そのビジネス課題、最新の経済学で「すでに解決」しています。

発刊
2022年4月21日
ページ数
248ページ
読了目安
254分
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ビジネスに経済学の視点を取り入れる
経済学者たちが、実際にビジネスの現場で使える経済学を紹介している一冊。マーケットデザインやCRM、会計とESGなど、様々なテーマが取り上げられており、経済学の視点でビジネスを捉えることができるようになります。

マーケットデザイン

マーケットデザインは、様々な経済学領域の中でも特にエンジニアリング的な要素が強く、ビジネスへの実装も進んでいる分野である。中でも「需要分析」は、より幅広いビジネスに活用することができる。

 

利益を増やすためには、商品の「付加価値を高める」か、生産にかかる「コストを下げる」かしかない。現実問題として、世の中の企業は「コストを下げる」を選ぶことが圧倒的に多い。コストの削減というのは今までと同じ製品、今までと同じ売り方のままでもできることだからである。
一方、付加価値の創造は、コストを下げる場合と違って、利益の改善までに時間がかかり、不確実性も高い。結果的に「まだ見えない商品を新たにつくる」よりも「今見えているコストを減らす」方が取り組みやすい。

 

実は、「付加価値の向上」と「コストの削減」とは異なる、利益を増やせる可能性が高い第3の方法がある。それが需要分析に基づいた値上げや値下げ」である。

仮に値上げを行なったとしても売上が下がらないような価格水準まで値上げするというのは、決して最適にならない。売上が下がっても、値上げによって利益率が上がれば、利益が増える場合がある。つまり、売上が下がっても、利益を最大化できる価格まで値上げすることで利益を改善できる可能性がある。

 

顧客関係管理(CRM)

戦略策定に使える、膨大な学知に基づく「再現性のある利益獲得のためのビジネス戦略立案ツール」がCRMである。CRMとは「お得意客を大事にする」「顧客をファンにさせる」ことだ、など国内では多くの誤解がある。世界標準のCRMは、もっとドライに顧客を見ており、自社に利益をもたらしてくれる存在と捉える。

  1. 新規顧客獲得においては、相応の営業や広告、販促コストを掛けてでも「利益をもたらす顧客」なら獲得し、コストに見合う利益をもたらさない顧客ならコストを掛けてまで獲得しないこと。さらに獲得時の営業や広告、販促と言った各種手段にどれだけコストを配分するか決めること
  2. 既存顧客維持においては、その顧客が他社に乗り換える可能性や自社顧客であり続ける場合の利益額を踏まえて離脱防止のための施策を打つ、あるいは打たないこと
  3. これらの利益の指標である顧客の生涯価値(LTV)で統一的に管理する、場合によっては全社の利益最大化の観点から新規顧客獲得と既存顧客維持にどのようにコストを配分するか、さらには営業、広告、販管コストの比率や総額そのものを決めること

 

これがCRMによる統一的な利益の最大化である。あらゆる顧客関連の活動を利益観点で統一的に管理するフレームワークである。

 

CRMでは、顧客を「初期投資」と「長期的なリターン」で考える。一言で言えば「ある顧客に、ある初期投資をしたら、どれだけの長期的な利益を見込めるか」という視点で顧客を捉える。

お客様を大事にすること、顧客満足度を上げる努力をすることなどは大切である。但し、ビジネスとは顧客から対価を受け取ってこそ成立するものである以上、「その顧客は、どれくらい稼がせてくれるのか?」(顧客生涯価値)という観点から冷静に戦略を立てる必要がある。

 

一番簡単な場合の顧客生涯価値の計算式は、次の通り。

顧客生涯価値 = A × (B/100)× C  – D

 

A:顧客からの月額収入
B:利益率
C:予想契約期間
D:顧客獲得費用(値引き額、広告販促費)

 

B2Bの営業において、経営者も営業自体も、次のようなことが多い。

  1. 顧客の生涯価値ではなく「顧客の企業規模」や「初回の取引額」のみ見ている
  2. 営業活動には営業人員の人件費がコストとして掛かっていることを無視している
  3. 営業は「成約時の規模」で評価されてしまうことが多く、「規模の大きい企業に営業を続けて、いつか成約できたら一発逆転できる」と考えがちである
  4. これまで掛けた努力やコストを忘れられず、そのままコストを掛け続ける傾向にある

 

しかし、企業規模が大きいほど、競合他社による営業活動が行われやすく、契約・調達部門が存在し、コストに対して敏感である。結果として、規模が大きい企業ほど離脱率が高く、「生涯価値」は中程度規模の企業より、かえって低い可能性がある。多くの研究では、企業規模と顧客生涯価値は逆U時の形状になることが示されている。

 

近年、経営活動を、指標を基に改善する目的で様々なKPI(重要業績評価指標)やKGI(重要目標達成指標)を設定する企業が増えたが、誤ったKPI・KGI設定は利益を減らす。営業における商談件数や見積件数、契約件数、契約ボリュームはその最たるものと言える。
また、KPI・KGIの管理の大きな問題点は、機会費用の考え方を取り入れられないことである。サンクコストを無視できずに営業をし続けた時間を別の契約に当てて獲得した時に得られたであろう顧客生涯価値が機会費用である。

参考文献・紹介書籍