理科系の作文技術

発刊
1981年9月25日
ページ数
244ページ
読了目安
317分
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30年経た今も人気のある文章術の名著
初版から30年を経た今も売れ続ける文章の書き方の名著。論文や報告書など、仕事の文書を書くあたって、必要な技術が満載の1冊。

結論を先に書く、文は短く簡潔に、事実と意見は区別する、読み手を意識する、などの基本的なことが説明されている。文章の事例も豊富にあり、わかりやすい。

普段、自分の書く文章を見直すためにも、一度は読んでおきたい本。

理科系の仕事の文書を書く時の心得

理科系の仕事の文書の特性は、情報と意見の伝達だけを使命として心情的要素をふくまないことに対応する。これらの文書の中には、原則として感想を混入させてはならない。文書を書くにあたっては、以下の通りにあるべき。

①内容の精選
必要なことは洩れなく記述し、必要でないことは一つも書かないこと。何が必要かは目的(用件)により、また相手(読者)の要求や予備知識による。

②事実と意見の区別
仕事の文章を書く時は、事実と意見(判断)を明確にすることが特に重要である。

③記述の順序
・文章全体が論理的な順序に従って、組み立てられていること。一つの文と次の文がきちんと連結されていて、その流れをたどっていくと自然に結論に導かれるように書くのが理想である。

・相手が真っ先に何を知りたがるか、情報をどういう順序に並べれば相手の期待にそえるか、ということに配慮する。

④明快・簡潔な文章
明快な文章の第一の要件は、論理の流れがはっきりしていること。明快に書くための心得は次の通り。
・一文を書くたびに、その表現が一義的に読めるかどうかを吟味する
・はっきり言えることはスパリと言い切り、ぼかした表現を避ける
・できるだけ普通の用語、日常用語を使い、なるべく短い文章で構成する

 

準備作業

自分の書こうとする文書の役割を確認することが第一の前提である。読者はこの文書に何を期待しているか、を考えること。主題を選定し、その主題の中でどんな材料を取り上げるかを決めるポイントは以下の通り。

①与えられた課題
その目的は何か、どんな情報が必要か、もし自分の意見が期待されているとすれば、どういう点か、を反省・検討することから始まる。

②一文書一主題
一つの文書は一つの主題に集中すべきものである。別の主題が混入すると、読者に与える印象が散漫になり、文書の説得力が低下する。

③長さの制限
説得力のある、密度の高い議論を展開するためには、長さに応じて主題をしぼらなければならない。

④読者
主題の選定にあたっては、読者が誰であり、その読者はどれだけ予備知識を持っているか、何を期待し、要求するだろうかを、十分に考慮しなければならない。

⑤生の情報
自分自身が直接に事に当って得た情報に重点を置くべきである。たとえ、不備で未熟であっても、オリジナリティーという無比の強みを持っている。

 

文章の組立て

世の中が忙しくなるにつれて論文の重心が前の方に移った。読者がその論文を読むべきか否かを敏速に判断する便を考えて、結論あるいはまとめの内容を冒頭に書くようになった。仕事の文書はすべて、こうした重点先行主義で書くべきものである。

内容にピッタリの表題を選び、表題あるいは書出しの文を読めばその文書に述べてある最も重要なポイントがわかるように配慮すべきである。

文章の構成要素は序論、本論、結びの3つ。序論では、読者が本論を読むべきか否かを敏速・的確に判断するための材料を示し、本論にかかる前に必要な予備知識を読者に提供すること。

本論を書くにあたっては、次の順序を考慮する。
①概観から細部へ
文章の冒頭の短く要を得た記述によって概観がつかめれば、読者にとっては細部の記述を理解・吸収することが容易になる。

②細部の記述の順序
書くべき中身を機能別や性質別に分類できる場合には、その分類にしたがって進める。

 

はっきり言い切る姿勢

私たちは無意識の内にぼかし言葉を濫用する習癖を持っている。仕事の文書の中では、「ほぼ」「約」「ほど」「ぐらい」「たぶん」「ような」「らしい」といった類をできるだけ削ることが大切である。
ぼかし言葉を入れたくなるたびに、それが本当に必要かを吟味する習慣を確立すると、文章はずっと明確になる。

 

わかりやすく簡潔な表現

仕事の文書の文は、短く、短くと心がけて書くべきである。そのための心得は次の通り。
・まず、書きたいことを一つ一つ短い文にまとめる。
・それらを論理的にきちっとつないでいく。
・いつでも「その文の中では何が主語か」をはっきり意識して書く。