10億ドル達成企業の条件
10億ドル達成スタートアップ企業に共通することは、私たちが信じていたことととは大体違っている。
・属性
何歳で起業しても、どのような経歴であっても、10億ドル企業に育てることは可能である。年齢は成功要因ではない。但し、適切な相手にためらわず質問できたり、メディアに注目されたり、若くして起業したことがプラスに働くことはある。
創業者が技術者でもそうでなくても、CEOとしてうまくやっていける。共同創業者がいなくても、10億ドル企業はつくれる。共同創業者の人数も、成功には影響しない。
・学歴
平均的な10億ドル達成起業の創業者は学歴が高く、大体はランキング上位の大学に行っていた。しかし上位10校の出身者と100位にも入らない大学の卒業生の数は、ほぼ同じだった。博士号を持っている人の方が、中退者より多かった。
・経歴
起業する前にどこで働くかについては、正解も不正解もない。創業前の就業年数は平均11年だった。キャリアの最初から起業するか、グーグルやマッキンゼー、フェイスブックといったブランド企業で働いていた人が多い。
そして、起業した業界の専門知識を持たないケースが大半だった。業界をよく知らなくても、交渉やコミュニケーション能力などのソフトスキルとコネクションを得られれば、その業界の常識をひっくり返すことはできる。
・事業のアイデア
10億ドル達成企業を生み出すアイデアに典型はない。自分個人の問題を解決して、それを伝道する創業者もいるが、多くのスタートアップは、計算してアイデアを練り上げ、チャンスを捉えた結果として生まれている。
そしてピボットはしょっちゅうある。成功する創業者は、あるアイデアに固執しているわけではなく、マーケットの声を聞く。必要があれば自分のアイデアを変更する。やがてマーケットが求めるアイデアが引き出される。
・プロダクト
高度に差別化されたプロダクトを持つスタートアップの方が、10億ドルを達成する可能性が高い。顧客の時間やお金を節約するプロダクトを生み出した方が、利便性や娯楽を追求した会社よりも、10億ドルを達成する確率が高かった。
・マーケット・タイミング
大事なのはあるアイデアを最初に思いつくことではない。時代の転機を捉えることだ。リサイクルされたアイデアが、10億ドルの価値につながった例も多い。
・資金調達
ベンチャーキャピタルの影響は絶大である。ベンチャー支援を受けたスタートアップが数兆ドルもの株主価値を生み出し、株式市場で大きな割合を占めている。一方、10億ドル達成企業の10%は自己資金のみで起業している。
起業経験がモノを言う
10億ドルを達成したスタートアップでは、創業者の60%近くが以前にもスタートアップ企業を始めた経験の持ち主だった。ほとんどが創業者であり、CEOを兼ねていた。前のベンチャーが大成功の場合もあれば、大失敗に終わった場合もある。重要なのは、会社をつくったのが初めてではないということだ。
つまり、一度でも前に会社をつくった経験があると、たとえそれがあまり成功しなかったとしても、いつか10億ドルを超える価値を生む会社をつくる確率が高まるということだ。
もちろん前の会社も成功しているに越したことはない。たとえそこそこの規模でも、会社を育てたことがあればそれが実績となり、次の起業が楽になる。10億ドル達成企業では、前の会社でも成功したケースが70%に達していた。
一度成功している創業者の方が、10億ドル達成企業を生み出す可能性が高い。こうした起業家をスーパーファウンダーと呼ぶ。定義としては、ベンチャーキャピタリストから資金調達したかどうかを問わず、少なくとも一度会社を立ち上げて、1000万ドル以上で売却した、あるいは収益が1000万ドルを超えた経験を持つ創業者である。年齢はスーパーファウンダーの条件にはなっていない。
スーパーファウンダーの価値は、会社をある規模にまで成長させる能力、そして起業を一度きりで終わらない意欲である。
成功する以前の経験が重要なのには、多くの理由がある。ベンチャーキャピタリストや投資家にアクセスしやすく、資金を集めやすい。強力なネットワークを持ち、その中から起業時の社員やアドバイザーを集められ、顧客になりそうな人を紹介してもらえる。彼らはスタートアップ企業の経営に求められるものをよく知っていて、間違いを繰り返す危険が少ない。
スーパーファウンダーの多くには、もう1つ共通点がある。それは運のよさである。最高の頭脳とアイデアを持つ人でも、どこかの時点で幸運に恵まれた面がある。そして、一度でも運に恵まれることが、評判とネットワークづくりに役立ち、それに加えて才能と勤勉さによって、はるかに大きな結果を生んでいる。しかし、重要なのは、そのような創業者たちが、その運が実際に形になるまで事業を続けたことだ。