日本の貧困
日本の貧困層は拡大を続けている。厚生労働省の2014年「国民生活基礎調査」によれば、日本の「相対的貧困率」は2012年時点で16.1%だった。相対的貧困率は、その国で一般的とされる水準の生活が送れない層を測る指標の1つ。調査時点の日本の場合、税金や社会保険料などを除いた可処分所得が、年122万円に満たない人の割合を示している。
つまり、月に10万円と少しのお金で暮らしている人は、日本には約2000万人、およそ6人に1人いる。この相対的貧困率は、1985年の12%からほぼ一貫して増加しており、日本はOECD加盟国の中でも高水準にある。
普段の生活の中で、こうした困窮層の存在を実感する事は少ないかもしれないが、ネットカフェ、無料低額宿泊所または普通の家庭の中で、今もじわじわ広がっている。
人が貧困に陥る要因
多種多様な要因が家族関係などを媒介にして複合的に重なり合い、「自分は貧困とは関係ない」という層を、簡単に困窮状態に陥れる。
①老後の資金不足
1人暮らしをする高齢者は約600万人とされ、その内半数は年金収入が生活保護の水準に満たないとされる。一方で、生活保護を受ける事に抵抗がある人は多く、貯金を食い潰しながら、介護費や医療費などを払って生活している事になる。貯金が尽きた時点で彼らの生活は破綻する。
②非正規雇用
非正規雇用者の人数は2015年1989万人。1989年から1000万人以上増えた。雇用者に占める割合も37.8%で倍増している。2013年の非正規雇用者の平均給与は年間168万円。正規雇用者の1/3にとどまる。安定収入が期待できる正規雇用の門戸が狭まる中、非正規雇用は事実上、困窮を生む土壌になっている。
③精神疾患
精神疾患の患者数は2011年に約320万人。1999年から116万人増加した。中でもうつ病など「気分障害」の患者数は95.8万人と急増している。特に気分障害は現役世代である30代後半から60代前半の患者数が多く、家庭の収入状況に直接影響する。
④ひとり親
国立社会保障・人口問題研究所の試算では「一人親と子から成る世帯」の数は2035年に564万世帯と2010年比では24.5%増え、世帯全体に占める割合も11.4%に達する見通し。ひとり親の貧困はその子供の教育機会の喪失につながり、「貧困の連鎖」を引き起こす可能性もある。
⑤親の介護
総務省によれば、雇用者のうち親族等の介護をしている人の数は239万人。休職だけでなく、場合によっては転職や離職を迫られるが、多くの場合、介護をする側も50〜60代と次の働き口を見つけるのには苦労する年代になる。
⑥教育費膨張
大学の授業料は上昇を続けており、2014年は国立で53万5800円、東京都の私立で74万4289円。今や「大学全入時代」となり、多くの家庭がこれだけの出費を迫られている。奨学金を借りている大学生は38.6%。教育への投資はそれに見合うリターンを得にくい「一種の賭け」になっている。
⑦事故、病気、会社の倒産やリストラ
企業の倒産やリストラのリスクは自分だけでなく、親や兄弟、配偶者、子供に常につきまとう。
生活保護費は4兆円へ
生活保護の費用は膨張する一方だ。2009年に3兆円を突破した生活保護費の総額は2014年度予算では3.8兆円になっている。受給世帯数は2014年に161万8196世帯と過去最高を更新。
単身高齢者やワーキング・プアといった生活保護の受給要件をほぼ満たす予備軍の存在を考えれば、対象者への支給の抑制だけでなく、いかに受給対象者を減らすかという点について対策が必要である。