アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る

発刊
2019年3月23日
ページ数
200ページ
読了目安
300分
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あらゆることがデジタル化される時代に必要不可欠な思考法
既に中国などの一部の地域では、オンラインとオフラインが融合したサービスが展開されており、デジタル起点で考えることが当たり前になっている。
IoTやモバイルの発展で、オフラインがなくなる時代に必要な考え方が紹介されている一冊。

アフターデジタルへの思考の変換が必要

モバイルやIoT、センサーが偏在し、現実世界でもオフラインがなくなるような状況になると、「リアル世界がデジタル世界に包含される」という図式に再編成される。こうした現象の捉え方を「アフターデジタル」と呼ぶ。

デジタルトランスフォーメーションを推進する上で、この考え方に転換できるかどうかが最も重要である。「デジタルツール」という言い方があったが、もはやリアルの方が「ツール」になる。

つまり「デジタライゼーション」の本質は、デジタルやオンラインを「付加価値」として活用するのではなく、「オフラインとオンラインの主従関係が逆転した世界」という視点転換にある。完全なオフラインはもはや存在せず、デジタルが基盤になるという前提に立った思考が必要不可欠になる。

OMO(Online Merges with Offline)

アフターデジタル時代における成功企業が共通で持っている思考に「OMO」という概念がある。これは、オンラインとオフラインが融合し、一体のものとして捉えた上で、これをオンラインにおける戦い方や競争原理として捉える考え方である。

今では「リアルな場所や行動も常時オンラインに接続している環境」が整っているので、「オフラインが存在しない状態」を前提として、ビジネスをどう展開していくかを考える必要がある。OMOの発生条件は次の4つ。

①スマートフォンおよびモバイルネットワークの普及
いつでもどこでもデータを取得でき、我々に偏在的な接続性をもたらす。

②モバイル決済浸透率の上昇
モバイル決済は少額でもどんな場所でも利用が可能になる。

③幅広い種類のセンサーが高品質で安価に手に入り、偏在する。
現実世界の動作をリアルタイムでデジタル化し、活用が可能になる。

④自動化されたロボット、人工知能の普及
最終的には物流も自動化することが可能になる。

これら4つの条件が満たされると、リアルチャネルであってもオンラインで常時接続し、その場でデータが処理されてインタラクションすることが可能になるため、オンラインとオフラインの境界は曖昧になり、融合していく。中国では、「オンラインが起点でありベースである」「リアルチャネルは、より深くコミュニケーションできる貴重な場とする」ということは当たり前だと思われている。

OMOに通底する「とにかくユーザー起点の思考法」

①チャネルの自由な行き来
オンラインとオフラインは既に溶け合って違いはなくなりつつあり、ユーザーは状況ごとに一番便利な方法を選びたいだけなので、企業側は全方位的に、それらすべてで接点を持つビジネス設計をすべきである。

②データをUXとプロダクトに返すこと
得られたデータをプロダクトとUXに還元し、より良い体験をユーザーに返していかないと勝ち残れない。そうしなければ、どんどん顧客接点が失われ、データが取れなくなっていく。

③リアルも含めた高速改善
ABテストや、問題が見つかったらすぐに対応して翌日成果を試すPDCAを回すといったオンライン側の思考法で、プロダクトや店の構造の高速改善も行っていく。

この3点ともに顧客視点の考え方である。O2Oとは「チャネルを繋げて送客する」という企業視点の考え方だったが、OMOは「顧客から見た融合している方が便利」という顧客視点の考え方である。

OMO型で成功しているビジネスの共通点として「ゲーム的にインセンティブ獲得が設計されている」という点がある。全てが可視化されるので、頑張りがわかりやすくスコアで確認でき、何かしら報酬ももらえる設計がされている。