パフォーマンスだけでは成功しない
あなたが成功するために重要なのは、あなたとあなたのパフォーマンスではない。重要なのは社会であり、社会があなたのパフォーマンスをどう捉えるかである。
パフォーマンスは、ある程度、あなたにコントロールできる変数である。腕を磨き、練習に励み、準備を怠らず、戦略を練れば、パフォーマンスは上げられる。自分のパフォーマンスを周囲と比べて、そのレベルを確かめることもできる。しかし、「成功」は全く違うカテゴリーに属する。成功は集団的な評価で会って、あなたのパフォーマンスに対する人々の反応を指す。
認められるかどうかは、もちろん仕事や作品の質に左右される。だが、それだけが要因ではない。何かをうまくこなせるからといって必ずしも認められるとは限らないのだ。
成功の法則
①パフォーマンスが成功を促す。パフォーマンスが測定できない時には、ネットワークが成功を促す。
テニスの世界ランキングや企業の四半期報告書のように、明確な測定基準がある場合には、パフォーマンスが成功を生む。しかし、パフォーマンスや作品の質を測定するのが難しいアートのような世界において、ネットワークが価値を決める。なぜならネットワークは、パワフルなハブによって相互につながっているからだ。
②パフォーマンスには上限があるが、成功には上限がない。
人間のパフォーマンスは「ベル型曲線」のような分布に従う。平均から離れるにつれ、ベル型曲線は指数化数的に減衰し、飛び抜けてパフォーマンスの高い外れ値にある人は指数関数的に稀になる。問題はトップレベルのライバルたちに実力の差がほとんどなく、その違いがほぼ測定不可能なことだ。だから上限に近くにつれ、パフォーマンスは成功の決定要因ではなくなる。
一方、成功は「べき乗則」に基づく。「富」「論文の引用回数」「知名度」「ファンの数」など成功のどの測定基準もべき乗則にならう。そのおかげで、桁違いの成功を手に入れた個人が必ず存在する。彼らはライバルよりもほんの少し優れているだけに過ぎない。彼らが特別なのは、そのパフォーマンスではなく成功である。
③過去の成功×適応度=将来の成功
成功しているように見える者は、パフォーマンスに関係なく、ますます成功を引き寄せる。この現象を「優先的選択」と呼ぶ。この優先的選択なしには、桁外れの影響力や報酬、知名度は手に入らない。
立ち上げたばかりの事業、売れないアーティスト、資金調達プロジェクトのどれにとっても、その後の運命を分けるのは最初の評価や承認だ。成功のためには成功が必要である。人間は本質的にリスクを嫌うため、常に既存の承認や指標を探す。そうすれば、自分の選択や設定が周囲の承認を得られるからだ。
この優先的選択は、単独では作用せず、適応度と共に動く。適応度は製品の質の高さの評価ではない。競合を打ち破るその製品特有の能力を指す。製品に適応度があり、その上既に成功した実績があれば、適応度だけで長期の成功が約束される。
④チームの成功にはバランスと多様性が不可欠だが、功績を認められるのは一人だけだ。
チームで達成した成果よりも個人の業績に注目し、非凡な人物や英雄を高く評価する傾向がある。功績を認められたい時には、これらの要素をうまく活用することである。
⑤不屈の精神があれば、成功はいつでもやってくる。
成功は、Qファクター(アイデアを形にする能力)とアイデアの掛け合わせから生まれる。Qファクターが輝くような職業や分野を選べば、あとは成功を掴み取ろうとして繰り返しトライするかどうかだ。