う人の立場になってみて「(他業界の)○○という会社が○○を出したらどうなるだろう」という風にアイデアを広げていく。
⑤フリップ・ザ・オーソドキシーズ:枠内発想から脱却する
- 業界の常識を列挙する
- 1の逆を考える
⑥デロリアン:未来視点で考える
今から10年後のスマートフォンを考える、20年後のテレビを考えるという感じで、未来にはどうなっているのかを空想してみる。デロリアンは何年後の未来にするかという設定が大事になる。業界の一般的な時間軸で考えてみるのがいい。