ビジョナリー・カンパニー 4 自分の意志で偉大になる

発刊
2012年9月20日
ページ数
490ページ
読了目安
658分
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不確実な環境下でも躍進する企業の成功の法則
名著『ビジョナリー・カンパニー』の最新作。本書では「不確実な時代に突入しても躍進する企業が存在するのはなぜか?」をテーマにしている。

不安定な環境下で目覚ましい成長を遂げ、偉大になった企業を「10X(十倍)型企業」と命名している。10X型企業はすべて、所属業界の株価指数を少なくとも十倍以上上回る株価パフォーマンスを記録している。

10X型企業には、サウスウエスト航空、アムジェン、インテル、マイクロソフトなどを挙げている。これら企業を同じ時期にほとんど同じ条件にあった企業と比較し、成功した企業に共通する法則を導き出している。

10X型企業が共通してとっている行動としては「狂信的規律」「実証的創造力」「建設的パラノイア」の3つを示している。この3つの行動をとることが、予測できない環境に適応し、成功するための条件だと結論付けている。

偉大な企業は幸運に恵まれただけではないかという点について、成功の秘訣は上記3つの10X型行動をとることであるとし、人間の意志と規律こそが重要であると説く。

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二十マイル行進 〜狂信的規律〜

10X型企業は「二十マイル行進」(ウォーキングの旅でどんな条件下でも毎日二十マイルのペースを維持すること)と呼ぶモデルを体現している。長期にわたって並外れた一貫性を保ちながら、工程表に従って着々と進む。二十マイル行進を実践すると、二種類の苦痛にあう。①厳しい状況下でも断固として高い成果を出さなければならない、②好況下でも自制しなければならない。

二十マイル行進を実践すると、制御不能な環境下でも自制できる。成長の極大化追求と10X型成功は逆相関関係にある。10X型企業の比較対象企業は好況時になるとしばしば成長の極大化に走り、予想外に環境が悪化すると無防備な状態で悲劇に陥る。一方、10X型企業はいたずらに成長を追い求めない。

 

銃撃に続いて大砲発射 〜実証的創造力〜

10X型成功をもたらすのは「銃撃に続いて大砲発射」手法である。飛躍的なイノベーションや天才的予測能力ではない。

銃弾とは「低コスト」「低リスク」「低ディストラクション(気の散ること)」の三条件を満たす実証的テストのこと。10X型リーダーは、何が実際に有効なのか検証するために銃撃に頼る。実証的な有効性を確認した上で大砲を発射し、そこに経営資源を集中させる。

10X型企業は銃弾を大量に撃つ。銃弾が何に命中したかを評価し、大砲の命中精度を調整し砲撃に入る。

 

死線を避けるリーダーシップ 〜建設的パラノイア〜

10X型企業は良い時でも建設的パラノイアである。実際に嵐に見舞われる前にやっておくことこそ重要であると認識している。具体的な危機を一貫して予測するのは不可能である。主要な手法は次の通り。

①十分な手元資金を積み上げ、「バッファー(緩衝)」を用意する
②リスクを抑える
③目標に向かって集中し、環境変化を察知し、それを評価することで用心深くなる

 

具体的で整然とした一貫レシピ(SMaCレシピ)

SMaCレシピは、反復可能で一貫性のある実践法であり、着実な成功を可能にする基盤となる。混沌とした世界で不可抗力と向き合う効果的な方法は、SMaCに徹することである。10X型企業は、SMaCレシピの材料構成を平均20年以上、一定に保っている。

SMaCレシピを変更する場合には、変更前に銃弾を撃ち、新しい手法を発見し、有効かテストすること。環境変化を認識・評価し、変化すべきかを規律をもって見極める必要がある。

 

運から最大のリターンを引き出す

10X型企業は並外れた幸運に恵まれただけではないかとの疑問がある。しかし、10X型企業は必ずしも強運とは言えない。共通するのは、10X型手法で行動することで、遭遇する運から最大限の成果を引き出している点である。偉大さを決定づけるのは、環境ではなく、自分自身の意志と規律である。

 

10X型リーダーシップ

勝ち組のリーダーのことを「10X型リーダー」と呼ぶ。10X型リーダーは次の3つの行動パターンを備えている。

①狂信的規律
10X型リーダーは、徹底した「行動の一貫性」を示す。長い時間を経ても行動がぶれない。

②実証的創造力
10X型リーダーは、科学的に実証できる根拠を頼りにする。自ら直に観察し、実験を重ね、具体的な事実と向き合う。実証的な基盤を築くからこそ、大胆で創造的に行動できる。

③建設的パラノイア(偏執病)
10X型リーダーは、潜在的脅威や環境変化がないか監視するため、常に高感度なアンテナを張っている。最悪の状況を想定して日頃から準備を怠らず、有事対応策を練り、衝撃緩和の仕組みをつくり、安全余裕率を高める。

この3つを活性化させるのが、やる気を起こす原動力「レベルファイブ(第五水準)野心」である。10X型リーダーは個人的なエゴや利益を超えて、永続する何かをつくろうとする。

 

運の利益率(リターン・オン・ラック:ROL)

10X型企業は並外れた幸運に恵まれただけではないかとの疑問がある。しかし、10X型企業は必ずしも強運とは言えない。運を制御したり、予測したりすることは不可能である。

よって、10X型手法で行動・指導することで、遭遇する運から最大限の成果を引き出すことが重要である。