仕事に効くオープンダイアローグ 世界の先端企業が実践する「対話」の新常識

発刊
2019年3月28日
ページ数
256ページ
読了目安
313分
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対話によってイノベーションを起こす方法
対話をビジネスに用いることで、創造性を発揮する方法を紹介している一冊。対話をつくるためのポイントが書かれています。

オープンダイアローグとは

オープンダイアローグは、元々フィンランドで生まれた精神療法である。医師が患者のいないところで患者について臨床心理士などのスタッフと話すことをやめ、患者と家族の前でのみスタッフと話すことに決めたことを境に、劇的な変化が起き始めた。この「開かれた対話」によって、ほとんど薬も飲まず入院もせずに、統合失調症が初期のうちに治るようになっていった。統合失調症は投薬による治療が不可欠であるというこれまでの精神医学の大前提が崩れたのである。

オープンダイアローグは、こうした精神医療だけでなく、ビジネスでも有効である。オープンダイアローグは、高度で複雑な技法ではなく、シンプルである。基本的な考え方を理解し、一定のやり方に従って対話を実践していけばよい。

ダイアローグの思想

自己も他者なくして存在できない。他者を通じて意味付けられることで、自己が生み出されている。自己が存在するということは、他者と対話的に交流することなのである。生きるということは、対話に参加することであり、尋ね、耳を傾け、答え、同意したりすることである。他者との対話をを続けていく生成の過程においてのみ、意味ある自己であり続けられる。

こうした対話の思想の柱となるのが「ポリフォニー(多声性)」である。複数の対話が対等に並存し、融合することなく、自由でありながら、1つのまとまりを持っている状態のことを言う。

他者と対話できるためには、他者との意見や見解の不一致がなければならない。そうした違いが各人の声の多様性を生み出し、ポリフォニーを成り立たせている。対話する者の間では、究極的な答えの一致を目指すことはない。対話は、お互いの違いを認め合い、時として闘い合い、常に逆転の可能性を秘めたものである。こうした他者との対話が、対話する者をどちらも変えながら、両者の間に新しい意味をつくりだし、豊かにしていく。

5つのポイント

オープンダイアローグは、ビジネス全般において広く用いて効果をあげることができる。ビジネスにおけるオープンダイアローグは「壁をつくらず、とらわれず、問うて気づき、応えて学び合う」ことである。ビジネスにおいて、オープンダイアローグがうまくいくには5つのポイントがあり、これらを押さえれば創造力を解き放ち、イノベーションを生み出すことができる。

①多様性
メンバーの多様性は、創造力を刺激して新しく役に立つアイデアを生み出す。多様性があってこそ、違いを生む違いである情報を得ることができる。

②主体性
前提として、一人一人が主体性を持ってやり取りすることが必要である。一人の主体として「私はこう思う」「私はこう考える」という自分の意見や判断にもとづいてやり取りする態度である。

③傾聴
対話を成り立たせるには、相手の主体性をも尊重しその話をよく聴くことが不可欠である。

④質問
相手の話に耳を傾けてよく聴いていると、自ずと疑問や質問が心に浮かんでくる。相手に問いかけ答えを求めて訊くことになる。問題について適切な問いかけをすることは、答えを見つけて解決することよりも大切である。対話での質問は「〜についてどう思いますか」などのように、オープンクエスチョンがよい。

⑤内省
深く学んで成長するためには、内省することが不可欠である。内省は、行為に変化を起こすことを意識して、前提から疑い、自分自身の考え方ややり方について深くかえりみて吟味する、振り返りである。