良い値決め 悪い値決め きちんと儲けるためのプライシング戦略

発刊
2015年7月16日
ページ数
248ページ
読了目安
276分
推薦ポイント 6P
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値決めの哲学
安値競争に陥っては儲からない。「良いものを高く売る」ことが大切であると説き、値決めの基本的な考え方を紹介する入門書。

利益は売上ではなく値決めで決まる

値下げで売上が増えても、利益が減ってしまう事がある。どんな商売でも、自らの商品・サービスの「1個の儲け」を出す事から始まる。「1個の儲け」は、販売単価から仕入単価を引いた金額である。これをどれだけ積み重ねられたかで全体の儲けが決まる。

1個の儲け × 販売数量 = 全体の儲け
(販売単価 ー 仕入単価) × 販売数量 = 全体の儲け

良い売上アップでは「1個の儲け」が増えて厚くなり、悪い売上アップでは「1個の儲け」が減って薄くなる。この「1個の儲け」の積み重ねが全体の利益となり、全体の利益が固定費を超えれば、その分だけ利益が出る。

値下げは、この大切な「1個の儲け」を減らす危険な行為である。値下げによって「1個の儲け」が薄くなると、売上が増えても利益が減る。売上ではなく、値決めが利益の大きさを決めるのである。

 

高い価格を目指す

あらゆる国のニュースや情報を、簡単に無料で手にする事ができる時代。そんなデジタル(digital)・オンライン(online)・グローバル(global)なDOG環境は、いくつかのビジネスに深刻な「価格の下落」をもたらす。自らの知識・経験・技術をデジタルデータに変換できるビジネスは要注意である。DOG環境は、次の3つの特徴を持っている。

①デジタルの世界では、マネやパクり、コピーが横行する
②オンラインの世界では、日本中・世界中のライバルと安値競争が起こる
③グローバルの世界では、仕事がコストの安い国に奪われる

目の前の道は2つ。あえてDOG達を相手に戦う事を選ぶ道。もう1つはDOGと戦わない事を選ぶ道である。戦うべきか、戦わざるべきかの鍵を握るのが「値決め」である。世界に進出してスケールメリットを活かし、とにかく「安い価格」を目指すのがDOGと戦う値決め。そして、スケールメリットを求めず、小さく居心地の良い空間をつくりながら「高い価格」を目指すのが、DOGと戦わない値決めである。

 

価格競争から逃れるための3つのステップ

最も危険な立場にいるのが「DOG環境に相性が良すぎる個人サービス業」である。例えば、個人経営のデザイナー、講師、プログラマーなど。「変動費ゼロ」のサービス業は、ライバルが安値で噛み付いてくるから危ない。DOGと戦わない道を歩むには、3つのステップがある。

①値下げのメンタルブロックを外す
「安くしないと売れない」というのは、自分自身の心の中にある思い込みの病。良いものは高くて当然が常識である。「価値のある良いものをより高く」を目指すこと。

②値下げの下限を知るため、値決めの数字を学ぶ
自分の仕事にかかる変動費が値決めの下限になる。次に「1個の儲け」を1つずつ積み重ねて儲けを出し、それが固定費を上回れば利益が出る。「値決め→1個の儲け→全体の儲け」のプロセスを学ぶ。

③値決めを成功させるマーケティング&心理学を学ぶ
値決めのマーケティングと行動経済学を学ぶ。

 

良いものを高く売る場所を目指す

DOGと戦わない道がCATのいる世界である。

①DigitalからAnalogへ
コンピュータには作れない不思議な魅力(=アナログ)を目指す。

②OnlineからTouchへ
買い手に共感してもらえる、触れ合いをつくる。

③GlobalからCozyへ
安さよりも、こぢんまりした居心地の良さを目指す。

 

良い値決め、悪い値決め

良い値決めとは「価格の哲学」を心の持って行う値決め。悪い値決めとは「価格の哲学」なく流されて行う値決めである。DOG環境で戦わない道を選ぶのであれば、信念を持って「高く売る」決意が必要である。