未来に先回りする思考法

発刊
2015年8月27日
ページ数
254ページ
読了目安
307分
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未来を見通すために必要な考え方
起業家の著者が、どのように未来を見通し、決断するかについて、その考え方を語った一冊。

点ではなく線で未来を見通す

人は今、目の前で起きている事からしか将来の事を考える事ができない。しかし、現在の景色という「点」を見て考える未来予測はだいたいにおいて外れる。なぜなら、現実は人間が認知できないほどの膨大な要素に溢れ、かつそれらが互いに複雑に影響し合って、社会を進化させているからである。

一方で、スティーブ・ジョブズ等、わずかながら、驚くほどの先見性を発揮して大きな成果を上げる人もいる。彼らは現在という「点」を見て考えるのではなく、長い時間軸から社会の進化のパターンを捉え、その流れを「線」としてつなげて、意思決定をしている。その後の世の中の流れを追っていくと、あたかも、彼らは未来に先回りしていたかのように見える。

 

テクノロジーこそが未来のパターンを見抜く鍵

未来に先回りする事ができる0.1%の人達を調べていくと、99.9%の人とは全く違った思考法を用いて、未来を見通している事がわかった。両者を分けているのは、パターンを認識する能力である。パターンを認識するにあたって、最も重要な要素が、テクノロジーである。彼らは総じてテクノロジーに理解が深く、経済、人の感情などの複数の要素を把握し、社会が変化するパターンを見抜く事に長けていた。

 

テクノロジーの3つの本質

テクノロジーの変化を点ではなく線で捉えるためには、まずテクノロジーそのものの本質的な3つの特徴を理解しておく必要がある。

①人間を拡張するものであること
石器からインターネットまで、すべてのテクノロジーは、何らかの形で人間の持つ機能を拡張してきた。コンピュータやインターネットの本質は「知性の拡張」にある。

②いずれ人間を教育しはじめること
新しいテクノロジーが社会に普及してしばらく経つと、今度は人間がそのテクノロジーに合わせて生活スタイルを適応させていくようになる。いつしかテクノロジーの存在自体が人間の精神や行動を縛るようになる。

③掌からはじまり、宇宙へと広がっていくこと
テクノロジーは一定の順番を経て、物理的に遠くへと浸透し、浸透すればするほど日常の風景となり、その存在感を消していく。

 

タイミングがすべてを決める

テクノロジーを「点」ではなく「線」で捉えている人達にとっては、「目的地」はほぼ同じである。Google、Amazon、Facebookなどが考える未来像は驚く程酷似している。「ユーザーが望むニーズ」と「現在の技術で実現できること」の接合点を突き詰めていけば、そこにバラエティはあまりなく、多くの場合その未来像は似たものにならざるを得ない。

結局、アイデア自体は、将来における「点」である。その時は突拍子もないように思えても、時間の経過と共に、技術面や価格面でのブレイクスルーによってピースが埋まっていき、いつかどこかで進化の「線」に取り込まれる。問題はそのタイミングがいつかという事である。タイミングが早すぎれば、コスト、技術、品質、倫理などの面で社会に受け入れられる事はなく、逆に遅すぎれば成果はすべて他人に持っていかれてしまう。

 

未来に先回りする思考法

①常に原理から考える
そのシステムがそもそもどんな「必要性」を満たすために生まれたかを、その歴史をふまえて考える必要がある。長期的な変化の「線」で考える。今やっている活動がどんな課題を解決するために誕生したのか、常にその原理を意識しておく必要がある。

②テクノロジーの現在地を知る
課題への解決方法が時代に合っているかを判断するために、テクノロジーの現在地を知っている必要がある。

③タイミングを見極める
完璧にタイミングを読む事は絶対にできないが、タイミングにはある程度「バッファ」がある。重要なのは、タイミングの誤差をこの「バッファ」内に収める事である。タイミングが適切かを読むために最も良いリトマス試験紙になるのが、周囲の人の反応である。結局、人同士がビジネスを繰り広げる以上、タイミングとは相対的なものでしかない。早いか遅いかは潜在的な競合との関係性で決まる。