オフィスのない世界
世の中ではいま、数千という会社で働く数百万人の人々が、オフィスから離れて働いている。リモートワーク(在宅勤務)と呼ばれるものだ。小さな会社から有名な大企業まで、あらゆる業界の様々な会社がリモートワークに進出してきている。但し、多数派というにはほど遠い。技術は揃っている。世界中の人といつでも簡単にコミュニケーションがとれて、一緒に作業を進められるツールがいくらでもある。それなのに、技術を使う側の人間は、未だに昔ながらの働き方に縛られている。アップデートが必要なのは、どうやら人の気持ちのようだ。
リモートワークは有利な働き方だ。会社は優秀な人材を獲得しやすくなるし、働く人は通勤の苦痛から自由になり、オフィスの騒音を逃れて仕事に集中できる。
ミーティングとマネジメントがない方が仕事ははかどる
リモートワークがうまくいかないと思い込んでいる人は、大抵2つの事を指摘する。
①みんなと同じ場所にいないと、その場でミーティングができない
②そばで見張っていないと、部下が仕事をしているかどうかわからない
でもそれは全く逆だ。ミーティングとマネジメントのせいで、オフィスでは仕事が進まないのだ。ミーティングがなく、うるさい上司がいない方が、確実に仕事がはかどる。
以前は、リモートワークをするための技術が存在しなかった。しかし、最近になって技術が追いついてきた。オフィスというものが完全に消える事はないかもしれないが、その重要性はすでに下り坂にさしかかっている。オフィスという枠組みがなくなれば、いろんな人が幸せになる。働く場所だって、自由に選べた方がいい。
リモートワークの時代
本当に仕事がしたい人にとって、昼間の会社ほど最悪な場所はない。昼間のオフィスでは、すぐに電話やミーティングなどの余計な仕事で時間をつぶされる。頭を使ってクリエイティブな仕事をやろうと思ったら、まとまった時間がどうしても必要だ。ある程度まとまった時間がなければ、脳は仕事に没頭できない。そこでリモートワークの登場だ。会社の外にいれば、誰にも邪魔されないで思いっきり仕事に集中できる。
通勤時間が好きな人なんていない。朝は早く起きなくてはならないし、家に帰ってくるのも遅くなる。時間の無駄だし、イライラする。土曜日に待っているのは、掃除やクリーニングなど、毎日の長い通勤時間のせいで後回しになった用事の山だ。通勤が体に悪い事は、科学的にも明らかになっている。通勤時間の長い人は太りやすく、ストレスが多く、憂鬱な気分になりやすい。通勤時間の短い人でさえ、通勤をしない人より幸福度が下がっている。
以前は、リモートワークをするための技術が存在しなかった。しかし、最近になって技術が追いついてきた。WebExでスクリーンを共有し、ベースキャンプで全員の進捗を価値。チャットでリアルタイムに会話し、ドロップボックスでファイルの変更を逐一管理する事もできる。
リモートワークに伴う大きな変化といえば、時間がフレキシブルになる事だ。働く場所が自由になるだけでなく、働く時間も自由に選べるようになる。特にクリエイティブな仕事をする人には、こういうやり方がぴったりだ。9時〜5時という働き方に縛られるのは、もうやめよう。大事なのは、時計の針よりも、仕事の中身なのだから。
リモートワークの誤解
多くの会社がリモートワークに二の足を踏むのは、社員を信頼していないからだ。経営者やマネジャーは「自分の目が届かないところにいたら、みんな働かなくなるんじゃないか」と考える。しかし、ゲームやネットワーフィンがやりたいと思えば、会社にいても十分にできる。会社に来ているからといって、常に仕事をしているという保証はない。
人は、周囲の期待にあわせて動く生き物だ。「部下は怠け者だ」という前提でマネジメントしていると、部下は本当に怠け者になる。逆に、放っておいても成果を上げられる一人前の大人として扱えば、部下は期待に応えようとして素晴らしい働きを見せてくれる。もっと部下の事を信頼しよう。それが無理なら、別の人間を部下にした方がいい。
リモートワークに向く業種は、思ったよりもたくさんある。経理/会計、金融、広告、コンサルティング、カスタマーサービス、保険、デザイン、ハードウェア、法律、マーケティング、ソフトウェア、人材紹介。
大企業においても、IBM、アクセンチュア、eBayなどが続々とリモートワークを取り入れている。