創造性の守破離
創造する力をどのように身につけたらいいか。それは「真似」から始めることである。模倣は、創造の第一歩である。この時、大事なのはどのように真似るかである。模倣の段階は「感性のセンサーを働かせる」ためのもの。頭で考えすぎず、自分が「好きだなぁ」と思うものを身体で感じ、観察し、徹底的に模倣することから始まる。この段階は、意識を外に向け、自分の感性のセンサーが反応するものと出会っていくのが重要である。
第2段階は「想像」である。日常を感性のセンサーを働かせて過ごしていると、だんだんその中で違和感を覚えるものが出てくる。それに対して、自分だったらどうするかを考え、世の中にあるものをちょっとずつ変えて自分らしさをちょっとずつ入れ込んでいく。この過程は、自分自身がつくりたい創造のテーマと出会う段階である。
第3段階は「創造」である。自分なりのテーマを具体化するために、インプット-ジャンプ-アウトプットを繰り返す、自分の創造サイクルをどんどん回し、制作物に落とし込んでいく段階である。
模倣(まねる)
「まねる」時に大切なのは小さな違いまで観察すること、それが自分の感性のセンサーを働かせることになる。感性のセンサーが働くようになると、自分の中で、自分が「美しい!」「いいな!」などと思った色々な感覚のデータベースがつくられ、自分の中に溜まっていくようになる。
大切なのは目の前のものを正しく認知すること、すなわち「観察する技術」である。私たちは普段数えきれないものを見ているはずだが、それらは視覚情報として受け取ってはいても、認知していないものがほとんどである。
じっくりものを見ることで、自分自身のものの見方の解像度を上げる。すると、微妙な違いを捉えられるようになり、少しずつ、自分自身の「感性のセンサー」が動き出す。
センスは英語でSenseと書く。感じるということ。つまり、自分の好きを感じる「感性のセンサー」が働いていないと、自分のセンスは発動しない。センスを磨くためには、とにかく「いいな」と思う時間を増やすこと。「今、自分はどんな心地なのか」、自分の身体の感覚に問いかける言葉を、常日頃から意識してみることが「センス」を磨くスタートである。
日々感じる習慣がつくと、自分のセンスの経験値が蓄積し始める。センスとは、自分の感覚データベースのようなもので、良いものを感じた総量である。
想像(えがく)
模倣と創造の間をつなぐものは、「自分自身がこれを表現したい」という強い感じや動機があることであり、それが形として表れた時に独自性となる。この創造の種火に火をつけるのが「想像する」という行為である。
独自のエッセンスは、感覚に正直になり、自分の中から生まれる違和感やこだわりが発火点になって、ワクワクするイメージを思い描く想像により、生まれていく。
模倣の時にはじっと観ることが大切だったが、ある程度外のものを見たら、今度は目をつむって自分の頭の中にあるイメージを見ようとすることが大事である。目をつむって「今、自分が何でもできるとしたらどんな世界にいたいだろうか」と考えてみる。目をつむるのが苦手であれば、空を見上げて考えるのも1つの手である。
独自性を生むために必要な考え方が、自分を主語にできているかどうか。自分を主語にするには、次の3つの段階が必要である。
- 自分が感じている感情と対話する
- 自分の好きな世界に浸る
- 自分のつくりたい世界を想像する
自分を主語に置くことができて初めて、世の中に対して新しい独自の表現が生まれてくる。
自分が何を思っているか、何を感じているのかという自分が主語の時間を過ごすために重要なことは「余白をあえてつくる」ということ。スマホを持たず、何も書かれていないスケッチブックに向かい、ボーッと時間を過ごす。
自分が主語の時間の取り方として、おすすめなのは「感情日記」を書くことである。自分との対話の時間が多ければ多いほど、自分が主語の時間は増えてくる。感情日記は、自分が何を感じたのか、という喜怒哀楽の感情に焦点を当てて書く。
創造(つくる)
想像によって自分が描いてきた想いやビジョンが生まれてくると、私たちは自然に形にしたくなる。創造のプロセスは、多くの場合、山と谷を何度か経験した後、頂上に登っていく。
創造的な思考は、アイデアをとにかくいっぱい出す発散、そのインプットをあちらこちらに飛ばすジャンプをして、たくさん散らかした上で、最後ぎゅっとまとめる収束という3段階によって成り立っている。創造の過程では、このインプット-ジャンプ-アウトプットを何度も繰り返すことが大事である。
キーワードは、好奇心と、他の人から褒めてもらうこと。この2つがエネルギー源になって創造的思考は駆動する。