長期がすべて(1997年)
今はまだインターネットの始まりの日(Day1)であり、アマゾンにとってもまた、舵取りを間違えなければ、現時点はまだ始まりの日に過ぎない。
アマゾンの成功は、私たちが生み出す長期的な株主価値によって測られると信じています。この価値とはすなわち、現在のアマゾンの市場リーダーとしての地位を拡大し、確固たるものにしていく能力そのものです。市場リーダーとしての地位が強まるほど、アマゾンの収益力もより強固なものになる。市場の一番手になることが、より高い売上と利益をもたらし、資本の回転を速め、投資資本に対する高いリターンを可能にするのです。
私たちは常にここに目を向けて、意思決定をしています。まず最初に評価の指標とするのは、市場リーダーとしての地位の強固さです。そして顧客数と売上の伸び、購買のリピート率、それからブランド力を指標とします。
お客様を恐れる(1998年)
私たちは、世界で最もお客様中心の企業を築くつもりです。お客様は鋭く賢いということをしっかりと心に留めつつ、ブランドイメージは現実の投影であり、その逆ではないことを私たちは大原則に掲げています。アマゾンのお客様は自らアマゾンを選び、その品揃えの豊富さ、使いやすさ、低価格、そして提供されるサービスを評価して友人にアマゾンを勧めると言っています。
だからと言って、安心している余裕はありません。私は社員たちに、不安を抱き、毎朝恐れながら目を覚ますように繰り返し伝えています。私たちはあらゆる機会を捉えて常に改善し、実験し、イノベーションを起こしていく努力を怠ってはなりません。
未来(2000年)
なぜイーコマースとアマゾンの未来が明るいと言い切れるのでしょうか。今後数年でオンラインショッピングの顧客体験が果てしなく向上していくことで、この産業は成長し、新規顧客が増加するはずです。そして、顧客体験を向上させてくれるのは、回線容量およびディスク容量の増加と処理能力の劇的な向上であり、またそれらすべてが猛烈なスピードで安くなっていくことを背景としたイノベーションによるものです。
実店舗を運営する小売企業も引き続きテクノロジーを利用してコストを下げることはできるでしょうが、顧客体験を一変させることはできません。私たちも同じようにテクノロジーを使ってコストを下げていきますが、それよりも効果が大きいのはテクノロジーを使った新規顧客と売上の拡大です。
意思決定(2005年)
アマゾンでは、データに基づいて重要な意思決定が行われることが多々あります。答えが正しいか間違っているか、よりよい答えかより悪い答えかを、数字が教えてくれるのです。この手の意思決定は、アマゾンの得意とするところです。
とはいえ、指針となるような過去のデータがほとんど存在しない場合もありますし、前もって検証することが不可能だったり現実的でなかったり、あまりにも面倒すぎて決断の支障になる場合もあります。データと分析と数字は大切ですが、こうした意思決定で重要な役割を果たすのは判断力です。
発明マシン(2015年)
私たちは大企業でありながら、発明マシンでありたいと願っています。大企業が陥りがちな落とし穴の1つ、スピードと発明を遅らせてしまう原因はすべての意思決定を同じやり方で行うことです。
意思決定には影響が深刻で取り返しのつかないもの、または後で元に戻すのがかなり難しいものがあります。そうした片道切符の決定は、順を踏んで注意深くゆっくりと、様々なことを考慮し検討した上で行わなければなりません。一旦決定を下して扉を開けてからがっかりしても、元には戻れないのです。この手の意思決定を「タイプ1」と呼ぶことにしましょう。
一方で、ほとんどの意思決定は変えられますし、元に戻すこともできます。往復切符があるのです。この手の「タイプ2」の決定については、それが間違っていると気づいたら、そこに留まる必要はありません。扉をもう一度開いて、来た道を戻ればいいだけです。タイプ2の決定は、判断力のある個人や少人数のチームが素早く下せますし、そうすべきです。
組織が大きくなると、後戻りできないタイプ1の意思決定のプロセスを、タイプ2にも当てはめてしまいがちになるようです。すると、動きが遅くなり、むやみにリスクを回避してしまい、実験が十分にできず、その結果、発明が減ってしまいます。そんな傾向に陥らないための方法を考えなければなりません。
二日目をかわす
二日目をかわすテクニックや戦術は何か。正解のすべては見えていませんが、わかっていることもいくつかあります、始まりの日を維持するための必須要素は次のことです。お客様にこだわること、既存のプロセスを疑うこと、外部のトレンドを取り入れること、そして素早く意思決定を行うことです。