見抜く力 リーダーは本質を見極めよ

発刊
2015年9月18日
ページ数
216ページ
読了目安
233分
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本質を見抜くにはどうすればいいのか
キヤノン電子を高収益体質に立て直した実績を持つ著者が、本質の見抜き方について語った一冊。経営の問題点や人間の本質を見抜く力の身に付け方が書かれています。

本質を見抜くための経験を積み重ねること

すべての仕事は「見る」事から始まる。経営者ならば、事業や技術の現状と将来性を見抜き、正しい方向へと導かなければならない。しかし、物事を正しく見ること、表面だけでなく本質まで見抜く事は簡単な事ではない。表面の事象だけを見て、わかった気になる人が多い。「なぜ」「なぜ」「なぜ」と繰り返し思考する事で、初めて問題の本質が見えてくるのに、そこまで突き詰める習慣がない。浅い見方や、間違った見方を出発点としてリーダーが指示を出せば、組織はガタガタになってしまう。だからリーダーは「見抜く力」を身につける努力を続けなくてはいけない。

見抜く力(洞察力、見識) = 深い知識(知恵) + 正しい経験の積み重ね

あらゆる仕事で本質を見抜くように正しい経験を積み重ねること。また、自分の知識を広げるため幅広い読書を心がけ、絵画や音楽などで常に「本物」に触れること。そうする中で、単なる知識を簡略化て、いつでも使えて、いつでも行動に移せる「知恵」を身に付けようとし続けること。そうする事で見抜く力が身に付く。

 

「幅広い人脈」こそ、人を見抜く力の源泉

人を見る目がある人には、大抵次のような共通した特長がある。

①人に会うのが好きだ
②人を選り好みせず、幅広くいろいろな人と付き合う
③人の欠点より長所を好ましいと考えられる
④本音の付き合いができる
⑤人に惚れることができる
⑥損得抜きで人のために力になれる
⑦一流の人を尊敬し、付き合おうと努力する

これらの資質を備え、幅広くいろいろな人と付き合える人は、間違いなく「人持ち」であり、社内外を問わず、多様な人的ネットワークを構築している。その過程で自然と人を見る目も鍛えられていく。たくさんの人と付き合う事で「人を見る基準」がだんだん身に付くようになるからだ。人脈こそ眼力を養い、人を見抜く力の源泉なのである。

但し、人脈作りは異業種交流会などではできない。ただ名刺を交換して、通り一遍の話をした相手は人脈にはならない。真剣に仕事をしている中で出会い、一緒に仕事をしたり、お互いに困っている時に助け合ったりする事で、初めて人脈は育ってくる。その時に大切なのは、「人に親切にする」ことで、まず先に与える事である。

 

見抜く力の本質

何か起きた時、過去の経験や蓄積した知識に照らして、さながら「指紋照合」でもするように、同じ事象や類似のケースを見つけ出し、解決に当たる。見抜く力の本質とはこれではないか。この作業は、言うまでもなく、その人の経験や知識の総量が多ければ多いほど容易になり、また精度も高くなる。だから、見抜く力をつけるには、豊富な経験や幅広い知識が必須になる。

ここでいう知識とは、それを簡略化して、いつでも使えて、行動に移せる「知恵」にしてこそ意味がある。知識の本質を理解してこそ、知恵を身につける事ができる。知恵を身につけるには、言われた事だけをやるのではなく、その先まで自分で考える事である。知識を知恵に変えて、見抜く力をつけていく人は、必ずその先まで自分で考える。「なぜ」「なぜ「なぜ」を繰り返して本質まで迫ろうとする。

 

利益が出ない原因を見抜く

本質的な事は、シンプルで、美しい。これは設計開発でも、デザインでも、経営でも、組織のあり方でも、すべてにおいて共通する。経営の改革でも大切な事は、シンプルで美しい本質は何か、という事を素早く見抜く事である。

問題解決のアプローチで大事な事は、自分で理解し、扱えるサイズにまで、問題の本質を切り分けて考えるようにする事である。業績のよくないダメな会社や組織には、3つの共通する特徴がある。

①トップ(リーダー層)がたるんでいる
②受動的・指示待ちの人が多い
③売上の20〜30%のムダがある

会社や部門の立て直しで何より大事になるのは「このままでは会社がダメになる」という危機感の共有であり、それをバネに全社一丸となって再建に取り組む姿勢、情熱である。これがなければ、いくら戦略や組織をいじったところで成果はしれている。

上が現場主義に徹し、下をちゃんと見る、目を光らせる、というのが組織に緊張感をもたらし、だらけさせない最良の方法である。そして、利益の出ない会社がまずやるべきは、全社をあげてムダをなくし、利益を掘り起こす事だ。緊張感は、ムダをなくし利益を出す。ムダをなくすには社員が自分自身で考えて行動するようになる事が必要である。そうなれば、自ずと緊張感を持って働くようになるからである。

 

人間の本質を見抜く

あらゆる仕事は「人と人の関係」で成り立っている。だから、人間について深く知る事が、良い仕事をする事、良いリーダーになるための必須条件である。仕事ができるかどうかについて、一番大事な事は「相手の立場に立って物事を考えられるかどうか」である。良い商品・サービスは「誰かの困った」を解決する。相手の立場で考えられる、というのは仕事をする上で何より大事な資質である。

相手の立場で考えられるようにするには、「人に親切にすること」である。人に親切にしようと思えば、相手が何に困っているのか、何をして欲しいのか、自然と相手の立場で考えるようになるからだ。

相手の立場や心情を察して行動するには「目配り、気配り、口配り」の三配りが大事になる。こういう人は、人を尊重する気持ちがあるから、基本的に謙虚であり、目線は常に下から上に向かう、「下から目線」が習い性になっている。そして、素直に謙虚に、わかる人に向かって「すみません。教えてください」と頭を下げる事ができる。人を見る上で、これができるかどうかは、とても大事なポイントである。

どれほど優秀な人間であってもすべての業務に100点満点で精通しているなどという事はあり得ない。だからこそ、どんなに出世しようとも、常に「下から目線」で謙虚に人にものを尋ねられる姿勢が大事になってくる。

参考文献・紹介書籍