地元で人気のローカルチェーン
マクドナルドや吉野家のように全国でお店を出す全国チェーンに対して、限られた地域にだけ出店するのがローカルチェーンである。各地で繰り広げられる全国チェーンとローカルチェーンのバトルは、多くの場合では全国チェーンが勝利してきた。しかし、ローカルチェーンとしての特性を活かして、全国チェーン顔負けの繁盛を見せるお店がある。
全国一律のサービスが基本の全国チェーンに対し、ローカルチェーンは地元で生まれて育つから、必然的に店がその土地向けにローカライズされる。さらには、ローカルで圧倒的なシェアを獲得することで、スケールメリットでも全国チェーン顔負けのパワーを備えたお店もある。
・福田パン(岩手)
実演で作る組み合わせ自由のコッペパン販売。大きくてクリームもパンパンに入り、バターのやみつき感が印象的な一本。
・551蓬莱(大阪)
人気の豚まんは190円の安さを貫く。その豚まんの供給体制を守る意味もあり、13年間主要メニューの新発売がない。生地の品質を保持するために工場から約150分以内で輸送できる範囲にしか店を作らず、あえて60店前後に出店を抑える。
・ばんどう太郎(茨城)
関東人へ向けてアレンジした「味噌煮込みうどん」の店。パートを「女将」とし、なるべく店長を地元民にするなど、独自の接客と味づくりを行う。
・おにぎりの桃太郎(三重)
大小の桃太郎人形がトレードマークのおにぎり店。46年前からおにぎりメインで貫き通す。
・ぎょうざの満州(埼玉)
3割の原材料費で、4割をレジ横冷蔵庫で売上、玄米5割のチャーハンをヒットさせる「数字」がキーワードのチェーン。
・カレーショップインデアン(北海道)
夕方になると、鍋を持って人々が押し寄せる十勝のカレー店。狭い地域で年間280万食を売り上げる。
・おべんとうのヒライ(熊本)
「外食・中食・コンビニ」の3業種をコンビニサイズの1つの店にまとめた営業形態で、地域の食をオールインワインでカバーする。
ローカル飲食チェーンの強さ
①看板商品にホームランを打たせる
どの店も「看板商品」を押し出し、「選択と集中」を行う。例えば「豚まん」がメインの551蓬莱は、無理に他の商品を作らない。2008年のエビ焼売発売以降、13年間も新商品がない。商品点数を絞ることで、次々と売れていく豚まんの供給体制を十分に確保できる。
②「近さ」が大きな武器
ローカルチェーンのわかりやすいアドバンテージは、近さだ。本社も店も工場も、近くにあるから臨機応変に動ける。多くの場合食材の産地も近い。さらに工場やセントラルキッチンから近い場所に店舗があるから、新鮮な状態でお客さんに届けられる。例えば551蓬莱は、豚まんの生地が発酵する時間から逆算して、工場からおよそ150分以内の場所にしか店舗を置かない。
③外食・中食・土産物など、買ってもらえるチャンスを増やす
周りにお店が少ない郊外に店舗を構える場合、あらゆる購入ニーズに応えるのが効果的だ。イートイン、テイクアウト、イートイン後のお土産品など「あそこへ行けば何でも揃う」からお客さんが集まる。「イートインだけ」など1つの業態に絞らない。
④オシャレすぎないから入りやすい
人口が少ない町で店を営むには、気軽に入りやすい雰囲気が大事だ。オシャレすぎないからこそくつろげるし、地元民もネタにしやすい。
ローカルチェーンは新規客があまり見込めないため、銀座のショップのように客の来店頻度が少なければ、商売が成り立たない。固定客の来店頻度を高めて、トータルの客単価を引き上げるのがセオリーだ。
⑤全国チェーンとは戦わない
全国チェーンに対しての戦略ではなく、自分がどう変わらざるを得ないかを考える。これからの消費者が必要になるものを提供する。価格競争よりも、適正価格でいいものを出す方に注力する。全国チェーンと違う良さがあることを強調する。
⑥地元スポーツチームを応援する
地元の象徴であるスポーツチームへの協力を惜しまない。地元企業の名前を冠した看板があれば、つい好感を抱いてしまう。スポーツサポーターらはスポンサーの商品を積極的に購入する文化がある。
⑦全国チェーンにならない
そこに行かなければ味わえない方が価値がある。地元を出るか、でないか。ローカルチェーンのトップたちは、揺れる二択の中で地元に残る価値を見出している。
⑧ローカルチェーンならではの「楽しさ」
ローカルチェーンの魅力は一言で表すと「楽しい」に尽きる。そこにしかない、行かなければ会えない、だから心惹かれる。これこそが最大の武器である。