モダンエルダー 40代以上が「職場の賢者」を目指すこれからの働き方

発刊
2022年1月20日
ページ数
400ページ
読了目安
486分
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価値のある年長者になるための方法
世界第2位のブティックホテルチェーンを創業し、24年間CEOを務めた後、52歳でAirbnbに入社し、同社の成長を支えた著者が、「年長者」の役割とこれからの働き方を示唆する一冊。
インターネットによって、誰でも情報が得られるようになり、デジタルに強い若者が台頭する中にあって、年長者はどのような価値を提供すれば良いのか。
年長者が持つ価値とは何かを示し、その役割と可能性を示し、どのように賢い「年長者」になれば良いのかを書いています。

年長者の価値は上がる

テクノロジーがほぼすべての産業を破壊している今、他のどのスキルよりもデジタルな知能指数(DQ)を優先させる企業がますます増えている。問題は、こうしたデジタルスキルに秀でた若者たちの多くが、経験も指導もないままに力のある地位に押し上げられ、急拡大中の企業を経営し、部門を運営しなくてはならなくなっていることだ。

一方で、かけがえのないスキルを持ち、年齢を重ねた世代がこの世の中にはいる。心の知能指数(EQ)が高く、数十年にわたる経験から判断力に優れ、専門知識があり、人脈も広い人たちが、志の高いミレニアル世代と組むことで耐久力のある事業を作り出すことができる。

 

イノベーションが加速する中で、年長者は昔ほど大切な存在ではなくなった。人々は年長者の記憶や口伝に頼らなくても知恵を受け渡せるようになった。テクノロジー時代へと進んだことで、デジタルネイティブが力を持つようになった。
しかし、人は歳を重ねることで、リーダーとして成熟する。白髪頭の方が若い人たちより賢い判断ができることも多い。職場での「賢さ」とは何よりも、多岐にわたる情報を素早く取り込んで物事の「核心」を掴み、全体を俯瞰したり組織的に考えたりすることができる能力だ。その一部は、パターン認識のスキルで、これに優れていると全体像を素早く把握することができる。そして年の功が間違いなく発揮されるのが、この部分だ。長く生きていると、その分多くのパターンを見ているし、認識もできる。

年長者の役割はおそらく、若い世代におけるこの自己認識のプロセスを速めることにあるのかもしれない。陳腐化のスピードがますます加速する時代に、専門知識のない年長の世代には価値がなくなるのではなく、特定分野の狭い考えを全体像として見る力によってむしろ価値が上がるはずだ。

 

モダンエルダーに共通する5つの特徴

「新しい年長者(モダンエルダー)」は、特定の年齢を超えている必要はないし、会社の中で高い地位にいなくてもいいが、周囲の人たちより年長で賢くなければならない。モダンエルダーは、次の知恵を示してくれる。

 

①優れた判断力

過去に様々なものを見たり経験したりすればするほど、次々とやってくる問題に上手く対処できるようになる。歳をとればとるほど、人は自分が活躍できる環境を作り出したり、選んだりする能力に長けてくる。

 

②本物の洞察

経験によって得られる大切な資産の1つが、物事をはっきりと見通す力、つまり直感的な洞察だ。モダンエルダーは、採用面接にしろ、戦略議論にしろ、雑多な情報の中から注意を向けるべき根源的な課題をとっさに見分けることができる。

 

③心の知能指数(EQ)

モダンエルダーは、自分の気持ちに敏感で、忍耐強く相手の感情を読み取ることができる。つまり、自分自身の感情を理解して抑制できるし、他者の気持ちにも共感できる。

 

④俯瞰的な思考力

中年になると脳が一段階後退し、記憶とスピードが衰える。だが点と点をつなげ、物事を俯瞰してその核心を掴む能力は、かなり年をとっても伸び続ける。

 

⑤奉仕の心

年を重ねれば重ねるほど、この世界の片隅での小さな自分の立ち位置がわかるようになる。そして、これまでの人生での経験や物の見方を役立てて、未来の世代に前向きな影響を与えたいと思うようになる。

 

モダンエルダーになるための4つの教訓

①進化する

人生の半ばを過ぎて誰でもキャリアをリセットできるわけではないが、心構えと期待をリセットすることは可能だ。つまり、人は進化できる。人は継続的な向上を求めてリスクを取る時、進化できる。キャリア上のアイデンティティを刷新し、新しい衣装を身につけることが大切である。

  1. 職務経歴書の無駄な説明を減らし、過去の経歴や経験の中で最も大事な部分だけ抽出する
  2. 自分の評判を再定義する
  3. インターンになり、知恵をリセットする

 

②学習する

教えることと学ぶことは共存できるし、学び続けることなく、卓越した教師にはなれない。

  1. 好奇心を呼び覚ます
  2. 事業について深掘りする
  3. 触媒的な質問をする(絶えず変化する世の中では答えよりも優れた質問の方が重要である)

 

③コラボレーションする

年長者は感情の代謝が早い。特にネガティブな感情の代謝が早く、これは他者と協力する上で非常に役に立つ。その意味でモダンエルダーは翻訳者のようだと言える。他の人が見落としているものに気づき、それを知恵に翻訳して、どう行動すべきかの判断材料にできる。

 

④相談に乗る

モダンエルダーにとっての「コンサル」とは、後輩の「相談に乗る」ことである。Googleは世界最高峰の検索エンジンかもしれないが、人の感情や思考の機微までは理解できない。必要な知恵を得るのに、検索エンジンより優秀なカウンセラーやアドバイザーが適任な場合もある。そう考えるとモダンエルダーの重要な役割の1つは「会社の司書」として、社内の膨大な知識と知恵を選り分けることと言える。