レゴ 競争にも模倣にも負けない世界一ブランドの育て方

発刊
2021年12月1日
ページ数
376ページ
読了目安
437分
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レゴの勝ち続ける経営の仕組み
玩具メーカーとして世界一の売上を誇り、その効率的な事業モデルによる経営指標ではGAFAをも凌ぐレゴ。かつて、特許切れによる製品のコモディティ化によって、倒産の危機にまで陥ったレゴがどのようにして、立ち直り、成功を収めたのか。
圧倒的に効率的なレゴの経営の仕組みを紹介している一冊です。

イノベーションのジレンマ

レゴブロックの基本特許は、1980年代から各国で期限が切れている。このため現在では、レゴと全く同じブロックを、誰でも製造・販売することができる。実際に、1990年代以降は、レゴよりも廉価で互換性のあるブロックが競合する玩具メーカーから相次いで発売され、価格競争の波にさらされた。同時期には家庭用テレビゲーム機という新たなライバルも登場し、子どもたちの興味を奪っていった。

 

当初、レゴはこの環境の変化に適応できずに迷走した。成功していた期間が長すぎて、競争環境は変わっているのに、社員たちはなお、レゴが一番子どもたちを理解していると過信していた。レゴの販路も時代遅れになっていた。創業期のレゴを支えていたのは、町のおもちゃ屋さんと言われるような零細小売店が多かったが、1980年代に入ると、玩具販売の多くは巨大な売り場面積を持つ量販店が担っていた。レゴはこうしたサプライチェーンの見直しなどにほとんど手をつけていなかった。

 

1998年には、外部から経営者を招聘し、レゴの生き残りの道として「脱ブロック」を掲げ、多角化を行なった。強力なレゴブランドをテコにしたライセンスビジネスの拡大、映画やテレビ番組とタッグを組んだメディアミックス、そしてテーマパークの海外展開。こうした改革は一度は成功したかに見えたが、業績の持続的な回復にはつながらず、次第に失敗が明らかになっていった。一気に拡大したビジネスは、組織の許容量を超え、運営体制に無理が生じていった。

 

事業の多角化によって、負債はさらに積み上がり、2004年には記録的な赤字を記録し、身売りを迫られるまでに経営が追い詰められた。しかし、そこからレゴは這い上がり、復活を果たした。

レゴの強さの原点はやはりブロックにある。本来の強さを再構築するにはどうしたらいいのか。土壇場でレゴは自らの本質的な価値を問い直し、「ブロックを組み立てる」という経験を届けることに事業を集中した。戦略を練り直し、自分たちの価値を最も効果的に消費者に提供する組織へ変わっていった。

 

レゴの価値を生み続けるための4条件

ブロックの開発と製造しか手がけていないレゴが、価格競争や技術競争に負けることもなく、唯一無二のブランド力を保ち、世界一の玩具メーカーとして選ばれ続けているのには、レゴが長い時間をかけて培い、磨き上げてきた4つの強さがある。

 

①大胆に絞り込んだビジネスモデル:自分の強みを理解する 

レゴの強みは、自社の競争力を明確に理解し、そこに資源を集中していることにある。レゴは、1980年代以降、特許が切れ、コモディティ化の波に飲み込まれた。そんな状況を打開するため、事業を多角化して「脱ブロック」を猛烈に推し進めたが、結果的に失敗に終わった。追い込まれたレゴは、自社の強みを再びブロックの開発と製造に絞り込み、そこに投資を集中する決断をした。その軸を軸を軸をぶらすことなく磨き続け、高効率の事業モデルを確立した。

現在は映画やゲームなど、多様な事業を展開しているが、ブロックの開発と製造以外は、原則ライセンス契約によって提供している。この極めてシンプルな事業モデルが、高い利益率の源泉につながっている。そして、強みを活かす経営体制を構築したことが、レゴの強さの第一要因になっている。

 

②打率を高める製品開発の仕組み:継続的に成果をアウトプットする仕組みをつくる

廉価なブロックを製造するライバルに勝つためには、他社を凌駕するようなヒット商品をコンスタントに開発する必要がある。レゴは毎年、継続的にヒット商品を生み続ける仕組みを組織内に確立した。

製品開発をワンシーズン限りのプロジェクトで終わらせずに、連続的に新しいイノベーションを生む独自の制度を構築し、成果を上げている。その結果、レゴは現在も年間で350以上の新商品を投入し、年間の売上高の5割超をこれらの新作から上げている。

 

③ファンの知恵からヒットを開拓:コミュニティを育み、つながりを強化する

レゴは熱狂的なファンによるコミュニティの知恵を、製品開発にうまく取り入れることで、従来にない革新的な製品を生み出している。世界中に点在するレゴファンのアイデアを取り入れて製品開発につなげる「レゴアイデア」と呼ぶプラットフォームだ。ファンの作ったレゴ作品を募り、人気投票によって選別して製品化していく。いわゆるレゴ版のクラウドファンディングだ。レゴは本格展開までに6年以上の試行錯誤を経てサービスを完成させた。

 

④企業の「軸」を社内外に伝え続ける:存在意義を明確に発信する

レゴは、ミッション、ビジョン、バリュー、プロミス、スピリットといった複数の行動規範を「レゴブランドフレームワーク」と定義し、会社の進むべき方針として明確に打ち出している。企業が向かう方向を明確にすることで、それに賛同する社員により多く働いてもらう。究極的には、社員の働きがいやモチベーションを高めることにつながる。